第十三話『ネクタリン、帰還!? 忘れられし姫と“もうひとつの桃界”!!』
ついに現れる、闇から解放された姫。
彼女の記憶が、新たな桃界の秘密を呼び覚ます……!?
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果実祭の翌朝。
桃楼宮の中庭に、ひとりの少女がふらりと現れた。
「……あれ? だれ? あんな姫、見たことないぞ?」
その少女は、まばゆい金髪に、やや赤みの強い桃色のドレス。
「ネクタリン……?」
夢みずきがつぶやく。
「うん、そう……わたしは“もうひとつの桃界”から来た、忘れられた姫」
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ネクタリン姫。
それは遥か昔、“黒果の叛乱”よりも前に存在した“分岐した桃界”の姫。
果肉が引き締まり、酸味と甘みを兼ね備えた――かつての戦姫。
「忘れ去られた桃魂たちの記憶が、あの戦いで目を覚ましたの」
「……わたしにも、力が戻りつつある」
その言葉と同時に、彼女の足元に薄紅の紋章が浮かび上がる。
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しかし、彼女の帰還は波紋を呼んだ。
「ネクタリンは、“酸性種族”だわ。果実の分類が違いすぎる……!」
「だが、分かり合えるはずだ。桃界はもう、争う世界じゃない」
葵は毅然と言う。
「ネクタリン姫を迎えよう。彼女もまた、桃魂の一部だ」
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ネクタリンは語る。
かつて存在した“果実の環”という桃界の中心構造。
すべての果実がつながり、共に歩む時代。
しかし、酸味系果実と甘味系果実の価値観の違いにより、
徐々に隔絶され、そして“切り離された”という。
「わたしは……置き去りにされたの。だからずっと、忘れられてた」
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その夜。
ネクタリン姫は、一人星を見上げながら、葵に語る。
「夢みずき……あの子は“環の核”なの」
「君はそれを知ってるのか……?」
「ええ。そして、彼女が覚醒しきったとき、桃界は再び“環”に戻る。
でも、敵もまた動き出すわ。……『果断種』が」
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次回予告――
第十四話『果断種、出現!? ネクタリンと夢みずき、封じられし環の謎!!』
忘れられし桃魂たちの記憶と、新たな敵“果断種”の登場!
葵とネクタリンが目指す“桃界の環”とは――!?