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××の十二星座  作者: 君影 ルナ
一章
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八十八

 じゃあカフェに向かおうか。そうカプリコーンが仕切ろうと言葉を発した時、向こうから二人組に声をかけられた。


「あら三人ともお出かけかしら? アタシも混ぜて欲しいわ!」


「僕もご一緒しても?」


 見覚えはないが、声質から推測するに多分トーラスとリーブラだろう二人組。そう言えばこの二人はまだ城に戻って来ていなかったっけ、と思い至る。


 トーラスの厳つい顔に筋骨隆々な体で女性のような口調なのは見慣れないが、今までのような怖い話し方よりも断然似合っているように思えた。


 リーブラは肩の辺りで外ハネした髪の毛が羽根のように見え、まるで天使のようだった。ニッコニコの笑顔もそれに拍車をかけているような気もしなくもない。


「お昼ご飯は食べたのかしら? ワタシ達はこれから食べに行くつもりよ。」


 スコーピオがこちらの現状を伝える。するとトーラスもリーブラもパァッと顔を輝かせる。


「あら、それならアタシ達二人も同じような感じだったし、尚更一緒に食べましょ? どこに行くつもりだったのかしら?」


「ほら、ここの近くに出来たカフェに……」


「あら、そこならアタシも気になっていたのよ!」


「じゃあ決まりだね!」


 私が間に入る間もなく、次の行き先が決まった。


………………

…………

……



「あー、楽しかったなー。」


 あの後も色々連れ回され、それに慣れない疲れはあれど、誰かと街を見て歩くなんて初めてのことで。楽しさの方がそれを上回っていた。


「ふふふ」


 思わず笑みが溢れる程度には。


 ルンルンと上機嫌であてがわれた部屋に戻る。もう今日はあと眠るだけ。今日のお出かけのことを考えながら眠れば、さぞかし素晴らしい夢を見られるのではなかろうか。そんな予感がする。




 さてそこで話は変わるが、今日もまたクローゼットの中で眠るか、それともこの寝心地のいいベッドで眠るか。目下最大の選択に私は迫られていた。


「……き、今日だけ!」


 迫られていた、と言ったがほぼ即決だった。今日だけ、そう言い訳をして眼帯を取り、ベッドで眠る準備をする。久し振りに両目でモノを見るなぁ、とぼんやりした視界にある種の感動を覚えながら。


 これは誰にも見られてはいけない。そう考えながら左の下瞼をなぞる。


 これを見られたら、きっと、多分……


 そんなあり得るかもしれない未来を思い浮かべ、今日の楽しさから一変、絶望が胸を占める。


「ああ、駄目だ駄目だ。考え過ぎても良いことないって分かっ……」



ザシュッ……




 その時、唐突に刃物で肉が裂かれる音が部屋に響く──

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