11 二日目
マユリさんの固有魔法のことを思い出す。
確か左手小指は『上級回復』
試してみましたかと聞くと、
「駄目でした。『上級完全回復』とか言うのだと病気も治っちゃうらしいのに」
悔しそうなマユリさんに、今出来ることをやりましょうと告げて気になっていた小川を調べに行く。
小川の水の『鑑定』結果が飲用可能だったので、お昼を食べているマユリさんにそのことを話す。
「私も体を拭いて良いですか」と遠慮がちに聞かれたので、水は使い放題なので遠慮なくと伝える。
「汚れた布は洗っておくのでテントの前に用意した空の桶に入れて置いてください」
「本当にすみません」と頭を下げっぱなしなのは真っ赤な顔を隠すための照れ隠しなのかも。
「これからもあの鎧のままだといろいろとアレなので革鎧みたいな軽装な物を持ってきていないか、後で聞いてみてください」
「私が持ってきてる革鎧だとサイズが」言いかけてから、さらに真っ赤になるマユリさん。
「その辺はおいおい考えるとして、任せっきりにして悪いけどお世話の方をよろしくお願いします」
「はい」
日が傾きかけてきた夕方、野営の準備をしていると突然テントの方が騒がしくなった。
顔が隠れるローブのような物を羽織った人がテントから出てトイレへと駆けて行く。
テントから出てきたマユリさんにもう大丈夫なのかと聞くと、
「熱は下がったけど今まで見たことがないくらいに真っ赤でした」
さもありなん。
再びテントへと駆け戻ったあの人を待つことしばし。
夕食の準備をしていたふたりの前に現れたリリシアさんは、腰を折って深々と頭を下げた。
「面目ない。 不肖リリシア一生の不覚」
何度か頭を上げるようお願いしたけど動いてくれなかったが、着替えた衣装が似合ってると褒めたらぺたんと座り込んだ。
「自分が情けなくて涙も枯れ果てた」
「本当は病み上がりなのでお粥とか用意したかったんですけど、これで我慢してください」
城で出されたスープが程よく出汁が効いてて美味しかったので、大きめの瓶に入れてもらって『収納』で持ってきていた。
そのスープに細かく刻んだ野菜を入れて煮込んだもの。
「硬いパンを浸してから食べると美味しいかもです」
リリシアさんは「美味いな」と涙を流す。
「涙が入ったら味が変わっちゃいますよ」と涙を拭いてあげるマユリさん。
無言で食事する三人。
片付けも終わり今日は俺が夜番をしますと言うと、大人しくテントへと向かうふたり。
マユリさんに『隠蔽』お願い、と声を掛ける。
明日は早めに洗濯を終わらせてしまおう。




