第五話『さくら白桃、恋の罠!? 桃魂お見合い大騒動!』
「お見合いって……なにそれ聞いてない!!!」
桃楼宮の朝は、いつだって唐突で非常識。
目を覚ました葵を待っていたのは、
ピンクの招待状と、清水白桃の静かな一言だった。
「おめでとうございます、葵様。
このたび、“恋の試練”第一段階・お見合い審査に進出が決まりました」
「出たくて進出したわけじゃないんですけどォォォォ!?」
「ふふ、これは桃魂継承者として“心の成熟”が試される重要なイベントですの。
なお、拒否権はございません」
「さりげなく恐ろしいこと言ったーーーッ!!」
場所は、桃界の恋愛神殿〈モモリアージュ〉。
あらゆる愛を司る、超きらびやかな建物である。
館内にはピンク、ピンク、どこまでもピンク。
桃の香りとシャンパンの泡のような空気に包まれた先に――
「キャハッ☆ やっと来たぁ〜! あおいくん、遅いよ〜っ♡」
くるくると回転しながら登場したのは、
背丈120cmくらい、髪もドレスも桜色。
ふわふわと舞うような動きに、首を傾げてウインク。
「わたしが、さくら白桃姫♡ 桃界の恋愛担当っ♪
“とろける恋の果実”って、呼ばれてるの〜♡」
「……なんか、いろいろヤバい予感しかない」
「きゃ〜♡ ヤバいって言われたぁ! うれし〜〜〜!!」
この子、ぜったい人の反応で遊んでる!!
「さくら姫はですね……少々、社交性が過剰といいますか……」
清水白桃が耳打ちしてくるが、すでに時遅し。
「じゃじゃ〜ん♡ お見合いゲーム第1種目〜!
“きゅんフレーズバトルぅ♡”」
「え、なにそれこわい」
「ルールは簡単! どっちが相手をキュンとさせるかを、桃神霊たちがジャッジするの!
言葉の香りと甘さと、破壊力でポイントゲット〜☆」
「出たー! またこの世界、意味わからんイベントぶっこんできたー!!」
♦ 対戦相手
なんとこの試練、他の姫も飛び入り参加可能とのこと。
・なつっこ姫(焼肉フレーズで殴ってくる)
・川中島白桃(筋肉告白が謎に高得点)
・黄貴妃姫(「愛など下等生物の幻想」発言で会場氷点下)
だが……
「……キュンって、なに?」
「肉は焼けても言葉は焼けねぇ……」
「私は詩で勝負いたしますの」←清水白桃のポエム、逆に凍る
やっぱり最後に強いのは……!
「うふ♡ あおいくん。
ねぇねぇ、キュンってさ……
“心に桃の種ができちゃう”ことなんだよ♡」
「……なにその名言!? いやあざとすぎィィ!!」
「じゃあ……わたし、あおいくんの心に、種まきしちゃおっか♡」
「ぎゃあああああああああ!!」
――桃神霊たち、全員昇天。
\優勝:さくら白桃姫/
\満場一致!!/
♦ その夜
「あおいく〜ん♡ これからもよろしくね♡ じ・ょ・う・け・ん♡」
「じょ、条件……?」
「これから毎日、わたしと“デート訓練”してくれたら、
もっともっと“きゅん”な桃魂、教えてあげるね♡」
「うわああああああ! 一番こわいタイプだったぁぁぁ!!!」
次回予告
第六話『夢みずき、眠れる桃神の囁き!? 禁断の果実の記憶、今ふたたび!』
ついに“始祖の桃魂”に秘められた記憶が目を覚ます!?
葵、まさかの桃神憑依!?
おかしい・・・
桃が食べたくて書き始めた話なのに・・・
なぜだ!?