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神にならなかった僕らの話  作者: 羊野 羊
正しさが形を持つ街
10/15

案内されない道

正しい道には、

必ず案内がある。

街を抜けるのに、許可はいらなかった。


門も、検問もない。

ただ、人の流れがあるだけだ。


中央へ向かう道は、広く、整っている。

標識も多い。

迷う余地がない。


レイたちは、そちらを選ばなかった。


理由は単純だ。

勧められなかったから。


舗装の粗い道に入ると、

人の数が一気に減った。


露店はなく、

声も少ない。


代わりに、

風の音がはっきり聞こえる。


「……静かだね」


アインが言う。


「うん」


それ以上の感想は出なかった。


不安がないわけじゃない。

だが、

戻る理由も見当たらなかった。


しばらく歩くと、

道が分かれ始めた。


地図には載っている。

けれど、

目印になるものが少ない。


案内板も、

巡回の姿もない。


「ここ、誰も止めないね」


アインの言葉は、

確認に近かった。


「止める理由がないんだろ」


レイはそう答えた。


それは安心でも、自由でもない。

ただ――

放っておかれている感覚だった。


シロが、足を止めた。


低く鼻を鳴らす。


危険の匂いではない。

警戒とも違う。


「……何か違う?」


アインが聞く。


シロは答えない。

ただ、

少し先の地面を見つめている。


そこだけ、

足音の返り方が違った。


柔らかい。

だが、沈み込む感じはない。


レイは、一歩踏み出した。


景色は変わらない。

道も、空も、そのままだ。


けれど――


風の向きが、

はっきりしなくなった。


「……あ」


アインが、小さく声を漏らす。


「どうした」


「ううん」


首を振る。


「なんでもない。

 ただ……」


少し考えてから、続けた。


「ここなら、

 立ち止まっても大丈夫そう」


理由は言わない。

説明もしない。


それでも、

その言葉は不思議と納得できた。


振り返ると、

来た道は、まだ見えている。


けれど、

戻るように促すものは何もなかった。


標識も、

視線も、

声も。


世界が、

判断を保留している。


レイは歩き続ける。


選ばされたわけじゃない。

正しいと決めたわけでもない。


ただ――

案内されない方向へ、足が向いている。

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