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ゴスロリ貧乏貴族は天才発明家(男の娘)!? ~働きたくないので魔道具を作ったら、いつの間にか国家経済を支配していました~  作者: 星島新吾
第一章:黄金郷編

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おバカ貴族と聖法捜査局

カサルたちがエディスに連れられ、ヘルメス商店へ向かっていた頃。

少し離れた場所にある鍛冶師ギルドの応接室では、怒号が飛び交っていた。

はち切れんばかりの筋肉を有する大男──ギルド長のタドラバが、机に拳を叩きつけていた。


「では何か!? 俺達の商売を邪魔しているわけでもなく、あまつさえ俺達の努力不足と言いたいワケか! お宅らは!!? 」


「ええ、まあ。端的に言えば」


細身で長身の男──シェリングは、部屋に充満する甘ったるい香の臭いを嗅ぎながら、大男の詮無い愚痴を聞き流すのに必死だった。


隣に立つ、小太りの眼鏡の男──オーモンドは、慌てて彼の口を封じた。


「ちょっとシェリングさん、黙って! ……あぁ、ええ、ギルド長。そのように申しているわけではございません。あれだけ急速に発展した店と言うのは、何かしら不正の一つや二つ、しているものです」


オーモンドからスルリと逃げると、シェリングはギルド長の机に置かれた灰皿に目をやり、そこにあった緑色の葉を指先で摘まみ上げた。


「ココもしてるだろうな。不正」


「……ああん? 喧嘩売ってるのか貴様」


青筋を浮かべて凄むタドラバ。

せっかく国の法務省から連れてきたエリートたちがこのざまでは、自分の地位も危うくなる。一刻も早くこの二人には、ヘルメス商店の不正を暴いて貰う必要があった。


彼らは『聖法捜査局』から派遣された特務捜査官だ。

不正があるというのなら、草の根を掻き分けてでも探しださなければならない責務があった。


「勘弁してくださいシェリングさん。……すいませんタドラバさん。引き続き捜査に行ってきます」


オーモンドはこれ以上ここにいれば血を見ると判断し、シェリングの背中を押してそそくさと外へと出て行った。

ギルドを出て路地を歩きながら、オーモンドは溜息をつく。


「事件の鎮火に来た我々が火種を撒いてどうするんですか」


「どうせくじ引きで決まったギルド長だろ。責任取って辞めりゃあ良いのに」


「はぁ……もう歩き疲れましたよ。早く解決して帰りましょう」


「まったくだな。足が馬鹿になる」


「我慢してください。今回の件が片付けば、本部から例の『魔導車』が支給されるそうですから」


「あぁ? あの鉄の馬車って噂の? 馬がいらねえって本当かよ」


「ええ。そしたらもう捜査に歩かなくても済むって話です」


「なる…ほど。確かにソイツは最高だな。よぉーし、やる気が湧いてきたぞー……」


そう言いながら、シェリングは口に含んでいた緑色の葉をペッ、と吐き捨てた。


「……シェリングさん。それ、さっきギルド長の部屋から盗んだ『麻痺葉』ですよね? 違法薬物ですよ?」


「人聞きが悪いな。証拠品として押収しただけだ。……まあ、相当イライラしてるみたいだったな。そんなに優秀なのかね、その歌うツルハシってのは」


「えぇ、そうらしいです。なんでも採掘量が”普通”のツルハシで掘るよりも倍以上変わるようで。今はもうシェアの三分の一は歌うツルハシに変わってしまったとか」


そう言いながら、書類をシェリングに渡す。


「なるほどねぇ……シェアの三分の一取られたんじゃあ、あんだけブチギレてんのも納得だ。しかし変だな、そんだけ効率的なら全員歌うツルハシになってもおかしくないだろ」


「いえ、それが……歌うツルハシって言うのが、採掘する本人なんです」


「は? 掘ってる途中にツルハシが歌いだす、とかじゃねえのか」


「ええ。本人が歌わないと採掘しないツルハシ、それが歌うツルハシみたいで」


「ハッハッハッハッ! 誰だよそんなマヌケな道具を作ったヤツ! 一度会って話を聴いてみてえなぁ! 」


シェリングは腹を抱えて笑った。効率化のために非効率な条件を課す。その矛盾した発想に、奇妙なシンパシーを感じたのだ。


「そんな悠長なこと言ってられませんよ! 今回は一応悪いことをしている相手として僕ら対峙するわけですから」


「いやそれは違う。俺達は真実を明らかにするのが仕事だ。そして法に反した奴なら縄にかけて牢にぶち込む。そこに善悪はねえ」


「法を犯した人間は悪人でしょう? 」


「法だって人間が作ったもんだ。完全じゃない。だから最後は人の眼が入るようになってんだ。俺達はその最初の番人だって憶えとけ。柔軟さを失った正義は腐敗を招くだけだぞ」


「正義は普遍であるからこそ、正義なのでは? 」


シェリングの言うことが正しければ、犯罪を犯してもある時は無罪で、ある時は有罪、なんてことになりかねない。そんなことがあっていいわけがないと、オーモンドは思った。


「普遍の正義なんて語るヤツは、正義で人を殺せるヤツだ。危ないから近づくなよ。オーモンド」


「シェリングさんの話はたまに難しいです」


そんな話をしながら、二人はついに渦中のヘルメス商店にたどり着いた。

そこには、ドレスを着た金髪の美少年と、小綺麗な店の主人が並んで立っていた。

シェリングの目が、獲物を見つけた猛禽のように細められる。


「……ビンゴだ。面白そうなツラしてやがる」


シェリングはニヤリと笑うと、帽子のつばを指で上げ、カサルへと歩み寄っていった。

法を操る天才と、法を潜り抜ける天才。

二つの知性が今、激突しようとしていた。

名前といい役割といい、あからさま過ぎたかも知れません。




それではまた、次のお話でお会いしましょう。(´・ω・)ノシ

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