十三 サジタリアス
マロンは面白い。昨日の時点で自分はマロンを怪しんで様子見をしていたが、悪いやつでも無さそうだ。運動神経は頗る良さそうだし、魔法も扱える。
だからこそ考えてしまう。もしマロンが全属性持ちならば、と。自分はマロンならポラリスになって貰っても良いと思えた。マロンに対して好印象を抱いている、とかいうやつか。
それになんたってマロンは面白いからな。自分、笑ったのなどいつぶりだろうか。分からない程。だからこそマロンが自分らのそばに居てくれたら、きっと毎日が楽しくなるだろう。
「ふん、弄りがいがあるのが悪い。」
マロンは目を瞑っているから、自身の髪が昨日以上にボッサボサになったのには気がついていないようだ。いや、マロンは自身の容姿に一ミリも興味がないのだろう。自分の服も取り敢えず着るものが無いからまあいいか、というマインドを感じるからな。
城に戻ったらすぐに服に拘りを持つ者に聞いて……む、誰だ、服に詳しいのは。トーラス辺りに聞けばいいか?
まあ、そうしてマロンに似合う服を選んでやりたいところだな。
と、これからのことを熟考している間にカプリコーンがマロンの髪を直してやっていた。
カプリコーンが他人に優しいのはいつものことだが、マロンに対してはいつも以上に優しいというか過保護というか……。カプリコーンもマロンを気に入ったのだろうか。
まあ、カプリコーンに限らず、アクエリアスやパイシーズもマロンに一段と優しいというか何というか。そう見るといよいよマロンがポラリス候補に上がるというもの。期待は膨らむばかりだ。
「さ、マロン、ここに座って。」
「ね、ねぇ……ここ、すんごく広くない? 個室なんでしょ?」
カプリコーンのエスコートで席に着いたマロンは風の魔法で気配察知をしたのだろう。この部屋の広さに震えていた。
しかしそんなに広いか? あまり実感は無いのだが。それに城はもっと広いからな。そんな風に感じた事はない。普通の個室だ。
自分も席に着き、さて、朝食は何が出てくるだろうかと想いを馳せる。豪華客船ということもあり食事も充実しているのだ。この船は島に来る時に乗った船と同じ会社の船だからな、期待値は高い。
「ご、ご飯……む、無理……」
自分は密かに楽しみにしているというのに、マロンは顔を真っ青にして震えていた。なんだ? また萎縮しているのか? 気にすることなどないというのに。
もしかしてコース料理を食べたことが無いのだろうか? だから未知数に怯えている?
ふむ、まだマロンについて知らないことも多い。これからゆっくりと知って理解出来たら。そう思う。




