第一話『桃かじり、異世界とろけ事件!?』
夏の昼下がり。
蝉の鳴き声が耳をつんざく中、少年・葵は、
スーパーの果物売り場の前で、ある**“異質な桃”**に目を奪われていた。
「……なんだこれ、金色……?」
そこには、他の桃とは明らかに違う、
ひときわ輝く金の果実が鎮座していた。
値札にはこう書かれている。
《特選・清水白桃・夢みずき・試作品(非売品)》──
「……試作品って何? え、売り物じゃないの?」
訝しげに指を伸ばし、その桃に触れた瞬間──
キィィィィィィン!
まばゆい桃色の光に包まれ、
葵の身体は宙に浮き、
気がつけば、そこは──
「……あっつ!? え、なにこれ、空が……桃色!? ももももーん!!」
そう、そこは果実大陸パラ・ペーシア。
すべてが桃でできた世界──桃の香りが風に混じり、空には桃色の雲、
地面には桃色の草が生え、遠くにはそびえ立つ巨大な“桃の塔”。
「……お、おれ、ついに桃に食われた……? あれ夢だよな……?」
「いえ、これは夢ではありません。あなたは選ばれし者──“桃魂の継承者”です」
その声に振り返ると、そこには一人の少女が立っていた。
桃色の長髪。純白のドレス。透き通るような肌。
手にはうっすらと桃の花をあしらった扇子。
まるで、絵本から抜け出したような気品と、ほんのりとした甘い香り──
「わ、わわわわ……!?」
「初めまして。わたくし、清水白桃と申します。この桃の王国の姫のひとりです」
「お姫さま……!? しみず……白桃!? 桃に、名前あるの!?」
「ございますとも! あなたがかじった“夢みずき”──それは十二の桃魂を統べる、幻の始祖の果実。その魂があなたに宿りました」
「いやいやいや、ちょっと待って!? おれ、あれ!?食べたっけ??」
「ふふふ……始まりとは、いつも一口の油断から」
「名言っぽいけど、めっちゃこわいこと言ってるよね!?」
「……というわけで、これよりあなたには世界を救ってもらいます」
「急すぎるだろおおおおおおお!!」
そして、葵の“ももたましい”な旅が幕を開けた。
次回──
「川中島白桃、川からドンブラ登場!? 葵、桃の戦士にされかける」
お楽しみに!!