二十・二
「今日は俺が振り分けたグループごとに対戦形式の実戦練習だ! だが魔法使用は不可、使っても良いのは純粋な己の筋肉だけ、という制限をかけさせてもらう! 魔法が使いたければ魔法演練の授業の時間にしなさい!」
剣術のグレイス・ビヤーノ先生はそう言い置いてから、淡々とグループを発表していく。
私もいつ呼ばれるかとドキドキワクワクしていたのだが、しかしどうも一向に呼ばれない。
何なら今(私以外の)最後の人が呼ばれ終わったところだ。あれ、私、まさかのボッチ……? 先生にまでハブられたら私はどうすればいいんだ!?
脳内でワタワタと慌てていると、ビヤーノ先生はグリンとこちらを向いた。
「最後にマロン。お前さんは俺とだ。」
「……へ?」
てっきり級友とキャッキャウフフが出来ると思っていたのに──そもそもクラスでハブられていただろう、というツッコミは聞こえないったら聞こえない──、まさかの先生とマンツーマン、だと……?
思いもよらない決定に、私は上手く返事ができなかった。
「さて、マロン! 何故お前さんが俺と、だなんてことになったか、分かるか?」
「いえ、さっぱり!」
お互い剣を持ちながら対峙する。その間に交わされた会話は、どうも緊張感に欠けるものだった。
「それはお前さんの実力が他とは一線を画すものだからだ。それも無自覚ときたら、下手なグループに入れた瞬間に怪我人が出かねない。だから俺が相手するしかないんだ。」
「は、はぁ……」
ちょっと何を言っているのか、私にはワカラナイ。そんな、他人を怪我させるくらいの力量は無いよ? 前職的な戦い方は勿論するつもりもないし。
「ほら、今も意味分からないと言わんばかりだろう? 己と相手の力量を推し量ることも大事だぞ! ……ということで、どこからでもかかって来い! 俺は一時期十二星座候補生という肩書きを持っていたくらいだからな、遠慮はしなくても良いぞ!」
それがどんな仕組みでどんな肩書きなのかは分からないが、なんかすごいことは分かった。
字面から推測するに、十二星座に選ばれそうにはなった、ということではなかろうか。
それは強い(確信)。今一度気を引き締めていく。
お互いがお互いの出方を探る。周りから見たらただジッとしているだけに見えるかもしれないが、こちとらこれ以上ないくらいには集中している。周囲の音が消える錯覚に陥るくらいには。
先生からは動かないらしい。そんな空気を感じ取った私は、ならこっちから攻めても良いよね、と先生に向かって走り出した。