四十五
「えぇ……」
サジタリアスの暴論に私は恐れおののく。というか私、知らずにこんな美男美女とお喋りしてたの? わあ……。自分にドン引くよ。無知って怖いね。
そこまで考えた時、そういえば城に着いた時や鑑定に行った時に『何故あんな奴が』みたいな悪意のある視線や声が私に向けられたことをふと思い出す。
成る程、この二人と並ぶ程の美形達と歩いていれば、確かに私みたいなちんちくりんが一緒にいることに不満を持たれるわけだ。理解した。
「マロン、自分らの見た目はどうあれ、一緒に過ごした時間は変わらないだろう?」
「ま、まあね。」
「だから気にするな。」
「……が、頑張る。」
サジタリアスの言い分に、私の顔は引き攣る。それでもなんとか言葉を振り絞ったけど……
「でもマロン、あたくしの見た目がキラキラしてるって言ってくれて嬉しかったわ。」
「アクエリアス……!」
アクエリアスは青色の髪をふわりと揺らし、ツリ目をほんの少しだけ緩ませて笑った。うっ、キラキラが増した……
二人が眩しくて私はきゅっと目を細める。
「……ごほん。マロン、そろそろ無駄話は終わりにして勉強しに行くぞ。」
「あ……はーい。」
サジタリアスのその言葉によって現実に戻される。そうだ、とにかく今は勉強してたくさんの知識を仕入れなければ。
カプリコーン曰く属性魔法持ちは特に色々な知識が必要らしいからね。頑張らなければ。
今一度気合いを入れ直すのだった。
サジタリアスに連れられ会議室へと戻る道すがら、私はずっとキョロキョロと周りを見回していた。城なんて生まれて初めて見るからね。
わあ、廊下広い。壁の彫刻も綺麗。窓から入る光もキラキラしていて素敵。エトセトラエトセトラ。
「マロン、落ち着け。」
「えー、それはないよサジタリアス。この綺麗な建物を目に焼き付けないと!」
「そんなもの、これからいつでも見られるから別にいいだろう?」
サジタリアスはそう言うけど、そんなこと無いと思うけどなあ。勉強が終わったら多分城から追い出されるだろうし。
どんなに頑張っても一般人の私が城に滞在し続けることは不可能なのだから。
「さあ、勉強始めるぞ。」
「はーい。」
まずは知識を得てから。その後にこれからの未来を考えればいいだろう。知識を得たことによってやりたいことも出てくる……かもしれないし!
頑張るぞ、えいえいおー!




