第三話『なつっこ姫、バーベキューで参戦!? 桃魂(とうこん)試練の食材バトル!』
「よし! さっそく特訓だ! まずは筋肉! 次に炎! 最後に肉!!」
「ちょっと待って!? 何その三段構え!? 説明して!? お願いだから説明してーッ!!」
とんでもないテンションで葵を引きずるのは、もちろんあの川中島白桃。
あいかわらずの筋肉少女で、今日も“桃型肩パッド”の付いた服を着て、得意げにふんぞり返っていた。
「まずは桃魂を鍛えるには“肉焼きバトル”が基本なんだよ! 焼けぬ者に霊力など宿らぬ!!」
「……そんな理屈ある!? それ武道じゃなくてキャンプだよね!?」
「フン、野生の炎こそ桃魂の真髄! この桃界には伝説の調理試練『BBQ儀式』が存在するのだ!!」
「本当に!? その略し方でいいの!?」
「黙ってついてこい!! ドンブラッ!!」
また謎の掛け声とともに川を渡る川中島ちゃん。
(“ドンブラ”って、使い方がどんどん雑になってる気が……)
「あの……葵様? 少し、静かにされては?」
背後で優雅に歩いてくるのは、桃界の清き姫──清水白桃。
そのドレスは今日も露が香り立つように美しく、まるで朝の光を編んだような布地が風にひらめいている。
「川中島様は……元気がよろしいですこと」
苦笑ぎみに、そっと扇子を口元に当てる。
それは笑顔でありながら、やんわりとした“ため息”のようでもあった。
「いや、白桃さんが静かすぎるだけじゃ……?」
「いえ、わたくし、焼き加減には厳しい方ですのよ?」
「え、そんなとこで戦闘力出してくる!?」
場面は、果実王国の中でも謎の多い“桃燻の丘”へ。
そこには、桃の木の香りが染みついた伝説のバーベキュー台があった。
そして、すでに先客が――
「お〜い、あおい〜っ! 来た来たぁ! こっちこっち〜っ!」
元気いっぱいに手を振る少女。
陽に焼けた肌に、短い金髪。
服はすでにバーベキュー用のエプロン仕様。
「わたしが! 桃王国の元気印、なつっこ姫だよ!!
今日は! みんなで! 魂を焼くよーッ!!!」
「だからなんでみんな焼きたがるのぉぉぉぉ!?」
♦ 試練ルール
・制限時間30分
・桃界の特産食材を使い、“最も魂が震える料理”を作ること
・審査員は「桃界のミニ神霊たち(審査基準:香り・果汁力・たのしさ)」
・使っていい調味料:「塩・光・うた」←???
「まずは仕込みだな! オレは“桃豚”の肩ロースを狙うぜ!!」
「桃界ってなんでも“桃”つけとけばいいと思ってない!? いや美味しそうだけども!!」
「わたくしは、“香花の葉”を敷き詰め、香りの重ね焼きをいたしますわ」
「料理でも清楚貫くのね!? 清楚で香ばしいってどういう組み合わせ!?」
「なつっこはね〜! とにかくタレドーン!! 焼いたら勝ち! 甘ければ勝ち!!」
「一番原始的ぃぃぃ!! というか、焼き加減見よう!? ね!?」
三姫三様のバーベキューが始まった。
・川中島:爆炎で豪快に肉を“桃ブレード”で焼く。煙が桃色で甘い。
・清水白桃:香りで火を操る魔法的調理。肉に“香る詩”を唱えるという謎技。
・なつっこ:踊りながら肉を振る。塗りたくるタレに“桃汁爆弾”を混入。踊ると爆発。
「……な、なんだこの世界……おれ、いつか“食われる側”になる気がしてきた……」
そして試練の審査タイム。
桃の神霊たちは、清水姫の料理にうっとりし、
なつっこの爆発焼きにはしゃぎ、
川中島の“ぶん投げ肉スライス”には「ぶおおおおおん!!」と歓声を上げた。
結果:引き分け(※神霊が全部桃酢で酔ったため、審査不能)
「ってことで!! 全員合格!!!」
「いや、なんの試練だったんだよぉぉぉ!?」
次回予告
第四話『黄貴妃姫、気高く降臨! 桃界社交界デビュー大作戦!!』
今度はツンとお高い黄金姫が登場!?
葵、ついにドレスを着せられる――!?