三十四 アリーズ
はぁ、キャンサーは今頭に血が上っているみたいだから、このまま放っておいてマロンとやらの話を進める。
どうしてついてきたか、それも気になるがもう一つ聞かなければならない事柄がある。
「……で、マロンとやら。どうやって皆を誑し込んだ?」
「たらし……?」
食堂の様子を見る限り、今来た我輩とトーラス以外の皆がマロンとやらに好意的。十人もいれば気の合う合わないなんて出てくるはず。だからこその質問である。
マロンとやらはしばらく考えた後、ああ! と声を漏らす。
「馬車の中で食べたんだよ。」
馬車の中で……食べた?
無害そうな顔とは相反して十二星座の皆を食い物にするとは。やはりそうか。こいつは我輩らに害なす存在。このまま殺してしまっても……
ギリ、と今一度銃口をマロンとやらに押し付ける。
「ぷっくく……」
しかし殺気を出す我輩とは裏腹にカプリコーンが笑い出した。何故だろう、その笑いにカチンとくるのは。
「カプリコーン?」
「くくくっ……い、いや、確かに食べたよ。……みたらし団子を……くくくっ」
……? ……、……? 我輩は頭を捻ってカプリコーンが発したその言葉の意味を探ろうとするが、よく分からなかった。
カプリコーンは何を言っているのか……
カプリコーンside
「ああ、そうそう。俺はマロンの誰にでも平等に接してくれる姿勢が好ましかっただけだからね。」
ぷーくすくす、アリーズのマヌケ顔超ウケる。いつもはキリッとキメ顔で生きるアリーズが、ぽかんと口を開けて呆けている。その表情は見ものだ。実に面白い。
「マロンとやらは……アホなのか?」
さっきまでの張り付いた空気は一気に緩む。そのことに少しホッとしながらも笑いを堪える。
「マロンはアホではない! アリーズ訂正して!」
ああ、ああ、ポラリス信者のキャンサーが怒っちゃった。
「キャンサー、私はアホ? で合ってるよ。だからそんなに怒んないで。」
「ボクは信じない! マロンはアホじゃない!」
マロンもマロンで、学校に行っていないことが引け目に感じているようだ。そんなの今から学べば良いだけじゃないか、と俺は思うのだが。
「み、皆……落ち着いて、ね……?」
俺が楽しく傍観していると、珍しくヴァーゴが仲裁に入ってきた。




