カプリコーン(やぎ)
「すみません、ここら辺で魔法を扱える人を知りませんか?」
俺は爽やかスマイルで街人のお姉様方二人に聞き込みを始める。笑顔は振り撒いてナンボだからね。
「おいらは知らんねぇ。おめさん知らねぇか?」
「おらほも知らんな。こごは島国っつぅもんもあるからな、情報はすぐ回るはずだっぺよ。」
「んだなはん。」
……やはり収穫は無しか。心の中でだけ落胆する。もちろん、表情筋は笑顔を作り続けたままで。
「そうでしたか。お姉様方、情報ありがとうございます。」
「あらぁ~お姉様だどよ。」
「嬉しいこと言ってくれんねぇ。そんな綺麗なお兄さんにはこれあげる。」
「え?」
「探しもの、見つかるおまじないしてあげっからな。」
そう言って渡されたのは一つの林檎。赤々ツヤツヤしていてとても美味しそうだ。
「……ありがとうございます。」
お姉様方のその気持ちが嬉しくて、先程よりも自然な笑みが零れたような気がした。
「いいのいいの。」
「これサーダさん家で採れた林檎らしいけど、うんめぇから食え食え。」
「……じゃあ、一緒に探しものをしに来た友人と共に食べさせていただきますね。」
「そりゃあ良いなぁ。」
「綺麗なお兄さんのお友達ってんだから、そのお友達も綺麗な人なんだろうねぇ。」
「ふふ、そうですね。あいつは仏頂面だけど、根は良いやつですよ。」
「根は良いとはなんだ。」
俺の隣に音もなく立ったのはサジタリアス。噂をすればなんとやら。まあ、気配で近付いてきたのが分かっていたから俺は驚かないけど。
「あ、ジー来たんだ。珍しいね。」
「ふん、何か不穏な空気を感じたまで。」
「あいやー、おめはんも綺麗な顔だなぁ!」
「……。」
お姉様方はサジタリアスの顔を見てポッと頬を染める。まあ、睨まなければサジタリアスも顔は良いからね。サジタリアスはそんな反応をされるのが嫌らしく、また眉間に皺が寄る。
それを見て俺は思わず声を出して笑ってしまった。