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××の十二星座  作者: 君影 ルナ
一章

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89/125

七十六

 チュンチュン……


 鳥のさえずりを目覚ましに、私はパチリと目を開けた。今日の目覚めはいつも以上にスッキリしていて、とても気持ちがいい。


 上半身を起こし、両腕を上げて伸びる。


「はわ……」


 体力も全回復している。ああ、若いって素晴らしい。そんな幸せをホクホクと噛み締めていると、ふと自分が寝かされていた場所に目が行く。


 ここは城に来てからずっと私が寝泊まりしている部屋の、ベッドの上。……なるほど、いつもよりスッキリとした目覚めはこのフカフカなお布団のおかげか──いつもはクローゼットの中に体育座りして眠っている。この部屋の広さにはまだ慣れることは出来ていないのだ──。


 私がこんな綺麗でフカフカなお布団を使っては申し訳ないと思いながらも、フカフカの魔力は凄まじいもので。


「もう少しだけこのままで……」


 もう一度ゴロンと寝転び、フカフカとポカポカに包まる。駄目だ、このままこの寝心地の良さを知ってしまったら、ここを出て行った後が大変だ。この寝心地に慣れた後にあの生活に逆戻りしたら、多分不眠症になるだろう。それくらい寝心地に差がある。


「むにゃ……」

「マーローンー!」

「げふっ!」


 まだ眼帯もしていなかったから目は開けられず、さらに言えば魔法を使って周りを見渡す前にダイブしてきた誰か──声を聞く分には多分ジェミニだろう──の俊敏な動きに反応しきれず、変な呻き声を上げてしまった。う、苦しい……


 ドーンと私の胸お腹に体当たりしてきたジェミニ(仮)は、そのままギュッと私の服を掴む。


「マロンが倒れたってアリーズから聞いて……すごく心配した……」

「ジェミニ……」


 なんと声をかけていいか分からず、ポンとジェミニの頭に手を置いて撫で回すことにした。あ、髪の毛サラサラだ。


「ねぇ、ちょっと眼帯しても良い? ジェミニの顔見たいな。」

「……わかった」


 ジェミニの了承を得てからベッド近くを探るとそれらしきものが手に触れる。それを左目に付けてから目を開ける。


「マロン! おはよ!」


 ペカーッと太陽のように明るい無邪気な笑顔で挨拶をしてくれるジェミニ。わぁ、可愛眩しい。


「おはよう。」


 ジェミニのオレンジがかった赤茶色の短髪は彼の動きに合わせてぴょこぴょこ跳ね、アホ毛は犬猫の尻尾のように左右に揺れる。


 小動物のような可愛さを惜しげもなく振りまくジェミニに、私は朝から癒される。これがアニマルセラp……ゲフンゲフン


「マロン、起きてるかしら?」

「ん? アクエリアス? 起きてるよーおはよー」


 次に私の部屋にやって来たのはアクエリアス。扉からひょこっと顔半分を出し、恐る恐る聞いてきた。


 ん? なんか私怖がらせちゃったかな? 怖くないよ〜とヘラヘラ笑顔を浮かべながら手招きする。


 ジェミニを抱えながら上半身を起き上がらせ、ベッドに座る。まだ子コアラの如く私に引っ付くジェミニをそのままにし、ベッド横にある椅子に座ったアクエリアスと対面するが、その顔はどこか浮かないもの。


 ふむ、怖がらせたわけではないが、何か私に対して不満でも出てきたのではなかろうか。……もしかしてここから出てけ、とか? ヤダ怖い。


「……マロン、あなた……元気?」


 私のおちゃらけた思考とは相反するように、何かを押し殺すような笑みを浮かべるアクエリアス。その様子をジッと観察するのは私。ジェミニは子コアラのようにまだ引っ付いている。


 元気、とはどんな意味を持つんだろうか。

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