十四・二
あの後もアリーズに色々愚痴愚痴と言われたが、それは割愛する。半分くらい聞き流していただなんてことは無いからね! ちゃんと聞いてたよ! 覚えてないけど!!
と、まあそんなこともありつつ今日が終わった。いつもより二人多い夕食はとても楽しかったなあ、だなんて考えながらくふくふと笑う。
部屋の机に着き、今日学校から出された宿題とかいうやつをこなすためにペンを走らせていく。
「っ……!」
が、すぐに部屋の異常を察知した。ほんの微量の殺気を感じ取ったのだ。
ほら、殺気がこもっているとすぐ気付くんだよ、私は! と、頭の中にいるイマジナリーアリーズに自慢しながら、さてどうするかと思案する。
それにしてもまたかぁ、とゲンナリしながら持っていたペンの握りを替える。こう、刺すような感じで。それを殺気の元、カーテンの裏に向かって突き刺す。
まあ、それでやられる程ヤワなやつが送り込まれているとは思えない。もちろん躱された。
「ですよねー」
奇襲はお互い失敗してしまったということで、後は真っ向勝負で勝たなければならなくなった。体力持つかな。そんな少しの心配は表に出さず、飄々と笑って見せた。
「……お前、ただモンじゃあないな?」
「ただの学生ですよー。」
「ただの学生が殺気に、それも普通に生きてきたら気が付けない程度のものに気が付いて、更には先制攻撃を仕掛けてくるわけがないだろうが。」
「え? 殺される前に殺す、これ鉄則。じゃないの?」
「アホか。普通の人は俺たちに気が付いたらまずは助けを呼ぶだろうが。」
「あー、成る程、そうなのか……」
何故暗殺者に普通を説かれているのだろう、だなんて明後日な疑問ばかりが頭を駆け巡る。
「で、俺はお前を殺しに来たわけだが、何か言い残すことはあるか?」
「いんや、特には。だって死なないし。」
「はあ? つくづくお前は分からないやつだな。」
「分からないと言ったらこっちの方こそ、って感じですけどねー。殺気を微塵も漏らさずに私を殺せば良かったじゃあないですか。それなのにわざわざ私を試すような真似事をして……これで任務が失敗したらどうするつもりだったんですー?」
「フン、この俺が子供相手に負けるわけないだろう? それに試すようなことをしたのは、ターゲットの力量を把握してから殺した方が良いから。その方が楽ってもんだ。」
「気付かれているって時点で力量も何もない気が……」
あれ、もしかしてこの暗殺者、アホの子……? だなんて内心考えながら、隙を見せる。もう早く寝たいんだよね。宿題は明日の朝やることにする。もう色々疲れちゃったんだもの。
「っはは、隙だらけだぞ!」
そう見せてるだけですー。と心の中で言い訳しながら、ようやく話が終わった、とほんの少し安堵する。
もちろんその好機を逃す私でもなく、真っ向からやって来た暗殺者の攻撃を躱す。躱されると思っておらず出来た一瞬の動揺を見逃さず、私はペンで暗殺者の目を狙うのだった。