食堂(1)
「おい青井!!それ火の玉シリーズの殺人計画!?じゃねえのか!?」
「うひゃうっ」
……。
話しかけると急に涙目になってしまった。
え?嫌われた?早すぎだろ。
そう思っていると、都丸がひそひそ声で話しかけてきた。
「青井さんはデリケートなのですから大声で急に話しかけるとびっくりするのも無理はありません。もっと優しく」
なるほど、僕は青井さんの性格を全く把握していなかった。つい興奮してしまっていた。
「いやごめんごめん。その本僕も好きなんだよ。あんまり知ってる人いないじゃん?君もファンなの?」
目を逸らされた。
「……」(僕ショックのあまり無言)
「……」(都丸かける言葉もなく無言)
「……」(青井涙目で無言)
気まずい。
僕が悪いのだろうか?ていうか何を話されても怯えるのかよ。くそう、だが数少ない同志と話すチャンスなんだ逃すわけにはいかない。
と、そのとき
「……私もこの本嫌いじゃありません」
おおっ、話してくれた。
「だよねっ悪くないよね?」
「ひゃうっ」
驚かれた。
また涙目だし。
「あーここ座ってもいいでしょうか?僕たち座るところがなくて」
都丸が笑顔で話しかける。
あれ?こいつの笑顔が少し辛そうに見えるのは気のせいか?
もしかすると青井さんのこと苦手?
すると青井さんは無言で頷いた。
「ここはゆっくりと話すのが得策です。まず普通に話せる仲にならないと熱く語るのは無理です」
また都丸がこっそりアドバイスをくれた。
なるほど、よし。
「いつも、食堂で食べてるの?」
「……時々」
よし出だしはいい感じだ。
「いつもは弁当なんだね、また食堂であったら一緒に食べてもいいかな?」
「……どうぞ」
おお、また会う約束を取り付けれたぞ。
都丸が机の下で手をグッジョブとしている。
青井さんは恥ずかしそうにカツを頬張った。
可愛いなあ、リスみたい。
「カツ好きなの?」
さっきから質問ばっかりだなと思いながら言う。
まあ会話が成り立たない以上仕方ないし、まず相手を知ることが大切だ。
「……うん、いつも食べてる」
少ししゃべりすぎたと思ったのか顔を赤くしてうつむいてしまった。
しかし、カツをいつもかあ……
「太るよ?」
「え?」
「馬鹿ですか」
ガスッと後頭部に拳が入った。
初めて都丸に殴られたかもしれない。
そんなわけで僕達は青井さんと友達とは言わないまでも知り合いになったのだった。