12 三日目朝
昨日の夕食の席で、出発はお昼頃の予定だからゆっくり寝ててと言ったのに早めに起きてきたふたり。
マユリさんは小川に洗濯に、俺は朝食作り。
病み上がりで水仕事は駄目とふたりから言われたリリシアさんは、悟りを開いたかのような表情で腰掛けている。
城の厨房から貰ってきていた砂糖を卵に、それを平鍋に敷いた硬いパンに染み込ませるように焼く。
料理なんてやったことのない俺が作るなんちゃってフレンチトーストを、じっと見ていたリリシアさん。
「私はこれまでの失態をどうやって挽回すれば良いのだろう」
「マユリさんはともかく、俺はこれからいっぱい失敗する予定なのでその時はよろしくお願いします」
「アラン殿が私にしてくれたように、たっぷりと甘やかしてやろう」
「お手柔らかに」
フレンチトーストもどきの香りに誘われるように、マユリさんが来る。
「フルーツジュースが欲しくなっちゃう香りですねぇ」
「町に着いたらコーヒーが無いか探してみたい」
「召喚者たちは舌が肥えているのだな」
落ち着いた良い朝だけど、ふたりがちらちらと寄こす視線に気付いた。
そろそろ無精ヒゲを何とかしないと。