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××の十二星座  作者: 君影 ルナ
一章

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38/125

二十五

 リコに手を引かれて馬車を降りると、ザワザワとたくさんの人の声が聞こえてきた。


「きゃあっ、カプリコーン様素敵! いつ見ても爽やかだわ!」

「アクエリアス様、今日もお綺麗だ……」

「ヴァーゴ様、おどおどしていて可愛らしいわ!」

「パイシーズ様の笑顔が綺麗すぎて辛い……尊い……」

「リオ様の凛としたお姿、素敵ですわ!」


 いや、ザワザワというかキャーキャーかも。女の人ってあんなに高い声が出るんだね。初めて知った。私は地声が低めだから、あの高さは出せないかもなー。うん。


 そしてここにいる男の人はキャーキャーは言わなくて、溜息をつくような声が多い……かな?


「あら、次代の十二星座様とご一緒にいられる方はどなた?」

「あなた存じ上げる?」

「いいえ? どなたかしら?」


 そんな風に聞き耳を立てていると、どうやら私は悪目立ちしてるらしい。なんか私に対しての言葉には棘があるようにも感じるし、先程よりもヒソヒソとした声で悪口(仮)を呟いている人多数。


 ああ、これでも私、多少地獄耳寄りだからね。バッチリ聞こえているよ。


「さあ、マロン。サジタリアスが待ってるから、早く会議室に行こう?」

「う、うん……」


 リコはそんな周りのガヤガヤ声が聞こえていないのだろうか。もしかして聞こえないふりをしているとか? そう思ってしまう程リコはいつも通りだった。周りの声に萎縮することもなく、嫌がるでもなく。


 リコに手を引かれ、城の中(?)に連れて行かれる。目を閉じているのがもったいないような気がしてきたが、人前で目を開けることはしたくないので我慢する。






 しばらく手を引かれたまま歩いているとザワザワ声も止んでいった。そしてカツカツコツコツと六人分の足音だけが辺り一面に響く。わお、この足音の響き方からして、私達は随分広い所を歩いているようだ。


「着いたよ。」


 そう言って立ち止まったリコ。それに倣って私も立ち止まる。


 数秒待つとギギギと重い音が響いた。扉でも開いたのかな?


「やあ、サジタリアス。こっちも到着したよ。」

「ふん、随分のんびりだったな。」


 あ、ジーの声がする。船を降りてから一度も声が聞こえないと思ったら、ジーは先にここに戻ってたんだね。


「まあね。」

「ヴァーゴとリオも一緒か。」

「う、うん。」

「さあ、早くマロンの属性鑑定をしに行こうではないか!」

「……待て。他の皆が集まってからにしろ。」

「何故だ!」


 早く目的地に行こうと提案したリーに待ったをかけるジー。


「もしマロンが全属性持ちだったとして。その鑑定時に自分が居合わせなかったら、どう思う?」

「嫌だな!」

「そうね、あたくしの目でちゃんと見届けたいわね。」


「そういうことで、他の皆の到着を待つべきだと自分は思う。」

「てことは……マロンの鑑定は明日以降に持ち越し?」


 そう溜息混じりに呟いたのは誰だったか。もしかしたら全員の声だったのかもしれない。

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