四
「ということで、マロンさんは小生らについてきていただきたいのです。」
「あー……うん。分かった。そういうことなら。」
どうせ行くあても無いし、人生に目標も目的も無いし、流れに身を任せてもいいか。
「じゃあ明日、夜が明けたらすぐ王都へ戻りましょ。」
「あ、あの、それならちょっとひとつだけ頼みがあるんだけど……聞いてもらえる?」
「ええ、別に良いわよ。」
「あのー、私の服を新たに見繕ってもらえないかなって。この格好って不審者っぽいじゃん? お金は……出世払いとかって出来る?」
黒のハイネックに黒のズボン、黒いブーツという私の姿。街を歩くのには向かないだろう。というか変に浮きそう。だからこそのお願いだ。パチンと手を合わせて二人(がいるだろう方向)を拝む。
「そうですね……今はもう夜遅くてどこのお店も閉まっていますし、朝一でここを出たいので開店時間まで待てないと言いますか……どうしましょう?」
シーズはうんうん唸って考えを捻り出そうと頑張ってくれた。
「あら、よく見たらマロン、あなたジーと似た背格好でなくて?」
「成る程、その手がありましたね。では今から小生がジーとリコに話をしてきます。」
なんか二人くらい新しい人物が出てきた気がする。二人の知り合いなのかな? それよりそんな少ない言葉数で通じるなんて、この二人、相当仲良いな?
などなど私が新たな二人の想像をしている間にシーズはタタタッと部屋を出て行った。この部屋にはリアスと私の二人になる。
無言の空間が出来上がった。正直ちょっと沈黙が怖かったとはリアスには言えないけど、うん、居心地は悪かった。私の目が見えていないせいもあるだろうけど。
「この部屋に可能性のある子がいるっていうのかい? それは実に楽しみだ!」
見知らぬ人の声が遠くから聞こえてきた。コツコツとこちらに向かってくる足音と気配三人分。ふむ、シーズとジー? とリコ? って人の気配かな?
と、予想を立てているとガチャリと扉が開く音が聞こえてきた。
「ジー、リコ、やっと来たわね。」
「やあ、リアス。で、そちらの方がもしかしたらの?」
「そうよ。今のところ風の魔法を使っているのはあたくしとシーズが見たわ。」
「そうか。ではまずあなたのお名前を教えてはいただけないだろうか。ああ、俺はリコだよ。よろしく。」
新たな人、リコは私の手を取った。背が低いのか、私よりも低い位置から声が聞こえてきた。
「私はマロン。」
「ああ、素敵な響きだ。」
……今、どういう状況だ?