お気に入りの場所
五月になっても特に変わった事は無かったが、俺はヒナタの事をヒナと呼ぶ事にしていた。理由は、日向をヒナタと間違えて読んでいるバカ と思われるのが、嫌だったからである。
だが、普段からそのようなあだ名で呼ぶのは抵抗があり、二人で話している時はヒナで、普段は日向さんと呼んでいる。そう呼ぶたびにヒナは不機嫌そうにほっぺたをふくらませるのだが、そこは我慢してもらいたい。
そんなある日。お昼になり、いつも通りに教室を出ようとすると……
「影君、一緒にご飯食べよ?」
声をかけられ振り返ると、弁当箱を持って立っているヒナがいた。
断るのもかわいそうだったので俺は誘いを受け、いつもの階段に行った。
「いつも、こんな所で食べてたんだ~。どおりで、昼休みに見かけないわけだよ」
『まあね。ここが落ち着くんだよ』
この階段を通る物好きはほとんどいないと言っていいだろう。 色々と誤解されないようにと、誰にも見られないようにこうしてここに連れてきたのだが、余計意味深になってしまったか?
「確かにね。ここは誰も来ないの?」
ヒナは、辺りをキョロキョロしている。
『そうだね。誰か来るのはほとんど……見ないな』
冷静になって今の状況を考えて見ると、なんでヒナは付いてきたんだ?
いままで隠してしたんだが、実は女子と話すのは苦手なんだよな。 これ実話……なんちゃって。
ひとり脳内で現実逃避していたが、やはりあの弁当を見せるしかないのか。
せめて、哀れんだ目で見られるのだけは勘弁してもらいたい。
俺は決意をこめて自分の弁当を広げて食べた。
「影君、そんなに少なくて足りるの?」
食べ終わった俺にヒナは不思議そうに俺の弁当を見ながら聞いてくる。
『いつも、これ位だけど』
とりあえず、冷静に答えたが、やっぱり中身を見られたかと内心動揺した。お金が少ないので、いつもこんな感じの弁当なんだけどな。流石にそんな事は言えないな。
「私の弁当をあげようか?」
『いや、それは悪いよ。ヒナの分が無くなるし』
突然の提案に驚いた。
「あ! そんな返事するって事はやっぱり、お腹すいていたんだ!」
ギクッ! なんでバレたんだ? 俺が黙っていると……
「本当に要らなかったら、お腹いっぱいだからいらない って答えると思ったからね はい! あげる!」
そうして、弁当を俺に差し出すヒナ。
『え? 全部は要らないよ』
「大丈夫! 私はダイエットしなきゃだし」
『ダイエットってヒナは全然太ってないじゃん』
「え?」
ヒナは顔を赤くして少し戸惑っているように見えた。
俺、なんかマズい事言ったかな?
『ごめん』
この沈黙に耐えられず、とりあえず謝っておいた。
「なんで?」
『いや なんか悪い事言ったかもしれなかったから』
「そんな事無いよ……ただ……嬉しかった……だけ」
そう言ってヒナは笑った。
良く分からなかったが、ヒナに嬉しいと言われてこっちも嬉しくなった。
そして結局、ヒナの弁当を少しもらった。
『「ごちそうさまでした」』
俺が弁当を片づけていると……
「明日も、ここに来て良い?」
ヒナがもじもじしながら、ためらいながら聞いてきた。
『ああ、別に良いよ』
断る理由ないし、なにかためらっているようだったけど、トイレでも我慢しているのかな? 俺はそういうのに気がきかないから、早めに会話を終わらせたほうが良いだろうか。
「ありがとう! 明日から影君の為に、少し多めに弁当におかずいれてきてあげるね?」
『それは悪いから、いいよ』
気をつかわせたくないし。申し訳ないので、やんわりと断った。
「私って……もしかしたら、おせっかいし過ぎたかな? 迷惑だった?」
ヤバい。なんかヒナが泣きそうになってるし
『そんな事ないよ。凄く嬉しいよ』
俺は慌てて言った。
「本当に?」
『うん 本当だよ』
「ありがとう 嬉しい!」
なんで、ヒナがありがとうって言うんだよ。コロコロ表情が変わる子だなぁ。きっと、ずっと見ていても飽きないんじゃないだろうか。
『本当に良いの?』
ヒナの負担になるんじゃないかと思い、俺はもう一度尋ねた。
「任せなさい!」
ヒナは、自信たっぷりみたいだ。
色々話しているうちに、そろそろ昼休みが終わりそうになっていた。結局トイレに関しては俺の思い過ごしだったらしい。どうやら俺は探偵には不向きなのかもしれない。
「そろそろ、教室に戻らないとだね……」
『そうだね。じゃ 俺は図書室に寄っていくから、先に行くね』
「うん 分かった~」
ヒナと別れて、俺は図書室に行った。
女の子の書き方がよく分かりません。
なんか違和感だらけでしょうが、気にしないでください。
ほんわかした良い子 に見せたいんですけどねぇ~