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××の十二星座  作者: 君影 ルナ
一章

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五十三 キャンサー

 ボクはルンルン気分で城の廊下をスキップする。ポラリス候補を見つけようと見つけまいと、期限を決めて集まり近況報告会議をしなければならないので、ボク達は城に戻ってきたからだ。


 と、い、う、こ、と、は!


「ふんふふーん」


 マロンと会えるってことだよネ! 楽しみっ!


 ボクはマロンがポラリスなら良いと思うんだけど、アリーズ辺りは反対しているみたいだからね。だからこそボク達はまたポラリス候補を探す旅に出なければならなくなったわけなのだが。あーあ、物事って思い通りにはいかないねー……


「マロン!」


 今は昼時間。多分食堂にいるだろうと踏んで扉をバンと開ける。今回一緒に行動したスコーピオは城の玄関に置きざりにしてきてしまったのはここだけの秘密。


「ん? この声は……キャンサー? おかえりー」


 ボクに背を向けて座っていたマロンはボクの声に反応したらしく、フッと振り返った。


「っ……!」


 振り返ったことで見えるようになったマロンの大きな青目に、ボクの意識が吸い込まれていく錯覚に落ちる。マロンの目、初めて見たけど……とても暗くて……綺麗で……


「ん? どした? 具合悪い?」


 もぐもぐとお昼ご飯を食べながらマロンは首を傾げる。多分ボクが急に黙り込んだからだよね。


「い、いや……ううん。何でもない。元気元気。」


 なんとかそれだけ言葉にして、マロンの瞳をじっと見つめる。


「そ? なら良いや。キャンサーはお昼ご飯食べた?」

「……ああ、うん。まあ、軽く。」

「そっかー。」


 マロンはそう返事をした後、食べることに集中することにしたらしい。もぐもぐと頬一杯に食べ物を詰め込む。その様を見ていつか見たハムスターを思い出した。……うん、そっくりだ。可愛いかも。


 そんなことを考えていると、ガチャリと扉が開いた。


「あー、やっと追いついたわぁ~……」


 ボクが置いていってしまったスコーピオがようやっと到着したみたいだった。


「ちょっとキャンサー。ワタシを置いていくとは良い度胸ねェ?」


 ズモモモモ、とボクの背後から音が聞こえた気がした。それと共にスコーピオのドスの効いた声が聞こえた……気がした。うん、気がした、ということにしておこう。うん……


 振り向きたくないなぁ……。だって絶対ボクがスコーピオを玄関に置き去りにしたこと、怒ってるよね?

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