六十七
夕飯時になったので食堂へヴァーゴと共に向かっていた。あまりにも頭を使い過ぎてヘロヘロだが、なんとか踏ん張って歩く。
するとその道中でアリーズとカプリコーンの二人にばったり出会った。ああ、そう言えばカプリコーンは私が勉強している間に誰かから呼ばれたらしく、いそいそと部屋を出て行ったんだったっけ。アリーズに呼ばれていたのか。
「やぁマロン。宿題は終わったのかなァー?」
私を見つけたアリーズはニヤァーっと意地悪く笑った。それを見ているとなんか癪に触る。
「あと少しで終わりますー」
「あっそ。」
まだまだ終わりそうにないのに強がってそう言うと、面白くなさそうに言葉を返された。
ムキー! もう少し『頑張ったね』とか……は言い過ぎか。でもでも何か労ってくれても良くない!?
「お疲れ様、マロン。」
「カプリコーン……!」
ああ、カプリコーンの爽やかな笑みが私の疲れを癒してくれる……
「カプリコーン、マロンを甘やかしても良いことないよ。」
「そう言うアリーズこそ、飴と鞭って知ってる?」
「……」
あ、アリーズがカプリコーンに言いくるめられている! ニッコリ笑顔のカプリコーンと、苦虫を噛み潰したような表情を浮かべるアリーズ。
おお、これは貴重だ! そう確信した私は、とにかくこの景色を脳内に焼き付けるようにガン見する。
「ちょっとマロン。まさかとは思うけど……」
「何の話かなアリーズくん。」
あ、ちょっとガン見しすぎて目が乾いてきたかも。痛い痛い。
「我輩が言いくるめられている様子をガン見している訳ではないよね?」
「よくお分かりで。さすがアリーズ様であらせられる。」
「まーろーんー?」
皮肉を込めて様付けしてみたら、アリーズは眉間に皺を寄せてこめかみの血管を浮き上がらせる。わー、怒った怒ったー。
アリーズは怒って私の胸ぐらを掴む。わ〜、アリーズったら短気さんなんだから〜……
と、アリーズをおちょくっていると、カプリコーンが私とアリーズの肩を掴む。多分仲裁に入ってくれたんだと思う。しかしその顔は笑いをこらえているようだった。
「はーい、ちょっと待ってお二人さん。そんな仲良く喧嘩しなくても。」
「「仲良くなんてない!」」
仲良く喧嘩とか意味分からん。そんな思いで咄嗟に出た言葉がアリーズと被ってしまったではないか。
「ほらほら……ププ、一言一句同じだなんて仲良し〜……プププ」
「ねぇカプリコーン、なんか面白がってない?」
「まさか! そんなことないよ!」
大袈裟な身振り手振りで否定するカプリコーン。しかし顔がニヤニヤと笑いこらえているのが私にも分かった。
「ただ二人のやり取りが面白くて!」
「やっぱり面白がってるじゃん!」
プクス〜と堪えきれずに笑い出すカプリコーン。やっぱり第二印象の笑い上戸は本物だったらしい。
「次代十二星座様方!」
そんなほのぼの(?)としたやり取りの最中、第三者がこちらに向かって走ってきた。その緊迫した様子を肌で感じ取ったらしい皆はキリッと表情を変えたのだった。




