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魔力ゼロからのスタートです

十歳の誕生日を迎えるまでに後一年。それまでに私は早急に魔法の力に目覚める必要がある。

ベタ甘なお父様に魔法が使えるようになりたいと告げたところ明後日の方向へ目が泳いだことから、クラリスが言っていた話は嘘ではないらしい。


たった一人私室で眺めるのは、伝家の宝刀『攻略本』。

ぺらぺらとそれに何かヒントはないかと眺めていると、不意に手が止まる。


「え……お父様とクラリスの欄が増えてる」

この本は国内の新聞のような役割を果たす週刊誌のていを取っているのにこんな情報を載せていいのだろうか。そう思っていたが、度々の確認の結果分かったことでこれは「私が読んでいる時のみ攻略ノートになりゲームに必要な情報がでる」ということだ。

よく考えてみれば確かにレデュイール全体で占いの通りにパラ上げをすれば全員チートが生まれるし、皆がみんな王子と出会えることもなければむしろ好感度が上がるイベントが起きるはずもない。

これは主人公にのみ与えられるものと同じような役目を果たす「アーリ用の攻略ノート」なのだろう。

と、いうかそういうふうに考えないと話が合わない。


「とりあえず、私のパラメータの欄は……っと」


ステータス。

それを数字で見ることができるものはいない。

誰もが教会で啓示を受けてふわっと知ることができるだけだ。でも、私にはこれがある。だからこそ、このリズくんに会うための戦い負けるわけにはいかない!

ぺらぺらとめくっていき、私の頁を開いて、体が固まった。


魔法力無し。


待って、そんなことある?

「うそ……」

何度めくってみてもクラリスには『魔力15 属性風』と記載があるのに、お父様と私の頁には無と書かれている。

いやいやいや、なんでよりによって無しなの? こう、3でも4でも数値があれば苦手だろうがなんだろうが才能は努力で補うことができる。もちろん、わずかだけど。

でも、だって、いや、これでどうしろというの。無から有は生み出せない。つまり、そういうことだ。


「やっ、やっ、やだー!!」

思わず声が出た。

せっかくリズくんのいる世界に転生できたのに関わりのないまま生きるなんて生殺しにも程がある。なまじ公爵令嬢なんてポジションに生まれ変わったから、うっかり会えちゃったりするかもしれないなんて期待できるせいで余計に辛い。いっそ庶民のモブであれば私も諦めがつくし、一生の中で一度くらいリズくんが出る公務を遠目からチラッと見れたら幸せだなって思うくらいで済むかもしれないけど。

「……ん?」


公務に出てることあった?


「……だ、ダメだ。思い浮かぶ限りアーサーとジョージのスチルしかない。元々リズくんが攻略対象キャラじゃないっていうのもあるかもしれないけど」

アーサールートもジョージルートも、それぞれが互いに反発し、いがみ合い、誤解が解けて認め合うまでの対照的な道筋になっている。けれど、リズくんは違う。存在しないといっていいほどの希薄な存在。

私が庶民だった場合、全く公務に出ないことから彼の存在が本当にいるのかすら危ういと思うに違いない。


「でも、よく考えて。私はアーリなのよ、公爵令嬢アーリ・シープ。魔力がないのなら、稀有な存在であればいい。なにか、庶民であっても光の魔法を得て特例で入学できたヒロインのように、何か私にあれば」

何があるのかわからないけれど、何か見つけなければあっという間に一年が経ってしまう。

とりあえず私に足りないのは知識だ。この黄金の国で生きるために産業は何が一番発展していて、魔力はこの国の中でどれだけの地位にあるか、私の立ち位置確認と共に、これが必要不可欠。


「クラリスを呼んで!」

「あら、お嬢様如何なさいました?」

ぱたぱたと走って部屋の扉を開け、廊下を歩く執事に声をかけるとその後ろの曲がり角からひょっこりとクラリスが顔を覗かせた。

ナイスタイミング、クラリス!


「城下町にいくわよ! お父様に頂いたお小遣いをいっぱい持ってちょうだい!」

そう、欲しい本をたくさん買って読む、それしかない!


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