26 散策
大変恐縮ですがとニエルさんを叩き起こして、町に行くけど夕飯には戻りますと告げる。
何か買ってくる物は無いですかと聞くと「小麦粉、たくさんお願いします」とのこと。
食い扶持が増えたのでニエルさんの持ち込み食材がいつまで持つのか気になるところ。
しばらくしたら食材の減り具合のデータも取れると思うので、そのとき相談してみよう。
お散歩日和、馴染みの無い景色を美女たちと散策するのは大変に気分が良いものだが、あっちの世界と違うのはきっちり武装しているということ。
気を引き締めつつ、のんびりと。
いろんな商店や露店、王都ほどでは無いが住むには退屈しない程度の賑わい、落ち着いた良い町だと思う。
露店を冷やかしながら道を聞いてギルドへ、建物は王都にあった支店くらいの大きさ。
少し緊張しつつ中に入ると、ガラガラだった。
まあ、時間的に混雑帯じゃないし。
窓口のお姉さんに三人揃ってご挨拶、感じの良いお姉さんであった。
掲示板を見てみると、主に採取で討伐が少々。
さほど強い魔物はいないようだとリリシアさん。
依頼を受けるのは明日からということで表に出たところで、実は物件が未契約なことを全員すっかり忘れていました。
物件購入資金は俺の『収納』に入っているので、すぐに町長さんのところに向かう。
契約成立に町長さんほくほく顔。
なぜあんな立派な屋敷が残ってたのですかと聞くと、紹介した人の半数は屋敷に着く前になぜか見学をやめて、残りの半数は玄関を開けただけですぐに帰ってしまった、と。
たぶんニエルさんが何かやらかしたんだろうなと思ったが、町長さんの幸せそうな様子に相槌を打つだけにしておいた。
良かったら夕食をご一緒に、とのお誘いを丁重にお断りして退席。
確かにうちの女性たちは目を引くかもですけど視線が露骨でしたよ、町長さん。
食料品の店で小麦粉を買う際に大袋を軽々と持ち上げるリリシアさんをまじまじと見ていたら、少しムッとした顔をされた。
「いつかはエスコートしてもらいたいものだ」などとおっしゃいますが小麦粉大袋をスイッと担ぐのはエスコートとは言わないんじゃないですかね。
マユリさんが妙に大人しいのが少々気になる。
気がつくと俺とリリシアさんを交互に見比べている感じ。
図らずも一緒に暮らすこととなったのだから、何か言いたいことがあるなら遠慮なく言って欲しい。
あまりキツいことを言われると簡単にへこむので出来ればお手柔らかに、です。




