四十六 サジタリアス
会議室に戻ってきた自分ら二人は席に着き、勉強を始めた。
「この文字はだな……」
「ふむふむ……」
マロンにまずは文字を教える。と言っても読むことは出来るらしいので、書けるようにすれば良い。書き順があることに苦戦しているらしいが、まあ、慣れだな。
マロンが文字を何度もノートに書き写す間、暇になった自分はふとアリーズとの会話を思い出していた。
『サジタリアス、取り敢えずマロンには詰め込めるだけ知識を詰め込んでやってあげて。』
『ある程度のレベルになるまで、ではなく? 何故だ?』
『それはまだ言えない。確信がないからね。ただ……マロンは属性魔法を三つしか扱えないけど、人柄を見るとあのポラリス候補達よりかはマシだから。』
『まあな。それに、十二星座のほとんどがマロンに好意的だ。余計マシに見えるのだろう。』
『我輩はまだマロンを信用してはいないけどね。だが、他の皆の意見も聞かねばならない。……だからこれから時間が出来たら我輩もそっちに行くよ。』
『……分かった。』
………………
…………
……
アリーズにはアリーズなりの考えがあるのだろうが、マロンと会わせてアリーズがまた銃口を突きつけないか心配だ。それを止める自分の気持ちも考えて欲しい所なのだが……
はあ、何故毎度毎度自分がこの立ち位置なのだ。何故面倒くさい立ち位置に自分がいなければならないのだ。
これからアリーズとマロンが鉢合わせた時のことを考えて、自分は胃を痛める。
そしてそれはすぐに起きた。
「やあ、サジタリアス、マロン。」
「ひょえっ」
ニコニコと笑顔を貼り付けて会議室に入ってきたアリーズ。そしてそれを見てまた驚いたような声を出すマロン。また顔面がどうのこうの言うのだろうか。
「そ、その声は……アリーズ?」
「そうだけど。あれ、マロン目が開いてるのか。へぇ……」
見定めるように目を細めるアリーズ。それに反して怯えるように自分の背後に隠れるマロン。
「な、なんかアリーズ怖いっ! いや、それはいつもだけど!」
マロンはアリーズの顔面が綺麗云々ではなく、アリーズが纏う空気に恐れて声を出したらしい。しかしアリーズを一撃で沈めたやつが何を言う、と思ってしまったのは普通だろう。
「へぇ……その目は嫌いじゃないね。」
「ひっ……」
アリーズは音も立てずにマロンの目の前まで来る。そしてマロンの顎を鷲掴みし、ずいっと顔を近付けてマロンの右目をジッと眺めた。
「ふぅん、タンザナイトみたいな目だね。」
「へ?」
顔を近付けたままアリーズはそう呟く。そしてクッとアリーズの口角が上がった。ふむ、アリーズもマロンに興味が湧いた……のか?
まあ、銃口突きつけてバチバチな修羅場、みたいな状況にならなくて良かった、と言えるだろうか……?




