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おバカ貴族と占い師


陽光の照りつける春風の中、カサルは黒い日傘をさし、草原のど真ん中を歩いていた。黒いドレスの裾は風に弄ばれ、時に悪戯な風が彼の黒いスカートを巻き上げることもあったが、彼はそれを抑えながら、散歩という名の放浪を続けていた。


「どうせ今日の道程も、昨日と同じく、何も見つけられない退屈な一日か……」


鬱屈とした独り言が、春風に溶けて消える。その矢先、彼は道中の草原で、顔を隠した異様な姿の占い師と出会った。


挿絵(By みてみん)


「そこのお嬢さん、占いはいかがかね?」


紫色のローブを纏い、水晶を抱えた如何にもな占い師の言葉に、カサルはピタリと足を止める。特別占いに興味があったわけではない。ただ、この退屈な日常に、ほんの少しの刺激を求めていた。


オレのことを言っているなら、オマエの目は節穴だ。とっとと店を畳んで帰るんだな。(オレ)は確かに世界一可愛いが女ではない」


女の子よりも女の子らしい美少年は、少年らしい張りのある声音で占い師を罵倒した。


「おや失礼。悪かったね可愛い坊や。お詫びに占いはいかがかね?」


黒のスカートを翻しながら、ゴスロリの服を着たカサルは、厚底ブーツをカツンと鳴らして、傘をさしたまま腕を組んだ。彼の態度は傲慢だが、その瞳の奥には微かな動揺が見て取れる。


「しつこいな……それに生憎と今はそれほど身銭があるワケではないぞ。貧乏貴族のオレを舐めるな」


すると占い師はローブの中で小さく笑った。その笑い声は、どこか楽しげで、カサルの心に微かな苛立ちと、抗い難い好奇心を呼び起こした。


「お代は結構。貴方様の未来を覗く、たったそれだけで、私には十分な対価となる」


「……むぅ、食い下がるヤツだな。では好きに占え。何占いだ?」


「水晶占いを。貴方様の未来を占いましょう」


占い師は言葉通り、台に置かれた水晶に手をかざし、祈るように目を閉じる。そして、何かを読み取るようにゆっくりと手を動かしていく。すると水晶の中に、断片的な映像が幾つか流れ、そして消えた。その鮮明さに、カサルは息を呑んだ。


「お前、魔女か?」


「ああそうさ、そして坊やも魔法使い。そうだろう?」


二人の間に一瞬だけ、張り詰めた沈黙が挟まった。カサルの視線が、占い師のローブの奥を射抜く。


「私は魔法使い専門の占い師なのよ。――ふむふむ、なるほどなるほど……」


そう言って彼女は、草原の向こう側にある別れ道の内、右を指示した。


「あっちの街に行くと、アンタに大きな転換点が訪れるだろう。それも突然にね。だけど……コイツはどういうことだろうね……随分楽しそうに困っているじゃあないか」


カサルは眉をひそめた。転換点。それは彼が探し求めていたものか、それとも拒絶すべきものか。困っているというぐらいだから避けた方が良さそうではあるが、楽しそうと言うのがまた引っかかった。


「ビキニのギャルか?」


カサルが敢えてそう言うと、今度は占い師の方が動揺した。その反応を見て、カサルは小さく口元を緩める。どうやら、この占い師も普通の人間らしい。


「……いいや、その相手はビキニのギャルじゃあないね。だけど運命的な出会いさ。ただアンタのアプローチも多少はいるかもしれないね。そうすりゃ特に気苦労もなく出会いは向こう側から来る。ただ……」


占い師は言葉が詰まった。何か解釈に困る内容が占いに出たようだった。


「どうした? まさか我に不都合な占いでも引き当てたか? 」


「いいや……その運命を本気で自分の物にしたいと思った時。アンタは、自ら『愚者』の仮面を脱ぎ捨てなければならないようだね」


「随分具体的に分かるようだな。まるで、オレの心を見透かしているかのような───」


「いいや、私はあくまで水晶で見えた断片的な情報から未来を予測しているに過ぎない。私の魔法はそれほどデキの良いもんじゃないからね。アンタのことなんて知らないし、この未来予測が当たるかどうかも分からない。当たるも八卦、当たらぬも八卦というやつさ」


「ほう。だがお前が今日ココにいたのは、オレが通る姿をその水晶に見たからではないのか?」


「ああ、だから今日はたまたま当たった方だったのさ。───さあ、占いは終わったよ。従うも従わないもアンタ次第さ」


占い師の言葉に、不思議な縁を感じたカサルは、今日と言う日をその占い通りに過ごしてみるのもアリだと思った。退屈を打ち破るための、小さな期待を胸に、街へ向かうことにした。

そうして草原の彼方にカサルが消えていく後ろ姿を見送りながら、占い師はそのベールを取った。


「ふぅ……まさかオトコの娘なんてね。思いもしなかったよ」


黒ビキニを着た白ギャルが、額の汗をパタパタと手で払いながら、鏡でメイクが落ちていないかを確認する。彼女の傍らには、魔法の箒が立てかけられている。


「さてと、次の魔法使いのところに行かないとね。あぁ忙しい忙しい……」


箒に乗ったギャルの占い師は、またローブを頭からかぶり直すと、その場から姿を消した。


ほのぼの系ってこういうのであっているのかな? と、手探りで執筆中です。


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