第四話『黄貴妃姫、気高く降臨! 桃界社交界デビュー大作戦!!』
果実王国〈パラ・ペーシア〉の中心地、桃楼宮。
その金色の大広間では今、**年に一度の“桃魂社交祭”**が華やかに開催されていた。
会場には桃色ドレスに身を包んだ姫君たち、
果実騎士団のエリートたち、そして桃神霊たちまでもが集い――
「……え、なんでおれまでドレス……」
葵はというと、まさかのドレス姿。
というより、なぜか“中性的桃装”という性別不明な衣装を着せられ、頭には桃の花冠。
清水姫が「お似合いですわ」と満面の笑みで押し付けたのだ。
「ふふ……今日は“桃魂の継承者”として、正式に皆さまへご紹介いたしますの」
「いや、ドレスで戦えないし逃げられないし、しかもこれ脚がスースーする!!」
「静粛に」
その瞬間、広間の空気が**ピキィィィッ……!!**と凍った。
重厚な金の扉がゆっくりと開く。
「――わらわの登場に、ざわめきがあるなど無粋にも程があるわね?」
現れたのは、金糸を織り込んだ漆黒のドレスを身にまとった、
長く波打つ黄金髪の少女。
その一歩ごとに花が散り、
その視線一つで空気が支配される。
「わらわの名は、黄貴妃。
桃界の誉れにして、“日輪の桃魂”を継ぐ者。
……この社交界は、わらわの舞台に過ぎぬわ」
気高く、冷たく、誰も寄せつけない。
けれどその瞳には、微かに揺れる孤独の火があった。
「出た〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!! 絶対やばいやつ!! 威圧感すご!!」
「まあ……黄貴妃姫は昔からこのような……」
清水白桃は静かに微笑むが、扇子の裏でぼそりと漏らす。
「……でも、彼女……誰とも桃を食べないのですのよね」
「え、どういうこと?」
「桃をともに食すことは“心を許す証”。
社交界にいる誰とも、口をつけたことがないのです。孤高の姫……」
するとそこへ!
「おっす! 社交界でも筋肉で魅せるぜッ!!」
「焼きタレ持参で来るんじゃねぇぇぇ!!!」
川中島白桃&なつっこ姫、爆☆弾☆登☆場。
「こら貴妃〜! せっかくだし肉でも焼こうぜ! 今度こそ審査員ぶっ倒そうぜ!」
「……何を言ってるの、この蛮族どもは」
「まって!? だからって魔法で焼き場を黄金に変えないで!! 調理場が神殿になった!!」
そのとき、社交場に桃神霊たちの悲鳴が響く。
「キャアアアア! 魔桃グモが現れたわぁぁ!!」
「な、なんだって!?」
突如現れた巨大な“桃グモ(ももぐも)”は、
社交界の甘い香りに誘われて地下から這い出してきた、厄介すぎるモンスターだった。
「くっ……皆の者、退避せよ!」
果実騎士団が構えるも、力が通じない。
「ならば、わらわがやるしかないわね」
スッとドレスの裾をまくり上げ、
黄金の小太刀“桃華刀”を抜き放つ黄貴妃姫。
「――見るがいい。これが、“貴き者の戦い”」
黄金の光が舞い、桃グモの動きが止まる。
「う、美しい……!」
だが――
「ちょっと待てぇぇぇぇい!!!」
バサァッと飛び込む川中島白桃。
「姫一人にカッコつけさせてたまるかーッ!! オレもまぜろぉおお!!!」
「だーかーらーっ! 食材の前にグモを切るなぁあああ!!」
戦いののち、見事グモは退治された。
だが黄貴妃姫は最後、こう言い残す。
「……悪くなかったわ。特にお前、ドレス姿の継承者」
「え、俺!?」
「ただし、次の社交祭でわらわを笑わせたら……“桃の口づけ”を許してやってもよくってよ」
「は!?!?!?」
「ふふっ、期待してるわよ、“男子”のあなた」
そう言い残し、去っていく貴妃姫の背は
まるで誰にも手が届かない、“太陽”そのものだった。
次回予告
第五話『さくら白桃、恋の罠!? 桃魂お見合い大騒動!』
小悪魔系姫、登場! “恋の試練”とかいう謎イベントでまたしても大混乱!?