中央図書館
妖精の言い伝え
王都の中央図書館に向かう馬車の中。リスはロゼッタから妖精についての言い伝えを聞いていた。
「妖精は、この星の大気中にある『魔力』から自然発生した存在だと言われています」
「ふむふむ」
「妖精はその生まれから、親や兄弟を持ちません」
「それは寂しそうだね」
「大気中の魔力さえあれば生きていけますから、食事や睡眠なども必要としません」
「便利だねぇ」
「そして好奇心がとても旺盛です」
「へえ」
リスは前世では小説の中でしか知らなかった妖精というファンタジーな存在にちょっとだけわくわくしていた。
「ですから、食事や睡眠を必要とする、一人では生まれてくることさえ叶わない私達脆弱な人間に興味があるようです」
「それはまた物好きだね」
「そんな妖精は、人間を観察することを趣味とするものが多いようです。たまに悪戯を仕掛けてくることもありますね」
「傍迷惑だね」
「普通の妖精はそれだけで満足するようです。普通の人間ならそれだけの被害で済みます」
「普通じゃない子もいるんだ?」
自分も普通じゃない人間に分類されるわけだと胸中でちょっと落ち込むリス。
「はい。妖精は基本的に、妖精國と呼ばれる此方とは少しズレた次元の同じ場所に存在しています。次元がズレているので認識出来ないだけで、多分ここにもいますね」
「そっかぁ。認識出来ないのは残念だね」
「ところが、何故か時折妖精國に連れ去られる人間がいます」
「物騒な話になってきたね?」
これは思ったより厄介な話かも知れないとリスは身構える。
「『妖精の愛し子』と呼ばれる彼ら彼女らは、何故か人間から忌み嫌われることが多いようです。妖精からの干渉がある可能性もあるそうですが、詳しくはわかりません」
「…あー、なるほど?なるほど」
「はい。御察しの通り、あの暗殺者の言葉が本当なら、お姉様は妖精の愛し子である可能性が高いです」
「そりゃまた厄介な…」
問答無用で連れ去られては敵わないと戦慄するリス。
「しかし、妖精の愛し子でも、稀に連れ去られることがない人がいます」
「へえ。どんな人?」
「人間社会に絶望していない、人間社会に未練がある人ですね」
「ああ、それなら、無理矢理連れて帰ることは出来ないのかもしれないね?」
「可能性はあるかと」
リスは安心した。それならば問題はないのだ。
「なら心配はないかな?私にはロゼッタやラヴァンド、ソールがいるし。あと、オレガノさんとバジルさんとオルタンシアちゃんもね」
「お姉様…はい!」
しかしまだ気になることもある。
「でも、暗殺者さんが言ってた覚醒ってなんだろうね?」
「分かりません…でも、妖精の愛し子に関する情報なのだと思います」
「だよねぇ。んー…妖精の愛し子かぁ…なんで私なんかが…」
「お姉様の優しさに妖精が興味を持ったのかもしれませんね」
「いやいや、おだてても何も出ないよ」
「本音です!」
そうして妖精についての前情報を得つつ、姉妹で仲良く戯れ合う間に中央図書館に着いたのであった。
次回調べ物タイム




