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遊園地

Music:Noisia - Devil May Cry Soundtrack - 22 - Merry Go Round (Diegetic) (Bonus)


## (2028年4月15日・午後2時・メキシコユカタン半島・チチェンイッツァ・ピラミッド模倣テーマパーク 新ラクーンシティ廃墟エリア)


ピラミッド模倣もほう隙間すきまから差し込む太陽光が、新ラクーンシティ廃墟エリアの地面じめんにまだらなかげを投げかけていた。破損はそんした「ラクーンシティ警察署けいさつしょ」の看板かんばんの下で、Ashley Grahamアシュリー・グラハムは明るい黄色きいろのキャミソールドレスを着て、スマホをかかげて三人の女友達おんなともだちと写真を撮っていた。彼女はつまつまさきを立ててくずれたかべに寄りかかり、後ろの女友達たちはピースサインをし、笑いわらいごえがエリア内にひびいていた。「Leonレオン!この写真、きれい?」Ashleyはスマホを持って少しはなれた場所にいるLeonのもとに走ってきた。後ろには黒いスーツを着た警備員けいびいん数人すうにんがついていた。


Leonは特殊工作員とくしゅこうさくいん制服せいふくを着て、サングラスで半分はんぶんの顔をかくし、警戒けいかいしながら周囲しゅうい見回みまわしていた。スマホを受け取ってちらっと見ると:「きれいだ。とおくまで走らないで、ここは観光客かんこうきゃくおおいから」言葉ことばわると同時どうじに、視力しりょくの良い観光客数人がかこってきた——誰かはサインちょうを持ち、誰かはスマホを掲げ、興奮こうふんしてさけんだ:「アシュリーさん!大統領だいとうりょうのお嬢様おじょうさま!サインをいただけますか?」Ashleyは愣然ろうぜんとしてサイン帳を受け取ろうとばすが、Leonにさえぎられた。彼はAshleyのまえに立ち、礼儀正れいぎただしくも断固だんことした口調こうちょうで言った:「申し訳ありませんが、Ashleyさんは遊びに来られたもので、どうか距離きょりたもって、ひかえめにしていただければさいわいいです」Ashleyはしたして女友達たちとうしろに下がったが、こころなかではひそかにうれしさをかんじていた。


「ラクーンシティ警察署のアトラクションに行って見よう!」Ashleyは女友達のうでらしてあまえた,「審問室しんもんしつまで再現さいげんしているって聞いたの!それに模擬もぎコピーの警察官けいさつかん「ゾンビ」もいるんだって、ちょう面白おもしろいよ!」Leonの瞳孔どうこう一瞬しゅんかん収縮しゅうしゅくし、喉仏のどぼとけがゴクリとうごいた——まった記憶きおく津波つなみのように押しせてきた:くら廊下ろうかえるゾンビ……無理むり意識いしきもどし、まゆを深くせた:「あのアトラクションはまだ調整ちょうせいちゅうだ。内部ないぶ機械装置きかいそうち固定こていされていないから、安全あんぜんじゃない」Ashleyはくちをへのにした:「たった一回いっかい見るだけ嘛!写真を撮るだけで、何もさわらないから約束やくそく!」Leonは顔をそらして彼女の期待きたいする視線しせんけ、警備員に二人の距離をさらにちぢめるよう合図あいずした。エリアの放送で流れる明るい音楽に「ゾンビ」の低いうなり声が混ざっていたが、彼の耳にかすかに聞こえる悲鳴ひめいをかき消すことはできなかった。那些それらの「いきたる小道具こどうぐ」が時折ときおり見せる硬直こうちょくした視線は、彼のの中では当時とうじ本当ほんとう意識いしきうしなったゾンビとなにちがいもなかった。



## (同一時間・午後2時15分・エリア内ホラーハウス「地下実験室ちかじっけんしょ」)


薄暗うすぐらい廊下で、緑色りょくしょく蛍光灯けいこうとう明滅めいめつしていた。模擬ゾンビの「いきたる小道具」がドアのうらから飛び出し、観光客たちの悲鳴が連続れんぞくしてきた。Grace Ashcroftグレース・アッシュクロフトはふわふわの亜麻色あましろいろのウィッグをかぶり、分厚いニットカーディのしたに防弾チョッキ(ぼうだんチョッキ)をかくし、濃いメイクをしていた。となりのJill Valentineジル・ヴァレンタイン一緒いっしょに、わざとこわがって「小道具」をけながらも、視線ははやかくいきたる小道具」のかおぎていた。


Jillは栗色くりいろのウェーブヘアのウィッグをかぶり、黒いジャケットの下にハイネックセーターをかさていた。利落りりゃくかみさきをわざとみみうしろにさえ、せんのきれいな下顎したあご露出ろしゅつさせていた。指先ゆびさきでGraceの腕をそっとれ、こえきわめてひくくした:「ひだり白衣はくいを着た人に注意ちゅういうごきがふとりすぎて、演技えんぎじゃないようだ」Graceはうなずき、視線をその「いきたる小道具」に固定こていした——対方たいほうあたまげ、見える半分はんぶんの顔には何の表情ひょうじょうもなく、観光客の悲鳴ひめいでも頭をげることがなかった。ほかの「小道具」のようにえたり、つかみかかったりする配合はいごうをしないのだ。ポケットの中でははAlyssa Ashcroftアリッサ・アッシュクロフトふる写真しゃしんにぎめた。多年たねんにわたり母の行方ゆくえさがしてきたGraceは、このエリアの「いきたる小道具」が各地かくちから募集ぼしゅうした浮浪者ふろうしゃ行方不明者ゆくえふめいしゃおおいとき、Jillととも多層たそう偽装ぎそうをして潜入せんにゅうしてきたのだ。


「行こう、つぎのエリアを見てみよう」JillはGraceをっ張ってまえすすんだ。分厚いころもすそが地面をいてシュシュッとおとを立てた。「血痕ちこん」にまみれた実験室じっけんしょのシーンをとおる時、Graceの視線が突然とつぜんまった——実験台じっけんだいのそばの「いきたる小道具」は青色せいしょくのマスクをつけ、見えるかたち目尻めじりのカーブが、はは幾分いくぶんていた。あしを止め、まえちかづこうとした瞬間しゅんかん手首てくびをJillにそっとっ張られた:「衝動的しょうどうてきになるな。ここは人がおおいから、万一まにあわずかな手がかりをうしなったら、今後こんご調しらべるのがさらにむずかしくなる。さき場所ばしょおくして、よる閉園へいえんしてから再来さいらいしよう」Graceはくちびるみ、その「いきたる小道具」が機械的きかいてきに実験台をくのを見ながら、最終的さいしゅうてきにJillについてつぎくらい廊下にはいった。



## (同一時間・午後2時30分・Captain Spauldingキャプテン・スポールディング地下鉱山実験室ちかこうざんじっけんしょ


地下鉱山ちかこうざんおくで、金属きんぞく摩擦音まさつおんが耳障り(みみざわり)だった。大型密閉トラック(おおがたみっぺいトラック)が実験室の入りいりぐちまり、白色防護服はくしょくぼうごふくを着た実験員じっけんいん数人がトラックのまわりにあつまり、には引渡報告書ひきわたしほうこくしょを持っていた。「プロジェクト:T-アビス高次変異こうじひょうい吸血鬼きゅうけつきBOW、コードネーム:Luciaルーシア危険度きけんどS級きゅうはらラクーンシティ廃墟3号区域ごうくいきから採掘さいくつ一名いちめいの実験員が報告書の内容ないようを読みげ、べつの実験員はタブレットで確認かくにんして署名しょめいした,「引渡ひきわたし完了かんりょう以降いこう-80℃低温保存槽れいおんほぞんそううつして保存ほぞんし、1時間じかんごとに生命兆候せいめいちょうこう記録きろくすること」


となりでパソコンを操作そうさしていた実験員が突然眉まゆせた。画面がめん暗号化あんごうかされたメールが表示ひょうじされた。はや復号ふくごうすると、顔色かおいろきゅうに変わり、すぐに電話でんわり上げてCaptain Spauldingの番号ばんごうをかけた:「ボス、緊急事態きんきゅうじたい近期きんき近隣きんりんエリアでスターダスト放射線ほうしゃせんふたたび増加ぞうかする可能性かのうせいたかいです。最大確率さいだいかくりつで『夢域むゆう現象げんしょう』がこされます——一旦いったん発動はつどうすると、永夜えいや到来とうらいするだけでなく、すべての電子機器でんしきき影響えいきょうおよび、低温保存槽もながたないでしょう!」電話の那头あたり一瞬しゅんかん沈黙ちんもくがあり、Captain Spauldingの落ち着いた声が传来つたわった:「分かった。BOWの引渡が終わったら2チームの人を低温保存槽の警備けいび配置はいちしろ。こっちで家族かぞく移動いどう手配てはいする」



## (同一時間・午後2時40分・ヒルトンホテル最上階オフィス)


フロアガラスのそとにはテーマパーク全体ぜんたい全景ぜんけいひらがっていた。Captain Spauldingはレザーソファに座り、にウイスキーのグラスを持っていた。電話をると、リビングにいる家族をながら言った:「最近さいきんここには住まないよ。荷物にもつをまとめて、テーマパークからとお別荘べっそううつる」Mother Fireflyマザー・ファイヤーフライはスマホで女友達とビデオチャットをしていたが、この話を聞いて愣然ろうぜんとし、画面がめんに「あとで話そう」と言って電話を切った:「どうして突然とつぜん引っすの?ここはテーマパークに近いから、OtisオーティスBabyベイビー毎日まいにち遊びに行けるのに」「聞かないで、指示しじ通り(どおり)にしろ」Captain Spauldingはきびしい口調で言い、リビングを見回みまわした——Grandpa Hugoグランパ・フューゴEvelynイブリン車椅子くるまいすに座り、TedテッドとTiny Fireflyティニー・ファイヤーフライがゲームをするのを見ていた。画面がめん銃撃じゅうげきおと此起彼伏しひひふしていた。Rufusルーファス本棚ほんだなのそばにもたれかかり、にピアノスコアを持ち、ゆびから模擬演奏もぎえんそうをしていた。Baby Fireflyベイビー・ファイヤーフライとOtisはビリヤードだい対戦たいせんしていた。Otisはやっとブラックボールを打ち込むと、興奮こうふんしてキューをった:「とうちゃん、別荘にビリヤード台はある?ないならこれをはこんで行くぞ!」Captain Spauldingは彼の冗談じょうだんにはこたえず、ただ家族にはやく荷物をまとめるよううながした。自身じしんはフロアガラスの前に行き、とおくの新ラクーンシティ廃墟エリアを見つめ、まゆを深くせた。



## (同一時間・午後3時・バベルの塔工事底部こうじていぶ


たかさ200階分かいぶんのバベルの塔がそらにそびえ立っていた。金属きんぞく支柱しちゅう太陽光たいようこうの下で冷たいひかりはなっていた。Chi Xiao(赤霄)はカジュアルシャツを着て、カメラをかかげてTomトムの写真を撮っていた。Tomは工事底部の石柱いしちゅうに寄りかかり、笑顔でニコニコした:「この塔、もう200階までったのに、内部ないぶなにもないんだね。エレベーターもついていないし、本当ほんとう中途半端ちゅうとばんぱ完成度かんせいどだ」Chi Xiaoはカメラをげて彼のとなりに行った:「内部設備ないぶせつび計画けいかくちゅうだって聞いたよ。なにか『空中庭園くうちゅうていえん』をつくるらしい。開放かいほうまであと半年はんとしはかかるだろう」少しを置き、調侃ちょうかんの口調で言った,「Chi Yun(赤云)とAntonアントンなかったのが残念ざんねんだ。一緒に写真を撮れれば、記念きねんになったのに」


「彼らはいえ子供こども面倒めんどうを見ているから、いいよ」Tomはカメラをおさめ、いえの中の頑皮がんぴな二つの息子むすこを思い出して、口角こうかく自然しぜんがった,「Fu You(蜉蝣)とWei(威)も少しらくになれるから、いつも子供のことばかりにかける必要ひつようがなくなるし、あさランニングもできるよ」Chi Xiaoは突然近ちかづき、耳元みみもとでささやいた:「じゃあ、もう数日すうか滞在たいざいしよう?二人だけのプライベートな時間を楽しもう、誰にも邪魔じゃまされずに」Tomのかお一瞬しゅんかんあかくなり、で彼をし返した:「いや!ここでこんな話をしないで、工事員こうじいんかれちゃうよ」Chi Xiaoは笑いながら彼の手をにぎり、バベルの塔のかげの中にっ張って行った:「何をこわがるんだ?とおくに工人こうじん数人すうにんいるだけで、ほかに誰もいないよ」



## (同一時間・午後3時15分・東海連邦BSAA分部ぶんぶ


Barry Burtonバリー・バートン捜査そうさようつくえの前に座り、面前めんぜんには分厚い文書ぶんしょが広げられていた。すべてメキシコわんの「幽霊潜水艦ゆうれいせんすいかん」に関する報告書ほうこくしょだ。はられたこめかみをんで、ぼんやりとした衛星写真えいせいしゃしんり上げた——写真の潜水艦は黒い流線型りゅうせんがたをしており、何の標識ひょうしきもなかったが、レーダーじょう瞬間的しゅんかんてき消失しょうしつできる。三度さんど出現しゅつげんした場所ばしょはいずれも新ラクーンシティ廃墟エリアの近隣きんりんだった。「到底とうていどこからたんだ?」Barryは独りひとりごとをつぶやき、ゆびで机をたたいた,「どこかのバイオテクノロジーグループの実験室じっけんしょかかわりがあるのか?それともどこかのBOWプロジェクトと関係かんけいがあるのか?」電話を取り上げ、メキシコ分部の同僚どうりょう状況じょうきょう確認かくにんしようとしたが、回線かいせん突然とつぜんノイズが発生はっせいした。「もしもし?こえますか?」受話器じゅわきからは「ジージー」という電流音でんりゅうおんだけが聞こえた。イライラしながら電話を切り、衛星写真を捜査ボード(そうさボード)にけ、写真を見つめてふかかんがんだ。



## (同一時間・午後3時30分・エリアそば チチェンイッツァ血祭坛遺跡ちさいだんいせき地下洞穴ちかどうけつ


湿しめった洞穴のなかで、岩壁がんぺき象形文字しょうけいもじ暗赤色あんせきしょくひかりを放っていた。Balthazarバルサザールは黒いローブを着て、紫色むらさきいろ液体えきたい石製いしせい祭坛さいだんそそいでいた。液体が祭坛にれた瞬間しゅんかん白色はくしょくきりが立ち上がった。彼はガラスかんで霧をすべ回収かいしゅうし、透明とうめい容器ようきれた。「みな、これが我々(われわれ)の『クアズコアトルウイルス』だ」Balthazarは容器をかかげ、うしろの信者しんじゃ数人に言った,「希釈きしゃくして人体じんたい注入ちゅうにゅうすれば、最原始的さいげんしひつ暴力欲求ぼうりょくよっきゅうき出せる。那些それらの『弱虫よわむし』を我々の武器ぶきえる——これが我々『新連合しんれんごう』の重要じゅうようちからだ!」信者たちはすぐに歓声かんせいげた。誰かはえる松明たいまつを掲げ、火光ひひかりが彼らの顔を狂熱的きょうねつてきらした。誰かはさらに興奮こうふんして岩壁をたたき、「ドンドン」という音がった。


そのとき、Balthazarのスマホがした。取り出すと、Captain Spauldingからのメッセージがとどいていた:「テキサスに戻るのはいつにする?いつも休暇きゅうかを取ってこっちに来るのもよくないが、もしながく住みたいなら、近期きんきはヒルトンには住まないで、別荘に一緒いっしょに住もう。安全あんぜんすこしだ」Balthazarはわると、スマホをそのままポケットに入れて返信へんしんしなかった。ただ容器を持って説明せつめいつづけた:「すぐに、これを使つかってホワイトハウスの那些それらの『弱虫』に、本物ほんものちからなにかをらせよう!我々の『連合れんごう』が、彼らの連立政権れんりつせいけんより100ばいつよいことをせてやろう!」洞穴のそとで、エリアの歓声かんせいがかすかに传来し、洞穴の中の狂熱きょうねつ不思議ふしぎ調和ちょうわをなしていた。まるで二つの世界せかい喧騒けんそうがこの瞬間しゅんかん交錯こうさくしたかのようだ。

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