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ゴスロリ貧乏貴族は天才発明家(男の娘)!? ~働きたくないので魔道具を作ったら、いつの間にか国家経済を支配していました~  作者: 星島新吾
第一章:黄金郷編

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おバカ貴族と新たな発明

 売れない商品の開発。そんなものを作っては委託販売させられるヘルメスが不憫でならない。

 かといってあまりに高性能な商品を開発してしまえば、次はエディスに目をつけられ、強制結婚への道が近づいてしまう。


 カサルは今、開発者として厄介な難題と向き合っていた。


「とても便利だが、あえて不便なモノってなーんだ」

 食事中にカサルはマリエ達になぞなぞを持ちかけた。


「「「顔だけの穀潰し」」」


 三人が息を合わせて即答した。

 もしかするとこういう状況になった時のために、彼女達は口裏を合わせていたのかもしれない。


「ハハッ。世話ご苦労」


 それに「顔さえよければ働いていなくてもいい」と言ったのは彼女達の方である。その上で働けというのは業腹であり、乙女心の理不尽さを感じざるを得ない。


「……まあそれは措いておけ。(オレ)は何も切実な不満を聞きたいわけではない。新商品の開発をしようと思っていてだな」


「アイデアに行き詰まっていらっしゃるんですね」


 リヒャルトラインの言葉に、カサルは「そうだ」と親指を立てて肯定した。


「ツルハシとか、需要あるんじゃないの? 」


 マリエの指摘は正しかった。

 売り物として出すなら需要の把握は重要だ。

 鉱石や異端核を取り扱う鉱山夫が多く住むエルドラゴでは、ツルハシはどれだけあっても足りない消耗品であることは間違いない。


 しかし、カサルの事前調査だと、ツルハシの商売には既に「鉱山夫専門の鍛冶屋ギルド」が乱立しており、その縄張りを今から狙うのは相当根気のいる戦いであることは明白だった。


 それに難しい問題がまた別にあった。


「どうやら、『ウチの家は代々ココの鍛冶屋一筋だ』というような風習がエルドラゴにはあるようでな。新参者が参入したとしても、新規の客が入りづらい構造になっている」


「へー、教会じゃん。信仰心が厚いね」


 ゾーイが言うことは的を射ていた。


 エルドラゴには鉱山夫界隈独自の、ある種宗教染みた経済圏が存在しているのだ。


「であるからして、健康な鉱山夫にはツルハシを売れないと思った方がいい。さあどうしたものか……」


 四人でしばらく考えながら食事を続けていくと、マリエが「そう言えば」と呟いた。


「鉱山って怪我のリスクも高いって聞くけど、怪我をした人ってどこに行くのかなぁ」


 確かに、落盤事故や過労で肩が上がらなくなるという話はよく聞く。そういった人間が、引退後何処に消えるのかまではカサルも知らなかった。


「あっ! じゃあさじゃあさ、怪我した人のためのツルハシを作ったら⁉ 」


 ゾーイが突然閃いたと言わんばかりに提案をした。


「ほう……お前さんよもや天才か? 」


 カサルは膝を打った。

 怪我で引退を余儀なくされた者たち。そこは既存の鍛冶屋が見向きもしない、”空白の市場”だ。


「いやぁ、私ってやっぱ天才なのかー。カサルンは私に発明料は5%を渡すんだよ? 」


 貴族顔負けの強欲な条件を提示してきた愛すべき馬鹿に、カサルは笑顔で別の提案をした。


「儲けが出たら、0.5%やる」


「えー! ドケチー!」


「私も市場分析の相談に乗ったので、0.1%下さい」


 リヒャルトラインも食いついて来た。カサルはジト目でマリエを見る。


(お前、部下にちゃんと給料を払っているのか?)


 視線に気づいたマリエは、手をブンブンと振って「ちゃんと支払ってるよ!」とジェスチャーで示した。

 こうしてカサルは夕食を終えた後に、早速工房に引き籠って作業を始めた。


 怪我をした人間にも使えるツルハシ。

 初めは運動補助機能を持った義手のような物を考えたが、即座に却下した。


「んー……鉱石を掘るのに腕は要らんな」


 運動補助機能ということは、様々な人間に個別にフィットする義手を作るということだ。

 特注品は量産に向かない。


 どれだけ計測値が必要かも分からないものと戦うよりも、人の手から離れて独自で動く採掘道具を作る方が簡単だとカサルは判断した。


「よし、自律式ツルハシだ。……だが待てよ、これでは便利すぎるな」


 カサルは手を止めた。

 ただ自動で掘るだけの機械を作れば、エディスに「国の発展のために量産しろ」と監禁される未来が見える。


 あくまで「便利だが、普及しきらない欠陥」が必要だ。


「ふふふ……ならば、こうしてやろう」


 カサルは回路の一部をあえて書き換えた。

『音響共鳴式駆動術式』。音を動力に変換する機構だ。

 設計図が頭の中で完成してからは早かった。徹夜を覚悟で制作に取り掛かると、時間は夏のアイスクリームのように溶けていき──


「あぁ? 夕食を食べたばかりだというのに、どうなっている? (オレ)はまた夕食を食べるのか? 」


 一日が一瞬にして消えたと思い込み、椅子から立ち上がろうとする。

 ガクン、と膝が折れそうになった。

 手足が冷たく、感覚が薄れて棒のようになってる。


「……? 」


 違和感を覚えつつも、フラフラと厨房へ向かうと、マリエが驚いた表情でカサルを見た。


「うわ、なんか臭っ!? ……二日ぶりだけど……元気? 」


 マリエの瞳に映るカサルの眼は、真っ赤に充血しており、足取りも幽霊のようにフラフラとしていた。


「は? 昨日食事はとっただろう。何を言っている」


「え、違うよ。カサルちゃん部屋から丸二日出てこなくて、今日が三日目の夜だよ」


「……そうか。それで腹が減ったのか」


 確かに水分以外取った覚えがなかった。

 フラフラと厨房に足を運ぶと、マリエが食事を運んでくるまでカサルは椅子に座ったまま眠り、食事が運ばれてくると、今度はスープを飲みながら眠った。


「ふふっ……赤ちゃんみたい」


 マリエはそんなカサルを見ながら、彼の口を拭うと、握られたスプーンを解いてベッドへ運んだ。

 工房の机には、完成した『讃美歌詠唱式ツルハシ』が、その起動を今か今かと待っていた。


「聖なる歌声を捧げなければ起動しない」という、この国ならではの不敬で敬虔な発明品。

 それがエルドラゴにどんな騒音をまき散らすことになるか、まだ誰も知らない。

カサルの発明品No2『讃美歌詠唱式ツルハシ』。

コレで賛美歌13番を歌えるようになれば、誰でも暗殺を依頼できるようになります。


ではまた、(*‘∀‘)ノシ

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