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神さえも裁けない  作者: 筧 耕一
起承転結の起
12/59

朝奈の事情

 放課後になり、私は美波と帰った。 並んで道路を歩いていると……

「朝奈~ 今日の影君、数学の時間凄かったよね~」

『そうだね。 えい君って凄く賢いからね』

「へ~ 朝奈、影君のこと詳しそうだね」

『そんな事ないよ? 美波みたいに影君の個人情報知らないし』

「あんたは、積極的に話しかけないからね」

『うん…そうだね』

「……真田さんも影君を狙ってるんだろうね」

 美波は腕を組んで休み時間の出来事を思い出しているようだった。

『え? そんなぁ』

「あの様子は影君を気になっていたよ 頭良い人が好きらしいからね」

 私も真田さんが言っていた事を思い出した。

『そういえば、そんな事言ってたね』

「ふ~ん」

 美波が、ニヤニヤしていた。

『どうかした?』

 私は美波のニヤニヤの理由が気になった。

「影君と、真田さんの会話を盗み聞きしてたんだ?」


 ギクッ


『ち、違うよ。たまたま……聞こえてきたから……だよ』

私が、言い訳に聞こえないように言い訳をすると、美波は呆れた顔をしていた。

「朝奈~ 分かりやすいよ。それに本当はあの時、教科書読んでいなかったでしょ?」


 さらに、 ギクッ!


『な、なんで?』

 なんで、美波にバレてるんだろう。

「私が教科書覗いた時に、まだ習ってない所見てたから」


 しまった! 初歩的なミスをした。


「朝奈はさ、影君に一目惚れなの?」

 美波は不意打ちのように突然話を変えてきた。

 私は顔が熱くなるのを感じたが、平然としたつもりで言った。

『う~ん……一目惚れかもね? 昔ね……』

「昔? えい君に逢ってまだ、一カ月とちょっとでしょ?」

 美波は、不思議そうに言った。

『一年の頃に見たことあったんだ』

 私は顔の熱さを隠すように、下を向きながら歩いた。

「え~ その時の事を教えてよ? 影君って凄く目立つ人じゃないよね? なんで覚えているの?」

『ナイショです!』

 私は、下を向いたまま歩くスピードをあげた。

「ケチ~」

 私は美波の質問を回避し、そして家に帰った。


『ただいま 帰りました』

 すると家の奥から、森崎さんが出てきた。

朝奈あさなさん、お帰りなさい。今日は早かったですね。」

『はい。 学校からまっすぐに帰ってきましたから』

 そう告げた後に、私は森崎さんから逃れる為に真っすぐ部屋に向かった。部屋に入ると、お見合い写真が増えているように感じた。


つまらないな~

 そう思って、部屋でゴロゴロしていると食事の準備が出来たらしく、森崎さんが呼びにきた。


 家族で一緒に食べる食事は疲れる。 父と 母、日向雅ひゅうが みやびは、いつも私をどこかの会社社長の息子などと、お見合いさせようとしている。

 いわゆる政略結婚だ。

 姉、日向唯奈ひゅうがゆいなは、そんな父と母のせいで、もう結婚している。 しかも社長の息子と結婚しておりお金もあり、夫は海外出張などで居ないことが多く、自由時間が多いらしい。 子供も小学生の息子と幼稚園の娘が居る。

 私は親に一日一回は、お見合いしろ と言われ続けている。

 今、私が学校のクラスメートの影君が好き って言ったら、おそらく影君の生まれとか、欠点を嫌っていうほど調べてくる気だろう。 家柄が全てじゃないのに……。


 食事の時間が終わった。相変わらず、両親からはお見合いの事を言われた。

 私は部屋に戻って、30分ほどしてから厨房に向かった。両親などに内緒で料理長のゲンさんと一緒に明日の弁当のおかずを決める為だ。

 両親に影君の弁当を作っていると知られたから、怖い事になりそうだ。 

その後私はお風呂に入って、少し美波とメールしてから寝た。


次の日、私は朝早く起きて厨房に行き、元さんと昨日打ち合わせしたおかずを作った。


「朝奈ちゃん ここの所、毎日自分で弁当作ってるみたいだけど、どうかしたのかい?」

ゲンさんは50歳ほどの白髪のおじちゃんで、昔から私を特別扱いせず、いつも私の味方をしてくれる人である。

 私にとっては実のお爺ちゃんのような存在だ。おそらく、影君の事を話しても素直に応援してくれるのはゲンさんとお姉ちゃんだけだろう。

『えっと、そろそろ自分でもお弁当作ってみようかなって思って』

「それにしては、量が多いな~ 朝奈ちゃん? 男でも出来たかい?」

 ゲンさんは、笑いながら聞いてくる。

『えぇ~ そんな事ないよ~』

「俺にも隠すなんて寂しいじゃないか。奥さんとか森崎には言わないから、そのうち教えてくれよ」

『付き合う人が出来たら、教えてあげるね』

 元さんは、融通の効かない森崎さんが苦手なんだろう。その後、いつも通りに朝ご飯を食べて、学校に行った。

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