十八・二
あれからしばらくして、リーブラたちは気が済んだらしい。攻撃の手を止めて、武器をしまった。
ちなみにリーブラたちは無傷、アリーズは軽傷くらいで済んだことに内心安堵した。これでも一応私にも人の心というものがあるんでね。
お前は我関せずで笑っていただけだろう、だなんて言葉は聞こえない聞こえない。
「で、アリーズ、なんか言うことはあるかしら?」
「スミマセンデシタ。」
アクエリアスの問いかけにカタコトで返すアリーズ。いつもと逆の立場になっていることがあまりにも面白くて、この状況を目に焼き付けておく。
「……で、何故そんなことになったの? アリーズちゃんが理由なしに自分のテリトリーに人を入れるわけないもの。」
トーラスさんやい。それが分かっていたのにも関わらず殺気を向けたんかい。皆の価値基準、よく分からんな。
「あー……かくかくしかじか。」
「なっ! やっぱりマロンが標的だったワケ!?」
「今まで捕まえた暗殺者たちは尽く黙りを決め込むし、細心の注意を払っても自死する。だからどうしても目的やら何やらを聞き出すことが出来なかったんだ。でもここ最近はマロンにしか差し向けられていなかったから、今回で確信した。……悪かった、我輩の力不足だ。」
「……そう。でもそれならあたくしに預ければ良かったのではなくて? 昨日の夜分には戻っていたのだから。」
「いや、アクエリアスが帰ってきてたなんて知らない。報告もまだ受けてないし。」
「そ、それは……まあ、そうね。」
「でも兄さん、それでも城にいると分かっているメンバーにくらい相談してよ。叩き起こしてでも、さ。報連相、大事。」
「わ、悪かった……」
「分かったのなら良し。」
お、ようやく話に一区切りついたかな? それなら聞きたいことがあるんだけど……答えてくれるかな?
ソワソワと五人の周りを彷徨いてみると、それに気付いてくれたサジタリアスが声をかけてくれた。
「マロン、どうした?」
「ええと、その、リーブラの『兄さん』呼びがずっと気になってて、さ……」
「ああ、アリーズは僕の実の兄なんですよ〜。」
気になっていたことをサジタリアスにそれとなく聞いてみると、その会話を聞いていたらしいリーブラがサラッと教えてくれた。
今のやり取りから察するに、何となくそうじゃないかとは思っていたが、改めて言葉にされると驚いてしまう。
だって天使のリーブラと意地クソ悪いアリーズがまさか兄弟だなんて。言われなきゃ一生気がつかなかっただろう。それくらい似ていないんだ、この二人。
ああ、でも、よくよく見たら顔立ちやそれぞれのパーツは少し似ているかもしれない。まあ、本当、じぃっくりと観察したらの話だ。
「あたくしもビックリするくらい、この二人は似てないのよねぇ。主に性格の悪さが。」
アクエリアスのその言葉に、アリーズは『性格悪くてごめんなさいね?』とニッコリ笑顔で言い切った。その笑顔の薄寒さと言ったらもう、筆舌に尽くしがたかったとだけ言っておく。