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ゴスロリ貧乏貴族は天才発明家(男の娘)!? ~働きたくないので魔道具を作ったら、いつの間にか国家経済を支配していました~  作者: 星島新吾
第二章:王都シラクーザ編

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おバカ貴族とレビス・アークライト

「立ち話もなんだから……場所を変えようか」


 レビス卿の提案により、護衛を引き連れ二人はピース堂の最上階にある会員制サロンへと移動した。


 豪奢なソファに腰を下ろすと、カサルは改めて目の前の「旧友」を観察する。


 髪は鮮血のような赤と新雪のような白のストライプ模様で、その祝いの色を纏う麗人は、一切の装飾を排した漆黒の燕尾服を身に纏っていた。


 中肉中背のしなやかな肢体は、一年周期で男と女を行き来する『呪い』によって、アダムとイヴの境界線上に揺らめいている。


 性別を超越した3人目の神の子。


 そう評されるレビス卿は、カサルの視線に気づくと艶然と微笑み、カサルの手を自身の両手で包み込んで愛おしそうに撫で回し始めた。


「あぁ……相変わらず良い肌触りだ。人形のように精巧で美しい」


「離せ。それと一時間だけだ」


 壁に飾られた時計を気にしながらカサルは答えた。


 レビスは、カサルと同じ三等級異端核【修復(リペア)】に選ばれ、その呪い(あるいは祝福)によって両性具有となった稀有な存在だ。だから当然、レズとかホモとかを超越した恋愛観を持っている。


「卿はあれから、結局どちらで生きて行くのか決めたのか?」


「ははは、いや。それが実はまだなんだ。まあ、この際どっちでもいい気がしているけどね。カサル君はどっちの方が面白いと思う?」


 クスクスと小さく笑いながら、カサルの掌を指でナゾって遊ぶレビス卿。

 幼稚な行動に見えるが、カサルの六歳年上で、その思考は常に深淵を探求している。


「……(オレ)が言うのもなんだが、卿も難儀な人生だな」


 カサルの言葉にレビスは喉を鳴らして笑うと、テーブルに置かれたサービスのアーモンドに手を伸ばした。


「難儀、か。……でもね、カサル君。僕は自分の在り方を気に入っているんだよ。それは君が学園にいた時から変わらない」


 レビスはそう言って過去を懐かしんだ。


 カサルがまだ年少だった頃、監督生であるレビスの小間使いをしていた時期があった。

 周囲から異端核の呪いを理解されず、一人で女装していたレビス。

 そんな彼に気を遣った年下のカサルが、一緒に女装を始めたのが、二人の奇妙な絆の始まりだった。


 カサルにとってレビスは、高貴なる者の務め(ノブレスオブリージュ)とは何かを教えてくれた兄貴分であったし、レビスにとってカサルは自分の境遇を始めて理解してくれた歳の離れた小さな友人でもあった。


「少しはその探求に成果はあったのか?」


 カサルの問いにレビスは三粒のアーモンドを手に取ると、テーブルの上に三角形を描くように配置した。


「カサル君、君はこの国の現状をどう見ている?」


 コレが単なる談笑ならば、適当に「知ったことか」と普段通りに返すが、こと貴族の王(レビス)にその問いを投げかけられたことにカサルは思案し、少し後に、端的に現状のシラクーザを言葉で言い表す。


「……『予測不能(カオス)』だ。今までにないスピードで文明が発展して行っている。こんなことは過去に前例がない、異常事態だろうな」


 カサルは更に、テーブルの上のアーモンドを指差した。


「ここに『貴族』『国』『民』という三つの星があるとする。こいつらは互いに『利益』という獣の引力で引き合っているが……三つの引力が同時に働くとどうなるか」


 カサルは指でアーモンドを弾く。三つは不規則にぶつかり合い、テーブルから転がり落ちた。


「計算不能な軌道を描いて、最後は共倒れだ。これが『三体問題』──解決不能なこの国の運命(さだめ)よ。だから賢い奴は他者を切り捨て、自分という星の軌道だけを守ろうと動く。(オレ)が捨てるのは当然───」


 カサルは『国』に見立てたアーモンドを、テーブルの端へ転がした。


「この国では駄目かい」


 レビスは鋭い視線をカサルに向けた。彼はカサルが空港で権力を使い入国したことも、エルドラゴでどのように成り上がったのかも知っている。なので、これからもカサルは法の不備を突いた何かをするだろうという確信があった。


 それはある意味では国に対する憤りと彼なりの小さな反抗なのではないかと、レビスは少なからずそう思っていた。


「卿は勘違いしている。これは善し悪しではない。このシラクーザとて、高々数百年の歴史しかない国だ。それが滅んだところで、その土地に住む国民が生きられるなら、その道を選ぶのが常道であろう」


 カサルの冷徹な分析。

 だが、レビスは落ちたアーモンドを拾い上げると、うっとりとした表情で口に放り込んだ。


「ハハッ。三体問題に例えるなんて、カサル君は相変わらず空が好きなんだね。……じゃあ僕も好きなモノで例えよう。数字の話さ、……僕にはこれが『地図(塗り絵)』に見えるんだ」


 レビスは懐から、真っ白なシルクのハンカチを取り出し、テーブルの上にふわりと広げた。


「どんなに複雑に入り組んだ地図でも、『四色』あれば、隣り合う領土が同じ色にならずに塗り分けられる定理を知っているかい?」


「……四色問題か?」


「そう。貴族()()()。……この三色が直接ぶつかれば、境界線で争いが起きる。

 だからこそ、僕が『四色目』として入ることで調和がとれる」


 レビスはハンカチの上に指を這わせる。


「僕という『道具』が間に挟まることで、彼らは直接ぶつからずに済む。

 汚れ仕事(ウェットワークス)調整役(コーディネーター)、言い方はあれど僕がその『境界線』になれば、世界はたった四色で美しく完成するんだよ」


 その瞳に宿るのは、自己犠牲の精神などという生易しいものではない。

 滅私という名の、狂気じみた快楽だった。


「個我なんていらない。僕は世界を塗り分けるためのインクでいい。

 ……ね? カサル君。誰かのために擦り切れるまで使われる。それはとても幸せなことだよ。

 君も分かるだろう?」


「……」


 カサルは沈黙した。

 理解はできるし共感も出来る。だが、真似しようとは思わない。

 利他的行動の極致、「貴族の義務(ノブレスオブリージュ)」の成れの果て。


 これで口だけではなく行動で示している分、ある種畏敬の念すら湧いてくる。


「……なるほど。卿の異常性はよく分かった」


 この国はしばらく問題なさそうだ、と付け加えることもカサルは忘れない。


「最高の褒め言葉だよ」


 レビスはリンゴジュースを飲みながら微笑む。

 カサルはアーモンドを口に放り込み、ガリガリと砕いて飲み込んだ。


「──そう言えばカサル君、君も面白い『道具』を手に入れたそうだね。胸内の枢機卿(インペクトレ)だって?エルドラゴの密偵から聞いたよ」


「……さすがに耳が早いな。本題はそれか」


「その前に聴いておきたかったのさ。その立場に値するかどうか。君の考えが変わっていないかをね」


 油断も隙も無い人だ。

 カサルは偶然を装いやって来たレビス卿にそんな感想を持つ。

 そもそも中層の大型食料品店に公爵家の長男がいる時点でおかしかったのだ。


「学園で一番成績の悪かった君が、まさか枢機卿(ジョーカー)を手にするなんて。貴族にとって教会は切っても切れない関係だからね。僕の友達がその立場になったことは大変喜ばしい限りだ。これからも仲よくしよう」


 悪気もなく、お互いに権力の有効活用をしようと笑顔で告げるレビス。

 やはりこの男、ただの天然ではない。


「で? 王都に来たのは、その権力を使って何をするつもりだい? マリエ・リーベと空の旅をするのは飽きたのかい?」


 わざわざ枢機卿の話題を出した後に、罪人(マリエ)の名前を出すところに、レビスの底意地の悪さを感じたカサルは、ムッとしながら端的に情報を話した。


「必要な材料を取りに来ただけだ」


「材料?」


「人間の死体だ」


 普通の人間なら悲鳴を上げる答えにも、レビスは眉一つ動かさない。


「あ~……それでシラクーザに。……ソイツは助かるな」


「助かるだと?」


「いやいやこっちの話さ。───確かにここなら沢山あるだろうしね。知り合いで死体に詳しい『変人』がいるけど、紹介しようか?」


 彼に変人と言われる変人が可哀そうだとカサルは苦笑しながら頷く。


「おー、助かるぞ。流石の人脈だな」


「僕の自慢と言えば人脈ぐらいなものだからね」


 レビスはサラサラと紹介状を書きながら、思い出したように付け加えた。


「そういえば、弟君の審査結果は聞いたかい?」


 カサルはレビスに弟が次期領主になっていいかの手紙を送っていた。


「……ザラか。どうだ? 次の領主になっても問題なさそうか」


「まあいいんじゃない? 普通の領地経営をしてくれそうだよ。僕らみたいな『異端』ではない、健やかな善人だ」


「そうか……。もしザラのヤツが困ってたら手を貸してやってくれ。その代わりに、(オレ)も協力は惜しまん」


「それはそれは。枢機卿のお力をお借りできるなんて恐れ多いよ」


 レビスはそうして書き上げた紹介状をカサルに渡す。


 そこには、王都の下層に位置する怪しげな住所が記されていた。


「これを持っていくといい。……ああ、それと」


 帰り際、レビスは悪戯っぽく笑った。


「シソーラ侯爵令嬢によろしく。レビスは敵対する気はないですって伝えておいてよ。彼女、血の気が多くて怖いだろう? 僕、苦手なんだ」


「卿の方が爵位は上ではないか。堂々としていればいい」


「意地悪だなぁカサル君。僕が彼女の前に立ってみなよ? すぐに捕まって、反乱の口実にされるよ。……彼女、前にてるてる坊主を作って『あーした戦争になーれッ』って笑顔で言ってた人だからね……」


 レビスは紅茶貴族として知られるエディスの従兄弟であり、数少ない彼女の本性を知っている人間でもあった。


「……確かに、卿が彼女の近くに行くのは危険だな。伝えておこう」


「またお茶会に誘うよ。次はもっと未来の話がしたいな」


 そう言って、レビスは優雅に手を振って去っていった。

 残されたカサルは、手元の紹介状と、甘いアーモンドの香りに溜息をつく。


「まったく。どいつもこいつも……」


 カサルは残ったアーモンドを口に放り込み、サロンを後にした。

情報量が!情報量が多い!く、苦しい……!

な、なぜこんな密度で書いてしまったんだ……!

減らしたのに、まだ濃い……!

ティーバッグ入れたまま放置したお茶ぐらい濃い……!

とまあ次回はマリエ達と楽しくお喋りをしながらお出かけの続き…といきたいところですが、

ストーリー優先でそこはスッとばして、死体に詳しい『変人』に会いに行きます。

ずっと日常回を書きたいけど、そんな文章で楽しませる文才はあーりません!


リアクションされると喜びます。

それではまた、次のお話でお会いしましょう。(´・ω・)ノシ

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