03 マユリ
本当最悪だった。
勝手に召喚した王家の連中、裸で召喚したことを謝りもしない神官たち、いやらしい目で見てくる召喚者のヤツら。
一緒に召喚された女の人たちからは距離を取られた。
トラブルに巻き込まれたくなかったのだろうけど、結局同じ穴のムジナっていうのかな、使い方あってるよね。
孤立していた私に声を掛けてくれたのは女騎士のリリシアさんだけだった。
「乙女は純潔の誓いに命を賭けている。 その想いを穢す者たちを私は許すことは出来ない」
悔しがって泣いてくれるリリシアさんに、この世界に来てから初めて救われたと思った。
私の待遇について上司に進言したが聞き入れてもらえなかったとリリシアさんが頭を下げてくれた日、こんなところ抜け出そうってふたりで決めた。
『下職制度』というものがあるそうだ。
戦力にならなかった召喚者を他の町に住まわせる制度で、もちろん生涯監視付き。
渡りに船、で合ってたっけ。
リリシアさんに相談したらすぐに了承してくれた。
「私が忠誠を捧げたのは栄光ある我が祖国にだ。 今この場所には栄光など欠けらも無い」
さすがリリシアさん、名前通りに凛々しすぎて惚れちゃいそう。
ふたりで脱出計画を練っていたら、ちょっとした事件が起こった。
女の子たちから嫌われていた教官が訓練中に怪我をしたっていう事件。
たまたま現場に居た私が気になったのは、あの人の事件そっちのけな態度だった。
お腹を押さえて転げ回っている教官や訓練用の槍を構えたまま唖然としている女の子。
みんなの目はそっちに釘付けなのに、あの人は自分の両手を不思議そうに見ていた。
どうしてもあの人のことが気になって、リリシアさんに調べてもらった。
ひどい話だった。
勝手に召喚した連中から固有スキルのせいで放置されて、助け合うべき召喚仲間から見られたくない姿を見られて距離を取られる。
っていうかそんなの仲間じゃないよね。
今の状況の私だけはあの人を放っておいたらダメだ。
リリシアさんにそう言ったら、あなたにはこの国で失われつつある騎士の魂があるって感動された。
あなたみたいなイケメン騎士さまに真顔でそんなこと言われたら、照れる前に泣いちゃうじゃない。