38 アリシエラ
アリシエラさんはこの屋敷を設計・建設した建築士だそうだ。
訳あってこの屋敷を建てて、訳あってここから離れて、訳あって近くを通りかかったのでついでに寄ってみた、だそうだ。
この屋敷の怪しげな魔導具てんこ盛りオーバーテクノロジー仕様は、全てあの人の仕業らしい。
本人もかなり個性的な人だった。
メイド服の意匠を散りばめた防具、一見モップ状の遠近両対応武器。
何よりその強烈で印象的な佇まい。
とにかくよくしゃべる。
「がんばって建てた家の今のあるじが良さそうな人で良かったです」
こちらの自己紹介を済ませる間も無く猛烈な勢いでまくし立ててきた。
マシンガントークなどと言う生優しいものでは無く、そもそもマシンガンだって弾倉補充のタイミングで大人しくなるものだろう。
以下は彼女の話の一部、俺が聞き取ることが出来た分を分かりやすくまとめた内容である。
俺たちの屋敷の原型となったお屋敷にご主人様たちと離れてひとりで住んでいたアリシエラさん。
お屋敷のオーバーテクノロジーを狙う悪いヤツらが攻めて来たので、お屋敷を完全破壊して武装魔車(あの装甲車)で脱出。
ご主人様たちが住む村へと向かう旅の途中でここに立ち寄ってみた。
「コッチの屋敷の魔導具はアッチの本家のよりも控えめだから悪目立ちしたりしなければ狙われたりしないから大丈夫ですっ」
あっけに取られている俺と、にこにこと聞いているメリルさんを尻目に、言いたい事を全て言い終えたナイスバディネコミミメイドのアリシエラさんは嵐のように去っていった。
別れ際のアリシエラさんのセリフには全く大丈夫感が無かったけど、後でどうやってみんなに説明しよう。
何となく、アリシエラさんのご主人様に会ってみたくなった。
あとがき
リヴァイスという世界は、ひとりの少年がプレイしている仮想現実ゲームです。
彼は長い時間この世界を旅するうちに『鏡の賢者』と呼ばれる存在になりました。
お供のメイドさんは『伝説のメイド』と呼ばれております。
ここで暮らしている人々はいわゆるAIですが、それなりに大変なこの世界を楽しく生きているみたいです。
リヴァイスの物語は、そういう人々のあれやこれやを短編として紹介するものとなりそうです。
iPadのメモ帳につらつら溜め込んでいたショートストーリーや小ネタをひとつの世界にまとめようとしたら、こういう設定になりました。
整合性や何やらいろいろアレですが、お話しがまとまり次第投稿したいと思っております。
楽しんでいただけたら幸いです。




