六十八
「次代アリーズ様、カプリコーン様、ヴァーゴ様。緊急事態です!」
「何があった。」
アリーズはキリッと威厳タップリな表情(笑)で走ってきた第三者に問う。その変わり身の早さに内心笑ってしまったのはアリーズにバレないようにしなければ。多分半殺しに合うから。
「ボースハイトの大量発生です!」
「っ!」
第三者のその言葉を聞いた三人ともが警戒を強めたようで。アリーズは眉間に皺を寄せ、カプリコーンは顔を強張らせ、ヴァーゴは背筋を伸ばした。
「そして現代トップから、『次代十二星座にボースハイトの討伐を依頼する』と言伝を賜りました!」
それにしても、ぼーす……なんだって? 聞いたことのない言葉に内心で首を傾げる。だが今それをここにいる誰かに聞ける雰囲気はないので、取り敢えず黙っておく。
「そうか。分かった。今城にいる次代十二星座を会議室に集める。たらい回しのようで申し訳ないが、頼まれてくれるか?」
「もちろんでございます! それでは御前失礼します!」
「よろしく頼む。」
おー、アリーズが珍しく上に立つ人間に見える。指示も的確だし、判断も早い。やっぱり次代十二星座の中のまとめ役なんだなぁ、と感心してしまった。
「さてマロン。我輩らに付いて来なさい。」
「部外者の私も付いて行っていいの?」
「まず良いから。」
「分かった。」
これは断れない空気だな。さすがの私でも空気を読むことを選んだ。それにしてもアリーズは何を考えているのだろう。私、一般人なんだけど。
まあ、アリーズなりの考えがあるんだろうし、それを私が理解出来るかと言われたら否だろうし。だからそこは考えないようにしよう。うん、そうだそうだ。
でも……
「ねぇ、アリーズ。」
「何。」
「ボースハイトって何?」
会議室までの道のりの間くらいは質問しても良いでしょ。
「えぇ、そこから? ……めんどくさ。」
なんだこいつ、みたいな顔されても……知らないものは知らないのだから。
「マロン、俺が教えてあげる。ボースハイトって言うのは『悪意の塊』のこと。人間の負の感情が黒いモヤに変化したものをそう呼ぶ。」
「へぇ……」
「で、人間から出たものだから人間には効かないんだけど、それが他の動植物の体内に取り込まれると、その動植物が凶暴化する。その凶暴化した動植物のことを魔物と呼ぶんだ。」
「成る程。じゃあその黒モヤ……ボースハイトが出た時点でそれを消さないと動植物に影響を及ぼすし、凶暴化って言うからには少なからず人間にも害が及ぶってことね?」
「ご名答。本来ならそれぞれ動植物としての一生があったはずなのに、ボースハイトのせいで強制的に凶暴化させられて破滅する道しかなくなる。だからそうなる前に黒モヤを討伐しなければならない。」
「成る程理解した。」
「というわけで早く会議室行くよ。」
カプリコーンの掛け声と共に、四人揃って会議室へ向けて一層強く走り出した。




