前世の記憶
ごめんなさいミスりました!こっちで連載致します!
リス・スリジエ。彼女はわがままで傲慢なことで有名だ。両親ですら彼女を疎み、妹のロゼッタばかりを可愛がるほどに。リスは公爵令嬢だというのに友達の一人すらいない。彼女の周りには、優しい天使のようなロゼッタとその婚約者ソール・ロゾー、そしてリス本人の婚約者ラヴァンド・ヴォリュビリスしか寄り付かない。
そんな彼女だが、ある日馬車に轢かれそうになった平民の子供を助けようとした。彼女はわがままで傲慢だが、だからこそ目の前の人間が不幸になることを決して許さないのだ。
幸いリスの咄嗟の判断で子供は無傷で親元に返された。この件で、領民達のリスへの評価はガラッと変わることとなった。その代わりにリスが大怪我をすることとなった。
リスはロゼッタの応急処置のおかげでどうにか助かった。だが、記憶障害を抱えることとなる。
櫻井百合という、前世の記憶が蘇ったのだ。前世のリスも、子供を自動車事故から助けて代わりに命を落としていた。
リスは、いきなり前世の記憶を思い出して、しかも今世の記憶はほとんどない状態になる。記憶喪失のことは医者に話したが、前世の記憶については話していない。
ロゼッタとソールが世話を焼いてくれるが、両親や使用人達からは蛇蝎の如く嫌われている。友達もいない。これにはリスも参った。
唯一の救いは、婚約者であるラヴァンドが自分にぞっこんであることくらいだ。
「リス、具合はどうだ?大丈夫か?」
「ラヴァンド、また来てくれたんだね!ありがとう!元気だよ!」
「そうか、そりゃあよかった。土産の菓子だ。リスはこれが好きだろう?」
「わあ、アップルパイ!ありがとう、ラヴァンド!」
「ふふ、これくらい当然だ」
リスの頬にキスを落とすラヴァンド。
「ラヴァンド、お前俺たちの前でよくそんないちゃいちゃできるな…」
「なんだ?嫌ならリスの部屋から出て行けば良いだろう」
「いや、義姉の容体を心配するのは当たり前だろう…特に、リスは両親や使用人達から色々と誤解されているからな。無理はさせたくない」
「お義兄様、どうか許してくださいませ。お姉様が心配なんです」
「そうか。まあ、リスを一人きりにするよりはマシだからいいがな」
そう言ってさらにリスにキスの雨を降らせるラヴァンド。リスはラヴァンドが好みど直球なため、満更でもなかった。
ー…
リスは、我が儘だった。それは、明らかに自分を構ってくれない両親への当て付けであり…両親から関心を寄せて欲しかったという思いの表れだった。けれど、両親はリスが我が儘を言う度にリスを嫌う。リスは余計に孤立していった。それを、ラヴァンド達はただ慰めるしか出来なかった。
記憶を無くしてからリスは、両親を気にしなくなった。それからというもの、傲慢な態度もなりを潜め我が儘も言わなくなった。それどころか、周囲に気を遣っている始末だ。元々の良い性格が表に出るようになっていた。
そんなリスの変化は…特に両親を気にしなくなった点についてすごく好ましく思うが、自分達との思い出がないというのはやはり寂しいもので。
いつか、記憶が戻らないものかとラヴァンド達は気を揉んでいたのだった。
よろしくお願いします!