表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ゴスロリ貧乏貴族は天才発明家(男の娘)!? ~働きたくないので魔道具を作ったら、いつの間にか国家経済を支配していました~  作者: 星島新吾
第二章:王都シラクーザ編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

42/78

おバカ貴族と第一の計画

「はぁ~、綺麗になったかなぁ~」


 カサルを膝上に乗せ、カチャカチャと道具を使い耳掃除をするマリエ。

 初めは絶望的に下手だった耳垢の除去も回数を重ねるにつれて、今ではプロ並みに巧くなっていた。


「次は反対だぞ」


「はーい」


 マリエの部屋で、部屋の主以上に尊大に振る舞う少年に彼女は笑みを零しながら首肯する。

 カサルはマリエが暇にしていそうな時間を狙っては、彼女の部屋に出向いて戯れていた。

 貴族(ヒモ)にとって、貢ぎ人(マリエ)の管理は重要な任務といえる。


 肉体的にも精神的にも異常がないか、常にメンテナンスを欠かさずに目を光らせていた。


「そう言えば前にマリエが沢山研究所から連れ帰ってきたことがあっただろう」


「うん」


「教会の権威を使って(オレ)も少しばかり調べたのでな。そのリストを渡しておく」


 耳かきをされながら、カサルはごそごそとドレスの裾をまさぐり、どこからともなく紙束を取り出す。

 そこにはトップシークレットである実験機材が、どの貴族の領地へ流れ込んだかを示す『裏ルート』の記載がされていた。


「その機材の行く当てを辿って行けば、新たな研究所も見つけることができるはずだ」


「わぁ~、ホントだ。凄いなぁ~」


 耳かきの手を止めて、リストをパラパラとめくるマリエ。そしてすぐにそれをカサルに返した。


「役にたたなかったか? 」


「ううん。もう覚えたからいいの」


 この一瞬で? そんな疑問をカサルは持ったが、マリエが嘘や冗談を言っているようには思えない。彼女は何かと適当ではあるが、必要のないことはしない。


「なんでカサルちゃんは私がコレ欲しい、って分かったんだろう 」


 マリエは膝上に頭を乗せたカサルのおでこに手を置く。サラサラと滑り落ちる絹のような髪の毛の間から、彼の瞳がマリエを覗き見ていた。


「お前の考えていることなど手に取るように分かる」


「そうなんだぁ。カサルちゃんは私の考えていること分かっちゃうのかぁ」


 かきかきと竹の耳かき棒を動かすマリエ。

 カサルは冗談のつもりで言ったが、彼女はその冗談を信じていたし、それで幸せそうだった。


「だからあまり一人で背負い込むなよ。国家権力ならば、余さず(オレ)が相手になってやる。お前が(オレ)を養い続けるのなら、(オレ)の加護がお前をいつでも守るだろう」


「頼りにしてるー」


 マリエの気の抜けた返事が、らしいと言えばらしいとカサルは微笑む。

 リヒャルトラインやゾーイと違って、マリエは余り疲労を顔に出すタイプではない。


 と言うよりも彼女が作る表情の八割が演技であり、残りの一割は適当に作ったものであるため、彼女の真意を推し量ることはとても難しいことだった。


 そのためカサルは、毎回空賊稼業を終わらせて帰ってきた後の彼女の状態をつぶさに観察し、そのバランスの乱れや表情の僅かな違いから、彼女の体力状態を推理するという探偵のようなことをしていた。


(今日のマリエは疲れていない。だから耳掃除を頼んだが……やはり調子は良さそうだな)


 そんなことを考えながら、追加でどんな話をマリエにするかを思考するカサル。

 柔らかな太ももに顔を埋めながら、これからの話をすることに決める。


「そう言えばマリエの胸にある異端核だが……除去するか、成長させるかの二つのパターンがある」


 カサルの唐突な話題の切り替えに、マリエは竹の耳かき棒を耳の奥に突き刺した。


「ぐぁ! な、何をする!? 」


「いきなり変なこと言うから」


「リストを渡した時点で気づいているものだとばかり……リリ(リヒャルトライン)から聞いていないのか」


「リリが~? ……え~、なんで?」


 困り眉でなぜそんなことをカサルに話したのかと、本気で悩んでいそうなマリエ。


 探られたくない過去を掘り返されたような、彼女にとってそれは最も触れて欲しくなかった闇だったのかも知れない。口をへの字にして、マリエはカーペットの上でカサルを正座させた。


「なぜ(オレ)は正座させられているのだ」


「余計なことをさぁ、聴いちゃうのは良くないなぁー。ねぇ? カサルちゃん」


 マリエの珍しくトゲのある言い方に、カサルは若干申し訳なくなる。


「ああ。その非は認めよう。軽々しく口にしていい話題ではなかったな」


「そうだよぉ。ナイーブなんだからぁ」


 自分でナイーブというヤツがいるのかと思いながら、カサルは続ける。


「だがマリエが魔女になるためには必要な話だ。魔女になりたいのなら、空賊稼業が休みの今日みたいな元気な日に話しておきたい」


 模造品と呼ばれる彼女達の体内には、小さな異端核があるとリヒャルトラインは言った。

 カサルに言わせてみれば、それは未完成の異端核だ。

 植物で例えるなら発芽したてと言っていい。


 それが何等級なのかも、土壌()に合っているのかも分からない。いうなれば、危険な花を育てるような行為。体に根を張る前に、摘出することができるならばした方が良いというのがカサルの考えだった。


 そして今度こそ、土壌()にあった花を用意する。それがベストな選択だと彼女に話した。


「私の中にある異端核(ルグズコア)を育てることって駄目なことなの? 」


「いいや、ダメではない。しかし、それは埋め込まれたものだ。自分で選び、選ばれたわけではない」


 例えは最悪だが、政略結婚で無理やりくっついたカップルと、恋愛結婚をしたカップルぐらい違う、と端的に説明するカサル。


「でも後から気づいてやっぱりよかったぁ~ってなるパターンもあるよね」


「ん……まあそうだが……今後一生その異端核と共に歩むんだぞ。成長するかも知れないし、逆に適合率が上がらずにそのままかも知れない。もっと相性のいい相手がいるかも知れないが、それでもいいのか? 」


「うん。私、魔女の景色がみたいんだ」


 マリエは一度決めたらあまり意見を変えない。リーダーとして適正はあるが、カサルはその分彼女に判断材料を十分に渡しきれていないと思った。


「魔女や魔法使いになると、話してはいなかったがデメリットもある。魔女になることが現実味を帯びてきた今話さなければならないだろう。魔女になるという、その本当の意味を」


「勿体ぶるぅ~」


 彼女が異端核の成長、というやり方を好むのならば必ずいつか衝突する課題についてカサルは語り始めた。



「こんなことは本来有り得ないのだが、まずそもそもその胸の内にある成長中の異端核の等級がわからん」


「それって問題なの? 」


「言っただろう。異端核は等級によってその適合率が変わる。それを無理やり体内環境(ボディ)を改造して、押し付けられているのが現状だ。慣れないガラスの靴を(かかと)を削って履いているようなものと考えたらいい。体に相当な負荷がかかっているはずだ。……もしもそれを成長させるとしたら、更にもっと体に重い呪いが降りかかる可能性もある」


 異端核とはそもそもシンデレラフィットが前提の道具であり、無理やり合体するものではなかった。

 適合率を上げる化粧ですら、靴に足を嵌めるための潤滑油のような役割でしかない。


「体をもっとどうにかするとか? 」


「簡単に言うな。(オレ)の三等級異端核【(ウィンディ)】の適合条件だけでも、七歳以下で中性的な美少年、身長は110㎝以下、細身で虚弱体質、貴族なのに外で長時間遊んでいた、という条件があるんだぞ」


 サンプル数が一であるため、コレはカサルの勝手な憶測でしかなかったが、二等級異端核を持つエディスも幼い頃から他の少年少女と違い、十歳で180cmあったと彼女の執事から聞いたことがある。


 等級が上がれば上がるほど、そんな人間が実在するのか、という条件になっていくことは確かなようだった。


「なにそれコワ~い」


 年齢制限もさることながら、私生活まで関与してくる異端核の適合条件に引き気味のマリエ。

 しかしカサルの説明はまだ終わっていなかった。


「それに適合してからも、(オレ)のように第二次性徴が来なかったり、人によっては体から竜の鱗が生えてくる、という事例も確認されている。それに最も闇が深いのは、魔法使いが魔女になったりだとかな……」


「……魔法使いが魔女ってどういうこと? 」


「性別が変わることもあるということだ」


 マリエは静かにカサルの話に耳を傾けている。

 そこに驚きなどはなく、魔法が使えるのだからそんなこともあるか、という魔法について詳しくないからこそ、受け入れることのできるある種の純粋さのようなものがあった。


「でもそれって等級が高い異端核なら、でしょ? 」


「研究所で適合実験をするような異端核だぞ。等級の高い異端核である可能性は十分にある」


 ビックリ箱は開けるまで分からないと、暗にカサルは胸の内にある異端核の摘出を勧めたが、彼女の考えは変わらないようだった。


「ふーん。じゃあ私、この胸の内にある異端核と向き合ってみたい」


 いつも以上にキッパリとした物言いのマリエに、がっくりと、肩を落とすカサル。

 これだけ脅しても摘出をしないというのであれば、もう自分も付き合うしかないだろうと彼はマリエの覚悟に根負けしたのである。


「……まぁ。その異端核が気に入っているのであれば、仕方あるまいな……。わかった。(オレ)も最後まで付き合おう……」


 こうしてカサルの計画にある魔女化計画の一番最初の実験体はマリエ・リーベに決まった。

 異端核がそもそもどうやって成長するのかも、まだ未知数なまま。


「さてと……そうと決まれば、禁断の扉を開ける準備が必要だな」


「何するの? 」


「ん、大量の異端核をバラバラにして差異を見つけ、経過観察をする」


 マリエはカサルの話を聞いて、異端核の分解は人を解剖することに等しい禁忌だと、彼自身が言っていたことを思い出す。


「それって人を解剖する、みたいな感じ? 」


「んん。まあ倫理的には子供を年齢別に解剖して、その成長過程に何があったか調べるのに近い」


 今までは異端核をただ分解していただけだが、今回はしっかりとした目標が建てられていた。


「ワー……教会の人が聞いたら怒りそう~」


「ああ。バレたら一発で死刑だ」


「えへへ。じゃあ私たち、地獄行き確定の共犯者だね」


 マリエの無邪気な笑顔に、彼は肩を竦ませる。


 かつてこれほどまでに神に近づいた人間はいない。

 だからこれより先は間違いなく、神への越権行為だ。

 しかしカサルはそれが神への冒涜とは思っていなかった。


(神の意志を盲目的に享受するのではなく、向き合い、疑い続けねば。(オレ)はその宿命にあるに違いない。問わねばならない。異端核とは何かを)


 異端核を一人で解剖していたカサルの夢は二人の夢となり、そして宿命となった。

 かつてないほどの勢いに乗ったカサルの歴史を変える戦いが始まる。


「さあ、始めようか」


 カサルは場所をマリエの部屋から工房に移動すると、早速作業台に広げた道具──メスやピンセット、そして微細な魔力レンズを手に取る。


 目の前には、マリエ達が持ち帰った大量の異端核が並べられた。

 この数ヵ月の間にマリエ達が盗み、そして適合しなかった異端核の数々。

 それが目的は異なるとはいえ、このように役にたつことをカサルは喜んだ。 


「まずはこの『三等級』からだ。……マリエ、しっかり見ていろよ。これが世界の『中身』だ」


 パチン、とレンズを装着する音。

 研究室の灯りが、夜明けまで消えることはなかった。




























リアクションされると喜びます。

それではまた、次のお話でお会いしましょう。(´・ω・)ノシ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ