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××の十二星座  作者: 君影 ルナ
一章

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42/125

二十九

 ヴァーゴは言葉を詰まらせる。何があったのだろうか。見当もつかないな。


「き、キャンサーとジェミニの組も帰ってきたんだけど……」

「あ、そこにいるのがポラリス候補?」

「ひっ!」


 第三者の声が聞こえてきた。どうやらスコーピオサンとリーブラサンの他に新しく二人こちらに向かってきたようだった。しかしヴァーゴは何故そこまで怯えているのだろうか。


 もしかして敵? ……いや、殺気は全くと言っていい程に感じられないから違うだろう。


 それなら……


「ポラリス候補、名前を教えてくれる? ボクはキャンサー。」

「あ、えと、マロン……デス。」

「ああ、マロン! とても良い響きだ! このままボクのものにしてしまいたいくらいだ! 取り敢えずこの城から出られないように……ブツブツ……」


 恍惚とした声でそう言い放つキャンサーサン。なんだろう、ちょっと圧みたいなものを感じる。それに段々声が小さくなって聞き取れなくなったが、私の身の危険を感じるような感じないような……


「キャンサー、少し落ち着きなさい。ワタシ達もまだあまりお話出来ていないのよ?」

「そうですよぅ、僕もマロンさんとお話したいです!」


 スコーピオサンとリーブラサンが間に入ってくれたので、あの圧(?)から逃れられた。助かった。二人ともありがとう。


「ねー、ぼくも自己紹介させてよー。」

「ああ、ごめんなさいね。ジェミニも話しましょう?」

「うん! ポラリ……マロンさん、ぼくはジェミニ! よろしくね!」

「よ、よろしく……オネガイシマス? ジェミニサン。」

「マロンさん、ぼくにはタメで良いんだよ! だってぼくこの中で一番()()から!」

「分かった。ジェミニって呼ぶ。」

「うん!」

「あらジェミニ、若いだなんてワタシ達の前で言う?」

「若い若い若い若い若い若い若い若い若い!」

「いえ、スコーピオさんはまだまだ若々しいですよ?」

「なんかリーブラに言われても納得出来ないわね。」

「え?」

「……」

「……」


 ……なんかほのぼのわちゃわちゃしていて、私が紛れ込んではいけないような気がする。うん。取り敢えずこの会話に混ざらずに聞き役に徹する。


「マロン、朝ご飯食べた? ボクは軽く食べたけど。」

「え、あー……」


 キャンサーにそう聞かれる。今日になってからは食べてはいないけど、そんなに頻繁に食べなくても良くない? とは私の持論である。


 いや、ここに来るまでの間は毎日四食(そのうちの一つはおやつ、らしい)食べたけれども。何度も食べてもお腹が痛くなることは無かったけれども。


「ま、マロンは食べてないはずだよ。」

「そっかそっか。じゃあマロン、ボクと一緒に食堂に行こう?」


 スルッと(多分)キャンサーに手を取られ、背中も軽く押される。その動作がリコ……カプリコーンみたいだ。知らぬ間に手を取られる感じがとても似ている。


「マロンが好きな食べ物を用意させようじゃないか!」


 頭上から聞こえるキャンサーの声はとても楽しそうだった。

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