第七話『禁断の記憶と“桃界の裏歴史”!? 葵、覚醒と同時に消える!?』
「……きみは、思い出さなければならないの。
“わたし”と“きみ”が、もとはひとつだったということを──」
《夢みずき》の声が、葵の全身に響き渡る。
視界が歪み、心が剥がれ、葵は異界へと引きずり込まれていく。
そこは――かつて存在した、もうひとつの桃界。
♦ 文明桃樹時代
果実文明の最盛期。
空を覆う巨大な桃の樹《霊桃根樹》のもとで、
果実たちは高度な魔術文明と機械技術を両立させ、栄華を極めていた。
桃の果汁はエネルギー源として抽出され、
空飛ぶ街、自動収穫兵器、
そして感情を保存できる“桃の記憶結晶”《ソルベリア》が発明される。
だが――
「その果汁は、やがて“魂”さえも燃料に変えてしまったのよ」
夢みずきの声が、過去を語る。
「果実たちは、効率を追い求めすぎた。
“感情”も“家族”も、“甘さ”すらも、失われていったの」
やがて起こったのが……
♦ 果実戦争
「感情を取り戻す派」VS「無感情に統制された秩序派」
“ジュースの流れを止めた者”は異端とされ、
世界は戦火に包まれた。
そのとき立ち上がったのが、夢みずき。
“全ての桃の母体”たる彼女は、全魂を封じることで戦争を止めた。
しかしその代償に、自らの意識を分裂させ、“もう一つの存在”に託した。
「それが……おまえ、“葵”」
「え…………っ!?」
♦ 真実1:葵=夢みずきの“再誕体”
「本来、おまえはこの世界にいるはずの存在ではない。
地球の桃を探してた? それは、記憶が微かに引っ張っただけのこと。
おまえの魂は、私の“種”だったのよ」
「つまり俺は……この世界の、なに?」
「桃界を“救うか壊すか”、それを選ぶ鍵。
再び桃神として目覚めるなら……桃界の理をも書き換えられる」
♦ そのころ、桃楼宮
「……葵様が、消えた……?」
清水白桃が呆然と立ち尽くす中、姫たちは混乱していた。
「ど、どこ行ったんだよ葵ぃ!!」
「葵くんが……いないと、わたし、退屈なのにぃ……!」
「まさか、“桃界転移”を……!?」
そこに現れる、黒い霧。
その中心から、闇に包まれた男が姿を現す。
「……夢みずきが目覚めた、か。では、次の“果実戦争”を始めよう」
その名は──
黒桃王・アモルグレア
かつて、夢みずきに敗れ封じられた“禁断の黒桃”にして、
感情を喰らう存在。
「すべての甘さを腐らせ、苦味に変えてやろう……」
そしてその手には、果実兵器が。
「行くぞ、桃界の姫たちよ。
おまえたちの“愛”など、すぐに潰れて種になる」
♦ 葵、覚醒
夢みずきの魂が溶けるように葵に融合し、
彼は静かに目を開ける。
「……今、世界を……ほんとに、守らなきゃいけないんだな」
彼の背には、光と闇が渦巻く“桃の翼”。
指先には、封じられていた《始桃印》の紋章。
「俺は……“選ばされた”んじゃない。
“選んでやる”よ、この世界を」
覚醒せし“半神の桃魂継承者”、
その力が黒き王を迎え撃つとき──!
次回予告!!
第八話『果実戦争ふたたび!? 姫たちの決意と、黒桃王の宣戦布告!!』
覚醒した葵、帰還。そして姫たちが一丸となる!?
だが黒桃王の狙いは……まさか“あの姫”!?
まだまだ……ももたましいッッ!!