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××の十二星座  作者: 君影 ルナ
一章

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33/125

二十 ヴァーゴ

 島国組が城に戻る為に乗っていた馬車に一緒に乗っていた少年。こ、この人がポラリス候補なのか。い、言ったら失礼かもしれないけど、こんな世間にも疎そうな人がそうなの?


 間違えて拙とリオがこの人の前で名前をそれぞれ呼んだのに、拙達が何者なのかピンと来ていないらしい。首を傾げて終わり。それほどこの世界のことに疎いのだろうことだけが分かった。それなのにポラリス候補? 拙達の上?


 しかし裏を返せば拙達を恐れることも無く、擦り寄ることも無いということ。そんな新鮮さは確かに悪くはないかもしれない。


「もしかして気が付いてないの?」

「何が?」

「え、名前を聞いて……なんとも思わなかった?」

「名前? ああ、なんか特徴的な名前だから、なんかあったような無かったような……?」


 そこまで!? む、無知にもほどがあるよ。しかしそう思ったのは拙だけでは無かったらしい。あのリオでさえ暴れるのをやめてポカンと顔を呆けさせていた程だから、その衝撃は余程のことだろう。


「が、学校で習わなかったの?」


 思わず拙が聞いてしまった。


「あー、学校? 行ってなかったからね。」


 ポラリス候補のその言葉に一同衝撃を隠せなかった。だってこの世界のトップのことを習うのはだいたい小学校。そしてそれは義務教育の範囲内。ということはもしかして……


「も、文字も読めない?」

「文字くらいは読めるよ。……書けないけど。」


 なんと! それなら拙達を知らないのも無理はない。


 しかし、この世界はしばらくの間平和だった。多少の小競り合いはあちこちで起きているが、それでも。大きな戦争は無く、平和だったはず。そして政策として勉学にも力を入れていたのに、ここまで無知な者が未だに出るなんて……。


 この人には何か事情があるのだろう。それだけははっきりしている。


「そう。」


 アクエリアスがポツリと呟くように返事をする。まあ、そんな反応になってしまうのも分からなくはない。


「あ、でも私、運動神経は良い方だと思うし、体はすごく柔らかいよ!」


 しんと静まり返ったこの空気に耐えられなくなったのか、ポラリス候補がワタワタとそう付け加える。


「……ま、まあ、マロンがどうであれ一度魔法の属性鑑定はしなきゃないからね。付いてきてもらうのには変わりはないよ。」

「う、うん。」


 へぇ、この少年はマロンという名前なんだね。女の子につけられそうな名前だ。でもこの子は多分男。名付け人はどんな思いで名付けたんだろうな……。


「さて、ここで立ち話もなんだし、ルグ(ヴァーゴ)とリー(リオ)も馬車に乗って。一緒に戻ろうか。」


 カプリコーンの提案に頷き、拙とリオも馬車に乗る。

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