二十三・二
「それにしても十二星座の皆様との鍛錬で瞬殺されない実力の持ち主、だなんて噂のあるお気に入り君が、十二星座候補生だったとはいえ十二星座の皆様とは少し劣るビヤーノ先生相手にここまでやられてしまうものかしら?」
「いやぁー、それがリコ……じゃなかった、カプリコーンの昔が、今の彼とは正反対だった、だなんて聞いちゃったら、ねぇ。今のカプリコーンしか知らないから動揺して固まっちゃって!」
「あ、そ。」
「ちょ、もうちょっと興味くらい持ってくれても!」
校医による怒涛の追及が嘘のように、テキトーな返事をもらった。
「思ったよりくだらない理由で、聞いて損した気持ちになったわ。」
「え、そんなにくだらないですかね?」
「そりゃあもう。だって次代カプリコーン様の性格改変は周知の事実でしょう? 今更何に動揺するのよ。」
「え」
「何、あなた知らなかったの? だとしたら随分世間知らずなのね。十二星座様方のお気に入り君の割に。」
「……」
そうなの? 知らなかったのは私だけ……? ここでもまた私の世間知らずが露呈したってこと、か……。
己の無知さにガッカリすると共に、(自業自得なはずなのに)のけ者にされたような疎外感にも苛まれる。そんな自分の身勝手な心に呆れすらも感じるくらいだ。
「それならビヤーノ先生が加減を間違えるのも頷けるわね。だって十二星座のお気に入り君がまさかそんなことも知らないような世間知らずだとは思わないもの。」
そう、だよね。やっぱり私って世間知らずなところ、あるよね。
「……あの、」
「なぁに?」
それならこんな自分のままではいたくない、と校医に相談を持ちかけてみることにした。少なくともこの人は私を蔑むようにも媚びへつらうようにも見えなかったから、きっと忖度無い言葉が聞けると思って。
「……出来たら、で良いんですけど、私に世間や常識を教えてはくれませんか? このままでいたら、いけない気がして。」
勉学はアリーズやサジタリアスが教えてくれた。魔法や戦い方も多少は教わった。
でも、この広い世界については、歴史をかじった程度の知識しかない。常識は誰からも教わっていないから、きっと偏っているに違いない。
だからこれはきちんと知らないと、理解しないといけない気がする。
そんな私の熱意なのか必死さなのか、そんなものが伝わった……のだと思いたい。校医は仕方ないわね、と言い出しそうな苦笑いをその顔に浮かべた。
「私の主観が入ったものでよければ、だけど。いいわ、教えてあげる。」
「っ、ありがとうございます!」
「それなら新聞くらいは読んでから来なさいよ。」
「宿題ですね! 分かりました!」
学校の中で優しくしてくれる先生が新たに出来ました! 嬉しくて頬がユルユルに緩んでしまったのも仕方ないだろう。




