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短編集  作者: スズムラ
オキツネさまっ! [中]
1/3

狐は、社にいる。

元稲荷神社の現在社建築費稼ぎ中の貧乏な神・ギンと、事故に遭いさ迷う霊の少女とのほのぼの系異端社稼ぎ中神さま妖怪譚。

 夜空に生える白銀色で、前髪がクロスし、横の髪は押さえめで後髪は少し跳ねている。少し垂れ下がった双眸で鮮やかな赤目をしてる。頭から見える髪と同系色の獣の耳が生えている。中から見え隠れする黒い着物の半襟を着て同色の袴を穿いて、白の羽織を着て紫の帯を巻いた和装を着ている。腰部一本のふさふさでもこもこの白い尻尾がある。狐だ。

 在稲荷神はフリーター中の神・シロ。

 社が老朽化で倒壊し、無一文となり、生活費を稼ぐため何でも屋をしている。が、依頼は来るのは月一来るかどうかな崖っぷち神様です。

 マイペースで働かない主義のシロでありますが、もちろん仕事は滅多にやってませんのでご了承ください。


 殺風景の場所で何処にも繋がってない池の目の前で、手に持ったスチール製と思しいき釣り竿を持ち振り上げ、勢いよく下ろした。

 ――すると数分後、グイッとひきが強い。

 リールを巻く。力を抜くといまにも

「ぐぬぬぬぬぬぅっ!!な、なんだこりゃあ?!」

「きゃあっ?!」

 ――女の声だ。

 人が釣れた。人間の女だ。足は透けている為、迷い霊だろう。

 シロが投げ入れた、名古屋襟の面影がある形状で全体的に金茶の色で、襟が黒茶でスカーフはないセーラー服を着てる。釣り針が女の着ているセーラー服の襟に見事に引っ掛かり、吊るされた状態になっている。顔をガバッと上げた。

「なぁ?!あ!!あああ、アンタ何?!これどういうこと?!」

「……こんなとこに流れ着いたってことは未練でもあるのか?」

「どこよここは?!」

 女は本紫に近い髪色を持ち、肩まで付くセミロングの髪型。大きく見開いた丸目を持つ、顔つきは中高生ぐらいの少女であり、先ほどの口調を聞く限り、若く女性らしい声で男らしい口調だ。

 目が据わり、一応めんどくさそうに

「君。自分の立場分かってる?」

「はぁ?何よ!そもそもここ何処だぁ!!放せよ!!下見えるんだけど」

 本音がダダもれだ。

「ご注文は以上になりますか?」

「ファミレスじゃねーよ!!」

「クレームは受け付けておりませんのでお帰り下さいませ」

 あくまで冷静に対処する。

「だから帰せっつーの!!」

「お前帰れないぞ」

「は?!」

 表情に困り、唖然し目を丸くしキョトンとする。

「だから、お前は死んだんだ」

「ちょっと待てよ!私は死んでなんかない!」

 「あー」と頭を掻きながら、めんどくさそうに唸りながら、

「死んだんだよ。君の記憶がショックで一時的に記憶が抜けてるんだよ」

「……もう分かったわよ……で、そろそろ降ろしてくんない?」

 「へいへい」と軽い返事をする。襟から釣り針を外す。

 ふんぞり返る様な態度を取る。

「……でさ、ここ何処?あんた誰?」

「僕は貧乏だが現役神様中だ。今は絶賛フリーターだがな」

「貧乏神?!近づかないで!」

「どう見たって違うだろ。僕は稲荷神だ。御狐様」

 凄くめんどくさそうに、

「ここは僕の釣りポイントだ。元僕の社が立っていた場所。今は、僕が掘ったせいで何か力が宿った場所みたいだ」

 まあ、一応説明する。ムスッと腕を組み、

「何よそれ」

「僕は知らん。で、君何かあるのか?」

「何って……家に帰せっ!!」

「それは無理だ。君は普通の人間には見えないからな。自分を見てみろ。特に足元」

 顔を下に向ける。

「何よ……っ!?」

 状況をようやく理解し絶句し唖然としたまま顔を上げる。

「な、なななななななな!!何にこれ?!一体どうなってんのよ。足元が透けてる?!」

 少女の身体は足先から膝近くまで半透明となり、若干浮いている状態だ。

「状況わかったか?」

「……う、うん……これ見たらね」

 さっきまでの勢いは失せ、俯き目をそむける。

「ここに流れ着いたんだ。何か未練があるだろ?」

「そんな……覚えてない……よ」

 言葉に詰まりながらブツブツ言い始めた。

「代償があれば、記憶を思い出せる方法有るけどな。いま、無いだろ」

「何がいるのさ?」

 少し吹っ切れた表情を浮かべた。

「小判焼き」

「はい?」

 唐突な回答に疑問した。

「小判焼きだ。あれは美味いんだ。無いなら、賽銭をもらうぞ。寄付金だ」

 右手を少女の目の前に手を出す。

「小判焼きをどう、調達しろと?」

「だから、賽銭でも良いけど」

 ほれほれという感じに出した手を揺らした。

「お金持ってないよ」

 両手を真横に出しひらひらさせる。

「働くか?この世界で言う借金をアルバイトで返すみたいなことやってんだろ?」

「別にアルバイトはそれだけのものじゃないけどね」

 呆れて目が据わる。


 ――すると

 妙に時代劇風な着メロが流れ出す。胸元から、携帯を出す。形状はスマートフォンであり、近代的な神様だ。

「はいもしもし。こちら稲荷何でも屋です……はい……はい……了解しました……」

 ピッと、オンフックボタンを押し、携帯を胸元に閉まい直した。

「仕事。行くぞ」

 ジャンプしてバク宙をするとドロンッとシロの周囲で煙が立つ。

 すると、スタッと着地した時にはさっきまでの和装とは違い、羽織の代わりに灰色のパーカーを着て、黒の半袖の代わりにオレンジのシャツを着て、袴の代わりにデニムのジーンズを穿いて、下駄の代わりに赤と白のスニーカーを履いてる。頭には狐のお面をかぶっている。尻尾は消えて、耳は人間の耳になっている。人間に化け、現代的な服装をしていた。

「人間見たい」

 と、感心している。

「ほい。これ」

 雑に少女の顔に赤い符を貼った。

「な、何これ?」

 符を触り、シロに尋ねた。

「接がすなよ。君が認識されるようにする符だ」

「これで見えてるの?」

「足見てみろ」

 人差し指を立てて、下を指す。少女は目線を下ろした。すると、さっきまで透過していた足が不透明化して、地に足が付いている。

「足がある!?触れる?!ど、どういうことなの!!」

「霊が実体化できるお札だよ」

「そ、そうなの?」

「ああ、言っとくが今の君は僕から離れることが出来ないから」

「どうしてよ」

「僕が近くに居ないと、そのお札神さまの力が無いと、効力がないだ。僕が離れた場所に居ると、また、足抜けるから」

「それは、困る」

 少しシュンとした表情を浮かべた。

「なら離れるなよ」

 頭をポンッと軽く叩いた。

「今から珍しい依頼だ。行くよ」

「何の依頼なの?」

「小規模の祭らしい」

 何故か目をそらした。

「祭?」

「うん。祭に出るはずの猫が逃げ出したらしいんだ。猫の特徴は白い毛並みでぬいぐるみたい何だと」

 「あー」と、何と無く感付いた表情を浮かべた。

「神様なんでしょ」

「流石に僕にもできないことはある。因果を変えることは神さまにだって無理な話だよ」

「因果律変える必要あるの?」

「猫の行動を操る事は出来ないよ」

「それもそっか」

 ポンッと手をたたいた。

「でも、神さまも苦労してるんですね」


 少女の手を握り、シロが神社から飛び上がり、ファッと宙を浮いた。

「ちょっ!?飛んでるんだけど」

「霊の時から飛んでただろ?」

「あ、そういえば……」

 自覚し直した。

 背を空に向け、

「探すぞ」

「この位置から?!」

 そこは高さはビルに匹敵する高さだあり、住宅地を軽々飛行している。

「低くしたら家にぶつかるだろ?」

「……後ですね。この姿でいると怪しまれません?」

 どこか申し訳なさそうな表情を浮かべる。

「神さまは見える方がいいだろ?」

「そういうものなのかなぁ?」

 と、首を傾げた。


 カーカーと鴉の鳴き声が聞こえてくる。

 いつの間にか太陽の光で辺りはオレンジ色に眩しく照らされ、ほんのりとダークブルーの空が見え始めている。すっかり日が落ちてきている。

 夕闇に照らされながらも、銀髪の少年と顔にお札が貼られた少女はまだ猫を探していた。

「……猫猫猫猫猫……居ないな」

「見つかりませんね。もう無理ですよ。こんなに探したのに一向に見つかりませんし」

 目を凝らす。

「……!見つけた!」

「ホントですか?!」

「たぶんあれだ」

 そういい、猛スピードで落下する様に頭から地面に向かう。シロは無表情のままだったが、少女は酷く怯え涙目になっている。地面に着く前にフワッと中で浮き、空中で半回転して地に足を付けた。シロは慣れもあるためか、服が翻るかのように右足を先に付け地面に付くが、少女は慣れどころではなくバランスを崩して転びかけたところを、さっきからつ何でいるシロの手が動く。その手は前へ勢いよく振り投げ放した。

 少女は絶叫、恐怖が入れ混じり叫び散らす。

「捕まえろ」

「へええええええぇ!?むむむむ、ムリいいいぃ!!」

「死なないから平気だ」

「だからって無理だろぉぉぉ!!!!!!」

 猫に見事に顔面ヘッドを炸裂させた。

 「くぅううう~」と唸り声がもれる。額がジンジンとして押さえる。猫の方は思わぬ一撃をくらい目を回しながらのびている。

「ナイス!」

「「ナイス」じゃない!ぐぬぬっ……まだ頭痛い……」

 シロはのびた猫の方に歩いていく。背中の方の首の肉を掴み持ち上げる。

「捕獲完了」


 神を祀る祭り神祭は丁度始まったぐらいである。神祭と言うだけあって、神社の目の前に多数の屋台が立ち並び、小規模であるものの大賑わいである。

 シロが猫を摘まみながら祭の敷地内に入ってきた。右手をグーにして開くとまた、煙が立ち上がりさっきまでなかった林檎飴を右手に持つ。

「神祭ねぇ。神さまの僕が何で別の神さまに手を貸さないといけないのか?」

 と、言いながらさっき出した林檎をなめる。

「何でも屋なんでしょ?」

「そうだけどさ」

 少し不貞腐れ気味だった。

 祭の事務所まで捕まえた猫を預けに行った。事務所のテント前で、

「はいこれ。お届けモノです。猫」

 少し離れた場所から「はいはーい」と祭の半被を着た若い女性が来た。

「ありがとね。カイチョー今留守にしてるから私が代わりに受けとらさせてもらうね」

 と、猫をその女性に渡して、「はい」と、手を出した。

「えっとー。何?」

「えっ。神さまにただ働きさせるのか」

「わ、わかりました。で、どれぐらいですか?」

 手を広げ前に出す。

「五千?五万?」

「いやいや。賽銭と言えば五円だよ」

「ほ、ホントにいいんですか?」

「まあ、寄付金は多ければ建築費稼げるけど。神が人間からせびるのもどうかと思うからな」

 財布から五円玉を出し、「はい」とシロの手に平に置いた。シロは小銭をもらった手から小銭を飛ばし取る。

「貴方にご利益がありますように」


 お祭りから出てく。

「さっきのは何?」

「さっきの?」

 小首を傾げた。

「「ご利益」とかの奴」

「ああ。あれはただのおまじないだよ。君の願いも叶えてあげようか?……所で、何時の間にちゃっかりお祭り満喫しちゃってるのさ」

 少女の周りには紙袋を2個ほど持ち、綿飴やチョコバナナなどのお祭りの食べ物類を殆ど持っており、顔に札を隠すようにお面を付けている。

「え、だって暇だったし」

「帰るぞ」

 と、すたこらと祭をあとし歩いて行った。


 ――もし、社を持たぬフリーターな御狐様を見かけたら、小判焼きをあげてください。……再築希望の方は五円でお願いします。きっと貴方の願いを叶えてくれますから――


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