3 出会い
二人でそんな事を話しているといつの間にか時間が経ち、クラスには多くの人が登校してきた。
やがて体育館で全校集会が行われ、校長の話をしっかりと聞き流しながら過ごした。そんなこんなで集会が終わり、教室に帰ろうと廊下を歩いていると、後ろから西森が抱きついてきた。
「影~ さっき女子と話してたよな? しかもいい感じに」
西森のニヤニヤした顔が見える。正確には西森は俺の後ろにいる為、顔を見ることは出来ないが、長年一緒にいた俺なら奴の考えている事ならなんとなく分かる。
『だから何?』
俺は少々呆れながら聞き返した。長年の付き合いのせいか…西森がなにを言いそうか予想がついた。
「兄さんは、応援しているからな」
想像した通りの言葉を言われた。
こいつは昔から変わっていないな。からかっているのが半分、俺を心配しているのが半分と言った所だろう。
『はいはい』
いつものようにからかってくる西森を無視して教室に戻ると、ヒナタと一人の女子がヒナタの席で話していた。俺は机に教科書をつめているとヒナタが話しかけきた。
「影君、紹介するね。こちらは私の友達の美波」
「阿部美波で~す。宜しく~」
『えっと……恵日影です。宜しく』
朝奈(ヒナタ)はおとなしいタイプのようだが、美波はショートカットで元気のある子という印象を受けた。二人も昔からの付き合いだったらしくとても仲が良かった。
授業が終わり、西森と帰ろうとしていると席を立つと、横の席から朝奈が話しかけてきた。
「影君……ケータイの……メールアドレス……交換しても良いかな?」
朝奈が顔を赤くしながらも一生懸命にそう言ってきたが、実は俺はケータイを持っていなかった。そう言うと朝奈は残念そうにしていた。
『西森に教えてやってくれない? あいつとは近所だからなにか用事あるなら、あいつから教えてもらうからさ』
「う……うん。分かった」
そして、西森のケータイには、 朝奈と美波のアドレスが登録された。
朝奈にケータイを買う予定あるか聞かれたが、実際買う予定は無かった。
『いつかは……買うつもりだよ。だから、その時はアドレスを教えてね』
「うん!」
その時のヒナタの返事の声が嬉しそうに聞こえたような感じだったが……多分、気のせいだろう。
西森は二人とアドレスを交換し、帰り道ウキウキしながら歩いていた。
「いや~ 初日から友達が出来るとはな、しかも女子! 兄さんは感動した!」
西森は立ち止まってガッツポーズをしながら感激の涙を流している。
『はいはい。良かったね』
西森を無視して歩いた。
「影~ お前のおかげだよ。……あんな可愛い子とアドレス交換できるなんて」
走って影に追いついてきたが、顔は相変わらずウットリしていた。
こんなだらしない顔をしていたら電柱とかにぶつかりそうだな。影はそう思いながら西森を見ていた。
『んじゃ、俺はバイトあるから』
影は道路の分かれ道で西森にそう言った。
「ああ……お前は……色々大変だよな」
西森は少し哀しそうな顔をする。普段はふざけているだけの奴のくせに、心配してくれているのが伝わる。
『まあ…仕方ないだろ。じゃあな、西森』
「たまには、息抜きにウチに寄れよ?」
了解と言い残してから影はバイト先のコンビニに向かっていった。
とりあえず、登場人物の名前を特殊にしてしまったので、ルビを振っております。
いつか、長編になればいつしか主人公の名前を覚えてもらえると信じ、所々にしかルビをいれません。(めんどくさいのもありますが)
新しいドラマとかって4話くらいにならないと名前と顔が一致しないですからね。
小説は顔が無いので、さらに覚えるのが難しいですし。