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おバカ貴族と神童






荘厳(そうごん)なる講堂(こうどう)では、教会の洗礼儀式が粛々と執り行われていた。


壁には聖者のステンドグラスが七色の光を投げかけ、(おごそ)かな雰囲気を(かも)し出す。この日、国中の貴族や平民の子供たちが集い、誰もが自らが、あるいは我が子が、特別な「異端核」に選ばれることを願っていた。その期待と緊張が、静かな講堂を満たしていた。


カサル・ヴェズィラーザム、当時五歳。

神童として、歴史の表舞台に立った始まりの日である。

言葉を覚えたばかりの彼は、父の真似をしては女に声をかけるマセガキであった。


「お姉さん可愛いね。僕の側室にならないかい?」

意味も知らず発する言葉に、内なるカリスマの片鱗が宿るも、誰も気づかず彼を可愛がり、撫でまわしていた。


そうこうするうちに儀式も終盤に差し掛かり、最後の目玉である「選別の儀」が始まった。


国中から集められた異端核が、四歳から七歳の少年少女たちへお披露目される。神父は彼女達が気を取られているうちに、ひときわ輝きが鈍い十等級の異端核を子供らにかざして回り、反応があれば魔女候補として名を記した。


「ふむ……微弱だが反応がある。君は将来魔女になれる。頑張りなさい」


十等級の異端核にかざされた少女は目を輝かせ頷く。隣のカサルは、そこで初めて異端核を知った。

神父はカサルの父イサムに少女の処遇を問うた。貴族にとって魔女の数はステータス。野放しは機会損失に他ならないからだ。


「ム……もちろん厚く遇するべきだろう。魔女は多いに越したことはない」


「ハハッ、必ずや神は御覧になっておられることでしょう」


大人たちの遣り取りを他所に、カサルは飾られた異端核を見上げていた。


「うわぁ……キラキラがいっぱいだー」


気分が高揚するカサルの頭をイサムは撫でると、そっとケースから遠ざけた。


「カサル、それはお前には関係のないものだ」


「どうして?」


失望の色を見せるカサルに、父に代わって神父が答える。


「男の子がこの石に選ばれるのは、女の子よりずっと難しいことなのですよ」


男の異端核保持者は女の千分の一。圧倒的に魔法適正は女性にあった。それを理解できないカサルは首を傾げ、再び異端核を見上げた。


「もっとキラキラみたい!」


神父を無視して父を頼る姿にイサムは苦笑して、無邪気に駄々をこねる可愛い息子に笑顔応じてやることにした。


「まあ、見識を広めるのも良いかも知れんな」


イサムは幼いカサルを肩車すると、高い位置にある異端核も見えるように息子を近づけて、異端核を観賞させた。それを見ていた神父は興味があるならば触ってみますか、と直接少年に異端核を触らせて、少年の知的好奇心を満足させるよう努めた。


そんな和やかな雰囲気が満ちる中。


並べられた異端核の中で、最も大きなものにカサルが触れようとしたその瞬間事件は起きた。周囲の熱い視線が集まる中、カサルの指先が、その黒曜石にも似た最高等級の異端核に触れた。刹那、空気が震え、古びた講堂の壁を揺るがすほどの魔力の奔流(ほんりゅう)迸る(ほとばしる)


突如として講堂を埋め尽くした白く眩い閃光に、周囲の関係者は目を眩ませ、思わず膝をつき、何事かと、全員の目が吸い寄せられた。


そして全員が驚愕する神父の姿を瞳に捉えた。その手元では、先ほどまで鈍い輝きだった三等級の異端核が、まるで新たな太陽のように脈動していた。


「三等級の異端核が…………光っている?」


神父のその言葉で全員が、光る異端核とカサルを交互に見つめた。誰もが信じがたい光景に息を飲み、時間だけが無限に引き伸ばされたかのように感じられた。


「アァ………あぁ………」


イサムが次に鳴き声のような言葉を漏らした。


そしてイサムは肩車をしている息子が異端核に選ばれた非常事態に混乱し、貴族という立場、これまでの会話、全てを忘れ、涙と鼻水を垂らしながら膝を震わせて、「あぁ……あぁ……」と喜びを漏らす生き物になり果てた。


神父もまた、「ワぁ……しゅごぉい………しゅごすぎぃ……」と、祈りの言葉も出ず、目の前の奇跡に膝をつき感涙した。


講堂に佇む全員が、目の前の奇跡を理解し、その歴史の生き証人になれたことを誇りに思い涙を流した。選ばれなかった子供たちは、呆然としながらも、歴史的な瞬間に立ち会ったことに、どこか畏敬の念を抱いていた。


カサル・ヴェズィラーザム、当時五歳。


3等級異端核(ルグズコア)、魔法名【(ウィンディ)】に適合。


歴史上初の五等級以上の男性異端核保持者(ルグズコアホルダー)として登録された、最年少の魔法使いである。

「ワぁ……しゅごぉい………しゅごすぎぃ……」

この作品の方向性を端的に表すいいセリフだと我ながら思っています。



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