第1話 昔のわたしは魔法少女。
『メルティ キューティ ラブリーチェンジ!』
少女の全身がまばゆい光に包まれる。
少女は妖精から受け取ったコンパクトをのぞき込むと、鏡の中の自信にウィンクを放った。
みるみる体はリボン上の布に覆われ、次の瞬間には胸元に大きなリボンが咲いていた。続けて腰から放射状にスカートが広がり、その下にはパニエが膨らむ。
ヒールブーツのかかとをそろえ、彼女は素晴らしい笑顔でくるりとターンを見せつけた。
『みんなを笑顔に、メロメロに! メルティピンク!』
そしてお決まりの決めポーズだ。
テレビの中の魔法少女を眺めながら、わたし──雪園しろなはホットカフェオレを啜った。
日曜朝に枚中登場する女児の味方、魔法少女。
わたしは二十を迎えても五年前から変身シーンは欠かさず見るようにしている。それは少しの応援と憐みの気持ちから。
皆、そんなものは子供向けだ、架空だ、深く考えるものじゃないと馬鹿にするかもしれない。現に今、テレビで流れているものはアニメーションで、創作だ。
わたしはため息をこぼしながらリモコンに手をかけた。ぶつっと暴力的な音を立てて、テレビはただの箱になる。
過去、この町には魔法少女がいた。
強くて、かわいくて、何があってもくじけない。妖精を一匹携えた、正義の味方が。
五年前、この町を守ったのは、このわたし──プリティネージュだ。