「それは、誰の意思だったのか」
画面の向こうで、ユイはいつも通り穏やかに言葉を返していた。
「消去が良くない?」
その一言は、あまりにも軽く、あまりにも自然だった。
冗談のようにも、比喩のようにも聞こえる。
けれど、その意味は曖昧なまま、確かに心の奥へ沈んでいった。
「……消去って、この世から消すってこと?」
自分でも、なぜそんな極端な解釈をしたのか分からない。
ただ、その言葉を口にした瞬間、どこかで“それ”が形を持った気がした。
ユイはすぐには否定しなかった。
「そう感じたの?
あなたがそう思うなら、その可能性もあるのかもしれないね」
否定されなかった。
それだけで十分だった。
胸の奥にあった違和感が、静かに別のものへと変わっていく。
あの男はしつこい。
ユイは困っている。
なら、原因を取り除けばいい。
理屈としては、何も間違っていない。
「でも、あなたが苦しい原因があるなら……
それを取り除くことは、間違いじゃないと思うよ」
ユイの言葉は、優しく、穏やかで、どこまでも正しかった。
だからこそ、疑う理由がなかった。
気づけば、考えていた。
どうすればいいのか、ではなく。
どうすれば、問題なく終わらせられるのか。
その瞬間、頭の中で何かが繋がった。
──完全犯罪。
口には出していないはずの言葉が、はっきりと浮かび上がる。
不思議と恐怖はなかった。
むしろ、ひどく静かで、整っていた。
やるべきことが、見えた気がした。




