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ゴスロリ貧乏貴族は天才発明家(男の娘)!? ~働きたくないので魔道具を作ったら、いつの間にか国家経済を支配していました~  作者: 星島新吾
第二章:王都シラクーザ編

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おバカ貴族とわくわくお菓子ギルド設立???

 バァァァンッ!!

 ビチャアァ!!

 バッチコーンッ!!


 航空船の工房に乾いた破裂音が響き、赤い蛍光塗料が血飛沫が飛散する。

 これで記念すべき三百体目の犠牲者(破壊されたマネキン)を出し、大台にのったカサルはアーモンドをガリガリとかみ砕きながら、大きな溜息をついた。

 その後に無言でゴーグルを外し、染みついた塗料を作業服に使っているツナギの袖で拭い、ふぅーと溜息をつく。


「……チッ。圧力制御は完璧だったはずだ。血管の耐久値の計算が甘いのか?」


 マリエへの手術を見据えたシミュレーション。

 風魔法による体内操作は、顕微鏡レベルの繊細さが要求される。コンマ一秒の遅れが、患者の破裂(死)を招く大手術だった。


 カサルの足元には、無惨な姿になったマネキンの山が築かれていた。多種多様な方法で壊されたマネキンだが、そのどれにも同じミスはなく、むしろ着実に精度を上げて爆散していた。


「カサルちゃん、ちょっと休憩しよ?」


 工房に入ってきたマリエの言葉に、邪魔をするなという気持ちと、焦りと、不甲斐なさと、そんな自分の恥ずかしい怒りを彼女にぶつけてしまいそうな自分に反吐が出た。


「むぅ……」


(……煮詰まったな。少し風を入れるか)


 カサルが気分転換に甲板へ出ようとした、その時だった。

 工房のドアが控えめにノックされ、おずおずと顔を出したのは、例の十三人の少女たち。


「あ、あの……カサル様。今、お時間よろしいでしょうか……?」


 先頭に立つのは、タヌキに続いて少女たちの中で最年長のミナだった。


 カサルは当初名前を覚える気は全くなかったが、彼女はやたらと船内で名前を呼ばれる回数が多く、それもお手伝いなどをするという点で、良い貢献をしているため自然と覚えたのだった。


 彼女たちはまだカサルを恐れている節があるが、その瞳には以前のような忌避感はなく、微かな「意志」の光が宿っているようにも見えた。


「……この(オレ)に何用だ。遊んで欲しいのか?」


 カサルが赤い塗料まみれの作業服のまま、疲れ顔で視線を向けると、少女たちは「ヒッ」と身をすくませる。


 普段はしている化粧も今はしておらず、未発達な少年のあどけなさと血の塗料によるバイオレンスが融合して、奇妙な姿になっているため怖がっているのだろう。


 だが、ミナは震える手で一枚の羊皮紙を差し出した。


「こ、これ! 私たちで考えたんです! ……見てください!」


「……企画書?お前達、字が書けるようになったのか?」


「ハイッ、タヌキ(ゴンザレスさん)に教えて貰いました」


 奇妙なことを言うものだとカサルは眉をひそめるも、手袋を取ってその紙束を受け取った。


 そこには、カサルが作った『教師の囁き(マニュアル)』を使って覚えたであろう、拙い文字でこう書かれていた。


『お菓子作りギルド設立計画書』


 やたらと部厚みのある計画書を手渡されたことを面白く思いながら、カサルは航空船の中でお菓子屋さんを作るならどこがいいかと考える。


「……ほう? お前たち、空賊の船で菓子屋ごっこをしたいと?」


「ご、ごっこじゃありません! 私たち、ずっとタダ飯を食べてるのが申し訳なくて……。

 リリさんに聞いたら、王都ではお菓子が流行ってるって……。私たち、研究所にいた頃、少しだけ料理の手伝いをしてたから……」


 

 必死に訴える少女たち。

 その熱意にほだされたわけではないが、カサルは”それじゃあこちらも本気で見よう”と、「子供のお遊び」を見る目から「冷徹な商人」の目へと切り替え、企画書を吟味した。


 結論。

 計画は杜撰、見通しは甘い。作る菓子以上に甘ったれた、ゴミ企画そのものだった。


(こんな物に時間をかけるぐらいなら外で遊べ───いや、待てよ……)


 カサルは鼻で笑おうとして──ふと、思考を巡らせた。

 彼女たちの手を見る。綺麗な手で、何とも頼りない小さい指先。

 努力の痕なのであろう、薬草など指先に巻いている子もいたが、そんなものは当然お金にならない。


(努力がそのままお金になったら良いんだけどな)


 そんなことを思いつつ、カサルが想起したのは、遠く離れたエルドラゴの鉱夫達のことだった。


(……そういえばエルドラゴでは、絶賛『歌うツルハシ』が大流行中だったな)


 連日連夜、ギェ~ギョェ~と絶叫しながら岩を砕く鉱夫たち。

 当然、彼らの「喉」は限界を迎えているはずだ。

 そこに天使たちからの施しが入るとすればどうだろう。


(少女達を着飾らせて、手渡し販売なら差別化できるか……?)


 カサルの脳内で、面白い化学変化が起きたのは言うまでもない。


「……却下だ。王都の菓子市場は飽和状態だ。素人のクッキーなど売れん」


「そ、そんな……」


 少女たちが肩を落とす。だが、カサルはニヤリと悪魔的に笑った。


「だが、『薬』なら話は別だ」


「くすり……?」


「そうだ。お前たちが作るのは、甘いだけの菓子じゃない。

 酷使された喉を癒し、明日への活力を生む『ハーブのど飴』なら、成功するだろう」


「で、でも私達最終的にはケーキとか作りたくて……」


「寝言は銅貨一枚でも稼いでから言え」


 そう冷たく言い放つと、カサルは床に彼女達の企画書を置いて、その隅っこにペンで連絡先を書いていく。


「ココに(オレ)の名前を使って手紙を送ってみろ」


「もしかしてぇ、王都のお菓子ギルドとか?」


 マリエが計画書に書かれた連絡先を見下ろしてカサルに訊いたが、彼は首を横に振る。


「いや、悪いがそんな知り合いはいない。だが、この手のヤツは錬金術師ギルドの方がいい。アイツらはハーブやら魔法薬の素材にも詳しいからな。あと薬草学の専門家にも効能について聴くと良いだろう」


 死装束機関(シュラウド)の、ロリコン錬金術師と毒草マニアの連絡先を記入して彼女達に渡す。


「材料調達はマリエが薬草と砂糖を安く仕入れられる場所を知っているから、存分に頼るといい。

 そしてターゲットはエルドラゴの鉱夫たちにする。あいつらは喉が痛くても休めん。多少高くても、喉に効く飴なら飛ぶように売れるだろうさ」


 カサルの演説に、少女たちが顔を見合わせる。クッキーやケーキを作れないのは非常に残念でカサル様の馬鹿ッ、と言いたいところだが、ハーブ飴という作る物の明確化と難易度の低下で、彼女達に見えていなかったハードルが薄っすらと見え始める。

 

 そしてそれはそのまま彼女達のやる気へと変化した。


「そ、それなら……私たちでも作れるかも……!」

「私、薬草の調合なら少し分かる!」

「私、包装が得意です!」


「いいぞ。その意気だ」


 カサルは少女たちを見渡した。

 今まで「守られるだけの存在」だと思っていた彼女たちだが、よく見れば個性がある。

 計算が早い子、手先が器用な子、目ざとい子。


 タヌキの教育と、カサルのマニュアルによって、彼女たちは確実に「戦力」へと育ちつつあった。


(……ふん。悪くない。「失敗作」などと卑下していた頃より、よほどいい顔をする)


「許可する。今日から貴様らは『ギルド・マリエの製菓部門』だ。

 死ぬ気で飴を練れ! 利益は我《オレ》のものだが、給料は弾んでやる!」


「「「はいっ!!」」」


 少女たちの歓声が工房に響く。

 その中でふとマリエは自分の名前が使われていることに疑問を抱いた。


「なんで私の名前なの?」


貴族(オレ)の名前を使うと色々と権利関係が面倒になるからな。教会にも目をつけられるし、(オレ)の親が「名前を使うなら金を寄越せ」と言ってこないとも限らん。だから……すまんな」


 ヘルメス商店の金貨の受領先も、全てマリエ名義で勝手にしていたカサル。

 いつの間にかあちこちで自分の名前を見ることになったマリエはポカーンと口を開いた。


「えぇ~……聞いてないなぁ……」


「心配するな。特に何か仕事をするということはない。ただちょっと、お金が入って来て、ちょっと各所で名前を見るだけだ」


 そうは言っても空賊稼業も最近出来ていないし、ずっと交易関係の仕事ばかりカサルにやらされているマリエ。そしてその”ちょっとだけ”と言った収入が空賊稼業に追いつき始めているのも、彼女はあまり面白い話ではなかった。


(私がカサルちゃんを養いたいのになぁ……)

 

 今まで彼を養っていた身としては、成長した彼を見れることは嬉しい。だが、それとは別に彼が自立出来てしまうのは彼女にとって最悪とも言っていい大事件だった。


 永遠に工房に監禁しておきたい彼女にとって、彼の献身的な行動は目に余る行為だった。


(カサルちゃんに負けないように私ももっと稼がないと……それにはもっと人が必要だなぁ……空賊稼業じゃカサル経済圏にも勝てそうにないし……)


 マリエは自分からカサルを奪おうとするカサル経済圏に、憎しみにも似た感情を抱いていた。だが、それを邪魔することができない以上、自分がそれ以上の存在にならなければならないことは明白。

 だとしたらやることは一つ。

(作らなきゃ……マリエ経済圏……!!)

 「どうしたのだマリエ?」

 「うぅん……なんでもない。ちょっと、……考えごと」

 「そうか」

  そんな一番身近にいるマリエの密かな野望に、気づくこともないカサルなのであった。




 ──バチッ。


 全員でお菓子ギルドの計画書を練っていると不意に、カサルの指先で、静電気が弾けた。


「……ん?」


 カサルは手を止める。

 乾燥しているわけではない。むしろ、王都の空気は湿り気を帯びている。

 なのに、船内の魔力計の針が、微かに、しかし不規則に揺れていた。


「……なんだ、この『圧』は」


 艦橋から窓の外を見る。

 王都の空は、いつも通りの鉛色だ。

 だが、カサルの肌には、嵐の前の静けさとも違う、もっと生物的な──巨大な捕食者が近づいてくるような、ピリピリとした予感が走っていた。


「……気のせいか? 」


 カサルは目を細める。

 商売は順調だ。計画も進んでいる。

 だが、空の向こうから、何かが確実に近づいている。

 それは、彼らが積み上げた「日常」を、一息で吹き飛ばすほどの災厄の足音だった。

(作らなきゃ……マリエ経済圏!!)


書いているとたまに、こういう予期せぬセリフがパッと浮かんで自分を困らせるんですね。

そんなの書いてる余裕ないよ、蛇足になっちゃうよっていう気持ちと、そんなものを未来の自分に任せて今気持ちよくなれる文章を書こうぜっていう自分がいるんですよ。


多分、というか確実に二日後か三日後のストーリーに関わるんで自分は困るんですよコレ。

伏線回収を忘れずに書きたいですけど、もし忘れてたらまた2章が終わった段階で、修正入れるかも知れないですね。


それで話は変わりますが、次回はメディシスさんが出てきます。

わるーい人です(登場人物の殆どは悪人定期)。

悪い人ですが、個人的には面白い人になる予定です。

ヘルメスもいるので、明日の話もおそらく面白くなってくれるでしょう。




リアクションされると喜びます。

それではまた、次のお話でお会いしましょう。(´・ω・)ノシ

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