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おバカ貴族と運命の歯車

人々が指差したのは、爆発した飛行船から瓦礫と共に落下する、二つの影だった。風に煽られ、頭から急降下するその光景に、カサルは誰よりも早く飛び出す。


「風よ! (オレ)に従え!」


不安定な気流に乗って、少女と男は交互に入れ替わりながら、カサルの眼前に迫る。


(オレ)はこの時を待っていた! 」


少女の腕を掴もうとした刹那、男が先にカサルの胸元へ飛び込んできた。完全に意識を失っており、顔にはまだ生々しい戦いの傷跡が残る。


カサルは、その男をノールックパスで地上にいるであろう魔女たちに(ゆだ)ね、目的である意識を失った少女の体を抱き寄せる。


だが、その胸元を視界に捉えた瞬間、全身に鳥肌が立った。


「ぬぉ!! 何だと!?」


少女もまた、彼はノールックでぽいっと地上へ投げ飛ばした。


「あ、危ねえ。危うく呼吸困難で死ぬところであった……」


顔に現れた蕁麻疹を撫でながら、ホッと一息。彼には母親アレルギーがあった。そして同時に巨乳もまた母親を思いだすため触れるだけで命の危険が伴ってしまう。当然投げ捨てられた巨乳の少女と男は、そのまま地上へ向けて落ちていった。


地上では、二人の落下を受け止めるべく魔女たちが必死の対策を講じていたが、その手前でカサルの風魔法が発動する。二人はカサルの起こした緩やかな風に乗って、ふわりと地上に横たえられた。


魔女たちが驚きを隠せないまま天を見上げると、影になってはいたものの、口をへの字に曲げたカサルの顔が確かにそこにある。


(オレ)がそんな薄情な貴族だと思ったか。領民を助けるのは貴族の義務と知れ」


カサルの言葉に、地上の魔女たちは「バカ猿」「エロガキ」「早く学園来いよ」「てか二人は領民じゃないし」と口々に(ののし)る。しかし彼女たちには落下する気球船(エアシップ)残骸(ざんがい)を始末する仕事もあり、てんやわんやでそちらに意識を割かざるを得ない。


カサルはそんな勤勉な魔女たちに敬礼しながら、地上に落ちてきた二人の身元確認を急ぐ。

男の背中には、隣の領地に仕える伯爵の私兵を示すドッグタグやタトゥーが刻まれ、その身分はまず間違いないようだった。


少女はというと……

「おい、この女泥棒だぞ‼」

二人の周りを取り囲む領民の一人が声を上げる。


確かに領民が言うように、少女の手の甲には貴族の財産を盗んだ場合にのみつけられる紋様が刻まれている。しかし、ただの窃盗犯ではないことは誰の目にも明らかだった。


なぜなら……窃盗犯と呼ぶには彼女は少々ぽっちゃりとしていたからだ。頬なども艶々としており、食べる物に困っている風には見えない。


(コイツは一体どういうワケだ……)


そう思案したカサルは、ふと少女が握り締めている掌サイズの球体に視線を動かす。温かみを帯び、脈打つ金属の球体。その内部には幾何学模様(きかがくもよう)幾層(いくそう)にも重なり合い、複雑な紋様(もんよう)を形成していた。


異端核(ルグズコア)? なんでこんな場所に……」


異端核(ルグズコア)は、身に宿すことで封じ込められた魔法を使えるようになる、いわば魔法使いになるための変身道具であり、所有者の運命を大きく変える呪いと祝福を兼ねた宝珠でもあった。


国の重要な兵器であるため、その採掘から管理までが国によって厳重に行われる異端核は、素性の分からない窃盗犯が気軽に持ち歩いて良いものではなかった。


異端核の窃盗は国家転覆罪と同列に語られ、盗んだ時点で極刑が言い渡される重罪だ。つまり盗んだ時点で詰み、彼女は死人も同然である。


しかし、彼女の悪運もまだ尽きていない。


異端核の存在を知る魔女たちは、落下する気球船の対処に追われており、偶然にもこの場で異端核(ルグズコア)の存在を知るのはカサルただ一人。つまり生殺与奪は彼の手に委ねられている。


「占い師め、コレが運命だとでも言うつもりか?……これではもはや呪いの類ではないか」


彼は草原の占い師が示した運命を信じるか、一瞬の逡巡の後に、異端核(ルグズコア)を懐に収めると、傷の手当を命じた。


「怪我人だ。二人とも治療しろ」


カサルの言葉に医者は驚きを隠せない。


「女は罪人ですがよろしいのでしょうか?」


「……構わん。罪人であろうとなかろうと傷ついたものは治せ。……見張りは忘れるな」


そう言って運命に抗おうと、その場を離れようとしたカサルを町医者が引き留める。


「カサル様お待ちください! 我々だけで罪人を治したのでは、誤って魔女たちに罰を与えられるやもしれません。どうかご同行願えませんか」


巨乳の女が運命の相手だとは信じたくない。しかし、このまま放置するのも後味が悪かった。


「っぐぬ……分かった。お前達だけでは心もとないというのなら仕方あるまい。連れて行け」


「ハハァ~!」


こうして、カサルの運命の歯車はゆっくりと、しかし着実に狂い始めるのだった……。

カサル君は男の娘であると同時に巨乳が苦手なようです。

巨乳にトラウマでもあるんでしょうね。



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