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大学

## (未知時刻みちしきじこく深夜しんや・Dream Domain(夢域)被覆区域ひふくくいき・パーク海洋エリア(かいようエリア)/地下六階ちかろっかい


管理室かんりしつ暗闇くらやみなかで、Chi Yun(赤云)の依然いぜんとして思わずつづけ、指先ゆびさきたさが手のひら(てのひら)からうでつたわっていた。突然とつぜんつくえうえの監視モニター(かんしモニター)が「ジーン」とおとてて点灯てんとうし、ゆうかな青色せいしょくひかりしゅんに彼の蒼白そうはくかおらした——モニターには予期よきしていた廊下ろうか画面がめんではなく、彼とYang Yue(阳跃)のビーチでの記念写真きねんしゃしん表示ひょうじされた:少年時代しょうねんじだいのYang Yueが彼を背負せおい、なみ足首あしくびまでかかり、二人ふたり笑顔えがお太陽光たいようこうしたでまぶしくていたむほどかがやいていた。Chi Yunが反応はんのうするまえに、画面がめんわり、Antonアントンがキッチンで彼のためにめんつく場面ばめんうつった。湯気ゆげがAntonの目元めもとをかすめたが、はしときやさしい眼神がんしんははっきりとえた。


「いいえ……めて!」Chi Yunはばして電源ボタン(でんげんボタン)をそうとしたが、モニターは突然とつぜんくらくなり、ふたたび点灯てんとうしたとき画面がめん完全かんぜんゆがんだ——中央ちゅうおうには怪しいひとっていて、正面しょうめん笑顔えがおかべたYang Yueのかおだが、後頭部こうとうぶ裏返うらがえされ、なみだかべたAntonのかおあらわれた。両方りょうほうかお口角こうかく同時どうじあやしい曲線きょくせんえがき、カメラにかってゆっくりとった。Chi Yunは悲鳴ひめいげて椅子いすたおし、コロコロころがりながら管理室かんりしつからのがした。背後はいごからはまるでYang YueとAntonのこえざったあやしいわらこえこえるようだった。


ひらいた瞬間しゅんかん、Chi Yunは愣然ろうぜんとした——もともと見慣みなれた水族館すいぞくかん廊下ろうかえ、わって暖陽大学だんようだいがく並木道なみきみちひろがっていた。ナツメヤシの街灯がいとうしたで細かい光斑ひかりはんげ、とおくの教学棟きょうがくとうまどからは暖かい黄色きいろひかりれ、さらに運動場うんどうじょうからはバスケットボールのおとまでこえた。「どうして……」よろめきながらまえすすむと、背後はいごから突然とつぜん足音あしおと传来つたわった。り返ると、監視モニター(かんしモニター)にうつっていたあやしいひとゆがんだ足取あしどりで彼にちかづいてきて、両方りょうほうかお同時どうじひらいた。あまくて恐ろしいこえった:「Chi Yun兄にいさん、かくさないでよ。学校がっこうでデートするのが一番いちばんきだったでしょ?」


Chi Yunは即座そくざはしし、そば教学棟きょうがくとうのがげ込んだ。教室きょうしつ半開はんひらきになっていた。最初さいしょ教室きょうしつかくれ、つくえしたにしゃがみ込み、くちおおってこえさないようにした。あやしいひと足音あしおと廊下ろうかひびき、一歩いっぽ一歩いっぽがまるで彼の心拍しんぱくわせてみ込むようだった:「Chi Yun、Antonがっているよ。彼を一番いちばんあいしてるってったじゃないか?」「Chi Yun兄にいさん、むかしわたしこころうごかしていたのに、どうしてAntonをえらんだの?」二種類にしゅるいこえまじってそとから传来つたわり、ドアノブ(ドアノブ)がゆっくりとまわった。Chi Yunはその隙間すきまつめつづけ、あやしいひとり返ってはなれていくのをたしかめてから、やっとおおきくいきい込んだ。


そのそのあと十数分じゅうすうふんは、Chi Yunにとって悪夢あくむのようだった。図書館としょかん本棚ほんだなうしろにかくれたが、あやしいひとほん隙間すきまからつかった;実験室じっけんしつ戸棚とだなかくれたが、あやしいひと戸棚とだなみみててささやいた「なかにいるのってるよ」;さらにトイレの個室こしつのがげ込んだが、頭上ずじょうからは二枚にまいかおかさなったかげちた。かくれるたびに、あやしいひともっとあま口調こうちょうもっと残忍ざんにんなことをい、彼のこころおくかくされた葛藤かっとうすこしずついた。


Chi Yunがついに教学棟きょうがくとうした花園はなぞののがげ込んだときあしはもうちからうしなっててないほどつかれていた。リンゴのにもたれかかっていきととのえようとすると、首筋くびすじ突然とつぜんさるような痛み(いたみ)がはしった——注射器ちゅうしゃき皮膚ひふさり、たい液体えきたいはや体内たいない注入ちゅうにゅうされたようだ。り返ろうとしたが、意識いしきはだんだん模糊もこになり、まえ大学だいがく風景ふうけいはガラスがれるようにくずれ、わってちた緑色みどりいろ植物しょくぶつえた。


きたの?」耳慣みみなれた女性じょせいこえ传来つたわった。Chi Yunはゆっくりとひらき、Ada Wongエイダ・ウォンが彼のそばにしゃがんでいて、にはから注射器ちゅうしゃきっているのをた。周囲しゅういはパーク植物園プロジェクトエリア(しょくぶつえんプロジェクトエリア)の温室おんしつで、ツタが金属架きんぞくかからみつき、つきひかりがガラスの天井てんじょうとおして地面じめんにまだらな光影ひかりかげげていた。「エリアから散布さんぷされた幻覚げんかく誘発ゆうはつせい花粉かふん影響えいきょうけていた。汎用はんようワクチン(ワクチン)を注射ちゅうしゃしたから、幻覚げんかくやわらぐはずだ」


Chi Yunは地面じめんをついてがり、まだすこしめまいがするものの、とうじて清醒せいせいした:「Ada Wongエイダ・ウォンねえさん……Yang Yueはどこにいるの?Chi Xiao(赤霄)にいさんたちは?」「あせらないで、まずわたしについてきなさい」Ada Wongはち上がり、防弾チョッキ(ぼうだんチョッキ)をととのえた,「彼らをさがしにれてく」Chi Yunはいそいでうしい、おもしたようにいかけた:「あのね、なぜここにいるの?」Ada Wongのあし一時いちじめ、平然へいぜんとした口調こうちょうで言った:「Leonレオンすくいにたの。彼はここにめられている」


一方いっぽう地下六階ちかろっかいではエレベーターのドアがゆっくりとひらかれ、Yang Yueはサブマシンガン(サブマシンガン)をかまえて警戒けいかいしながらあるした——まえ光景こうけい瞳孔どうりょう収縮しゅうしゅくさせた:巨大きょだい地下空間ちかくうかんなかに、数十個すうじゅっこ兵器箱へいきばこ整然せいぜんならべられ、そのそばには三台さんだい小型戦車こがたせんしゃまっていた。大砲だいほう非常灯ひじょうとうひかりしたたい輝き(かがやき)をはなち、かべにはロケットランチャー(ロケットランチャー)と重機関銃じゅうきかんじゅうけられていた。空気くうきにはオイルと火薬かやくの臭い(におい)がただよい、Yang Yueはばして戦車せんしゃ装甲そうこうれた。たい触感しょっかん幻覚げんかくではないことをげた。「こんなにおおくの兵器へいきかくされていたんだ……」独りひとりごとをつぶやき、うれしいのか不安ふあんなのかからない表情ひょうじょうになった。

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